資源ベース理論はまだ未完成、ステークホルダー理論が補う4つの視点

資源ベース理論はまだ未完成、ステークホルダー理論が補う4つの視点 (人材論文百科の論文紹介)

紹介する論文

Stakeholder Theory and the Resource-Based View of the Firm

R. Edward Freeman, Sergiy Dmytriyev, Robert A. Phillips / Journal of Management (2021年) / DOI: 10.1177/0149206321993576

邦題(編集部訳): ステークホルダー理論と企業の資源ベース理論

結論

企業の独自資源を競争力の源とみなす資源ベース理論は、戦略論で主流になった今もまだ完成していない、と著者らは主張しています。規範性・持続可能性・人・協力という4つの視点をステークホルダー理論から取り入れるべきだという提案です。人事にとっては、人材を「競争力の資源」としてだけ見るのでなく、関わる人々との関係や価値判断も含めて施策を考えるための理論的な後ろ盾になります。

企業が持つ独自の資源や能力を競争力の源と考える「資源ベース理論」は、戦略経営の分野で主流となりました。ただ著者らは、この理論は現在の形ではまだ不完全だと指摘しています。そのうえで、企業に関わる人々全体を重視する「ステークホルダー理論」から4つの視点を取り入れて両者を歩み寄らせることが、経営の理解を深める有望な道だと論じています。

この論文の要点

  • 2つの理論は誕生当初は似ていたが、その後は別々の発展をたどった
  • 主流の資源ベース理論は、現在の形ではまだ不完全だと著者らは主張
  • 補う視点は規範性・持続可能性・人・協力の4つで、統合の指針も提示

研究の問い

資源ベース理論(企業が持つ独自の資源や能力が競争力の源になると考える理論)は、戦略経営の分野で主流となり、持続的競争優位(他社に簡単にはまねされず長く続く強み)を説明する枠組みとして広く使われてきました。一方のステークホルダー理論(株主だけでなく、従業員・顧客・取引先・地域社会など企業に関わる人々全体を重視する理論)も、経営学の重要な柱です。2つの理論は誕生した当初は似た点がありましたが、その後は別々の道を歩みました。主流となった資源ベース理論に何が欠けているのか、もう一方の理論から何を学べるのかを整理する必要がありました。

調べ方

抄録から読み取れる範囲では、この論文はアンケートや実験でデータを集める実証研究ではなく、既存の理論を比べて検討する理論研究です。著者らはまず、2つの理論が生まれた当時の共通点を探り、次になぜ異なる発展をたどったのかを議論しています。そのうえで資源ベース理論に足りない点を指摘し、統合への道筋を提案しています。検討した文献の範囲や数は、抄録では明記されていません。

わかったこと

著者らによれば、2つの理論は誕生した当初、企業をとらえるうえで似た問題意識を持っていました。しかしその後、資源ベース理論は戦略論の中心的な考え方へと成長し、ステークホルダー理論はそれとは別の発展の道をたどりました。

著者らは、現在の資源ベース理論はまだ完成していないと主張し、ステークホルダー理論が補える点として4つを挙げています。1つ目は規範性、つまり「企業はどうあるべきか」という価値判断の視点です。2つ目は持続可能性、3つ目は人、つまり組織を支える人々への注目です。4つ目は協力で、競争だけでなく関係者と共に価値を生み出すという見方です。

さらに著者らは、2つの理論を歩み寄らせることが経営の理解を前に進める有望な道だとし、その道を進もうとする研究者と実務家に向けて2部構成の指針を示しています。ただし、指針の具体的な中身は抄録では明記されていません。

人事・研修担当への示唆

  • 人材を「競争力の資源」としてだけ語らず、施策の説明に従業員にとっての価値や公正さという視点を加えましょう。
  • 人事施策の評価に、短期の成果だけでなく無理なく続けられるかという持続可能性の視点を入れてみましょう。
  • 部門間や社外パートナーとの協力を生む仕組み(合同研修や共同目標)を、競争力づくりの一部として位置づけましょう。

読むときの注意点

本論文は理論的な提案で、4つの視点を取り入れると業績が上がるといった効果をデータで示したものではありません。また、2部構成の指針の具体的な内容は抄録からはわかりません。実務に活かす際は本文を確認し、自社の状況に合わせて解釈することをおすすめします。

キーワード解説

資源ベース理論
資源ベース理論とは、企業が持つ独自の資源や能力の違いが、企業ごとの競争力や業績の差を生むと考える経営戦略の理論のことです。
ステークホルダー理論
ステークホルダー理論とは、株主だけでなく従業員・顧客・取引先・地域社会など、企業に関わる人々全体への価値創造を重視する経営の理論のことです。
持続的競争優位
持続的競争優位とは、他社に簡単にはまねされたり置き換えられたりせず、長い期間にわたって保たれる企業の強みのことです。
規範性
規範性とは、物事が実際にどうなっているかではなく、どうあるべきか、何が正しいかという価値判断にかかわる性質のことです。
持続可能性
持続可能性とは、経済・社会・環境への負担を抑えながら、活動や価値の創造を長く続けていける状態のことです。
理論研究
理論研究とは、新しいデータを集めるのではなく、既存の考え方を比べたり組み合わせたりして、新しい理論的な枠組みを提案する研究のことです。

よくある質問

Q
資源ベース理論とステークホルダー理論の違いは?
A
資源ベース理論は企業が持つ独自の資源や能力を競争力の源として注目します。ステークホルダー理論は、従業員や顧客、地域社会など企業に関わる人々全体への価値創造を重視します。この論文では、両者は誕生した当初は似ていたものの、その後は別々に発展したと整理されています。
Q
資源ベース理論に足りないものは何ですか?
A
著者らは、ステークホルダー理論が補える点として規範性、持続可能性、人、協力の4つを挙げています。資源の価値だけでなく、企業のあるべき姿や、関わる人々との関係、長く続けられるかどうかといった視点が必要だという主張です。
Q
この論文は人事の実務にどう役立ちますか?
A
人材を競争力の資源として扱うだけでなく、働く人々への価値や公正さ、協力関係を重視する人事施策を理論面で支える材料になります。ただし効果を実証した研究ではないため、施策の方向性を考えるヒントとして使うのが適切です。

原論文のライセンス: cc-by-nc。本記事は原論文の内容を人材論文百科の編集部が独自に読み解いてまとめたもので、抄録や本文の翻訳・転載ではありません。図表は掲載していません。正確な内容は冒頭のDOIから原典をご確認ください。

タイトルとURLをコピーしました