生成AIは雇用を奪うか増やすか未確定、人事が今備えるべき論点

ChatGPTをはじめとする生成AIは、その利点と弊害をめぐって一気に議論の中心になりました。しかし、雇用が失われるのか新しく生まれるのか、あるいは人の労働がただ別の作業へ移るだけなのかは、まだ見通せていません。本稿は複数のHRM研究者が集まり、生成AIとHRMの接点を洗い出し、これから確かめるべき論点と研究の方向を示した論考です。

配偶者の発言力が強いほど、家庭のエコ行動が職場に広がる

従業員が職場で環境配慮を提案したり呼びかけたりする行動は、これまで主に職場側の要因から説明されてきました。この研究は家庭に目を向け、配偶者の環境配慮行動が従業員の内発的動機づけを経て職場での働きかけにつながる道筋を検討しています。その道筋は配偶者の関係パワーの高さに左右され、さらにチームの命令的規範が動機と行動の結びつきを弱めることも示されました。

リモートで薄れるのは帰属感、真正性は別の仕組みで決まる

リモート勤務の度合いが高いほど、職場への帰属感は弱まりやすく、リーダーのバーチャル協働行動がその低下を和らげていました。ところが、自分らしくいられるという真正性には、同じ関係が見られませんでした。この論考は、二つが別々の仕組みに支えられているためだと説明し、リモートの包摂を可視性と自律性、そして承認の配り方の問題として捉え直します。

3つの心理欲求を一括りにしてよいかを問い直すメタ分析

自己決定理論では、自律性・有能感・関係性という3つの基本的心理欲求が満たされることが、成長と健やかさの土台だと考えます。本論文は、職場でのこの欲求充足を扱う研究を集めて統合し、3つは本当に別々の働きをするのか、合算した一つの指標で代用できるのか、そして測り方の違いが結論を変えないのかを検討したレビューです。

部下ごとの扱いの差は、関係の質と社会的比較次第で悪影響が最も弱くなる

多くのリーダーシップ理論は、上司が部下を全員同じようには扱わないことを前提にしてきました。この研究は、リーダーの差異化を「職場内にどれだけ扱いの差があるか」「自分と上司の関係の質」「他の部下と比べた自分の位置」という三つの性質に分け、これらが組み合わさって部下の受け止め方と行動を左右することを示しました。差そのものより、その差の中で自分がどう位置づくかが効いていました。

研修は求職行動を抑える、ただし地域の制度環境しだい

研修は人材の定着に効くのか。中国の社会工作機関(地域福祉サービスを担う組織)を対象にした全国調査の分析から、研修は職員の求職行動を抑え、その経路として仕事への活力や没頭を示すワーク・エンゲイジメントが働くことが確認されました。さらに、その抑制効果は地域に広がる制度のあり方によって強まりも弱まりもすることが示されています。

上司の「善意の配慮」も働く母親の健康を左右する

働く母親が職場で受ける性差別には、攻撃的なものと、保護的で一見好意的なものの二種類があります。幼い子どもを育てる母親を時期をずらして追った調査では、前者は仕事と家庭の葛藤をどちらも高め、身体的な不調につながっていました。後者は仕事から家庭への葛藤を和らげる一方、家庭から仕事への葛藤はむしろ強めるという、相反する二つの経路を示しています。

上司のストレス自慢は、部下の解釈次第で薬にも毒にもなる

忙しさやストレスの大きさを誇らしげに語る行動は、上司が行うと部下に二通りの反応を生みます。業績向上を促す意図だと解釈されれば、部下は自分の仕事を見つめ直し、仕事への活力が高まりました。一方、自己演出だと解釈されれば、上司について繰り返し考え込み、周囲との関わりを控えるようになりました。行動そのものではなく、部下の解釈が結果を分けています。

感情労働は「要件・制御・表出」の三要素で捉え直す

仕事の役割として感情を整える「感情労働」は、組織行動や組織心理学の中で確かな位置を占めるようになりました。一方で、概念のあいまいさ、未検証のまま前提とされたプロセス、方法論の停滞といった行き詰まりも生じています。著者らは感情労働を、感情要件・感情制御・感情表出という三つの要素の動的な統合として捉え直し、研究の新しい道筋を示しました。

測り方が生む共通方法バイアスは有害で複雑、簡単には直せない

アンケート調査で、原因側も結果側も同じ回答者に同じ形式で尋ねると、変数どうしの関係が実際とは違って見えることがあります。本論文は、この共通方法バイアスについて蓄積された知見を整理し、それが有害であること、発生源が複数あって複雑なこと、生じやすい条件が広く見られること、そして事後の対処では簡単に解消できないことを論じています。研究者だけでなく、社内調査の設計や解釈に関わる人事担当にも関わる論点です。

研究者抜きで始まる組織介入は、学習と働く条件を土台に成果を積み上げる

職場改善の研究は外部の研究者が設計した介入に偏ってきましたが、現場では組織が自ら始める取り組みのほうが数多く行われています。この研究は、そうした事例を集めて、組織と従業員が実際に変えたいと考えている成果を整理しました。学習と働く条件という土台の上に、ウェルビーイングや業績、人材面の成果が積み上がり、互いに資源となって好循環を生むという見取り図が示されています。

複数チーム所属は人脈を育て、メンバーの流動化は削る

チームを柔軟に組み替える働き方は、社内のつながりを豊かにするのでしょうか、それとも壊すのでしょうか。本研究は、掛け持ち(複数チーム所属)とメンバーの流動化を切り分け、二つの調査で検証しました。その結果、個人にとっては掛け持ちが有利、流動化は不利である一方、企業全体では柔軟な編成がつながりと業績に正の関連を示すという、見る水準によって答えの変わる姿が浮かび上がりました。

AIは個人の判断でなくチームの働き方そのものを変える

未来の同僚は人間なのか——本稿はこの問いから出発し、AIが組織の共同作業に入り込むことの意味を検討します。特集に集まった寄稿からは、AIが個人の判断だけでなく、意思決定や信頼、ストレスといった集団のプロセスを組み替えることが浮かび上がります。編者は社会技術システムの考え方をもとに、AIが仕事の社会システムのどこに位置し、どれだけの裁量を行使するかで状況を区別する枠組みを提案しています。

AIが仕事の速度を決めるのではなく、上司の設定と現場の工夫が決める

AIは仕事の速さを自動的に決める存在ではありません。管理職がAIにどこまで時間の主導権を持たせ、どの頻度でやり取りさせるかという設定が時間の圧力を生み、働き手はそれを自分なりの工夫で組み替えていきます。その歩調合わせが息苦しい従属になるか、自分で選んだ働き方になるかを分けるのは、管理職の時間へのかかわり方だと本研究は論じます。

AIの人事活用研究は断片的、統合の枠組みが要る

AIやAIを使ったアプリケーションは、国内企業でも多国籍企業でも人事管理に組み込まれつつあります。この論文は、その研究が過去10年で増えた一方、まだ限られていて断片的だと指摘します。著者らは体系的レビューによって、何がわかっていて何が未解明かを整理し、今後の研究を導く概念枠組みと検証可能な命題を提示しました。

業績偏重のHRMを見直し、ウェルビーイングと良い雇用関係を起点に置く

人事管理は従業員と組織の双方に利益をもたらすはずだ、という考え方は以前からありました。しかし著者は、主流の理論と研究が業績向上に偏り、働く人の関心事が後回しにされ続けてきたと指摘します。そこで本論文は、ウェルビーイングと良好な雇用関係を高める施策を優先する別の分析枠組みを提案し、それが双方の利益に至るもう一つの道筋になりうると論じます。

包摂的な職場づくりは『仕事の意味』を通じて2年後の愛着を高める

多様な人を『招く』だけでなく、実際に活躍の場へ誘うことは組織への愛着につながるのか。この研究は、上司の包摂的な振る舞いと成長機会を広げるHR施策が、まず仕事の有意味感を高め、そこを通じて2年後の情緒的コミットメントに結びつくことを示しました。さらに、上司の包摂的な関わりの効果は、自ら動くタイプの人ほど表れやすいことも分かりました。

上司の敵対的言動は新人の「取り繕い」を生み、やがて疎外へ

新人が職場に入ったばかりの時期に上司から敵対的な言動を受けると、その場では波風を立てずに従っているように見えることがあります。しかしこの研究は、そこで起きているのが順応ではなく、本音を隠して表向きの顔を保つ振る舞いだと描き出しました。経験が繰り返されるほど関係への期待は目減りし、諦めと距離の取り方が定着していきます。

AIの効果を決めるのは技術より「どう使うか」の選択

電子プラットフォーム、機械学習、大規模言語モデルという三つのAI実践が、それを使う人・一緒に働く人にどんな影響を与えるかを整理したレビュー論文です。これらのツールは仕事の全体ではなく特定のタスクを引き受けるため、重要なのは残された仕事がどう変わり、働く人がそれをどう受け止めるかだと著者らは述べます。そして結果を最も左右するのは、使い方に関する組織の選択だと結論づけています。

リモートワークの自己開示が心理的安全性を高める

リモートワークでは、心理的安全性を育むようなやり取りが持ちにくいと考えられてきました。ところが本研究は、対面からリモートへ移行した組織を長期にわたり追った質的研究から、別の道筋を描き出します。リモートならではの相互作用パターンがメンバー同士の自己開示を後押しし、互いを人間として理解し合うことを通じて、心理的安全性が高まっていったのです。