硬直した仕組みは現場管理職の「組み合わせ直し」で動き出す 効率のために整えた標準の仕組みは、時間がたつと決まった使い方から動かなくなります。この研究は、そのずれに最初に気づくのが現場の運用管理者であり、彼らが既存の硬直した資源に、つながりづくりや人材育成といった柔軟な資源を組み合わせて価値を生み出していく過程を明らかにしました。上位の管理者はその組み合わせを認め、動かす役割を担っていました。 2026.09.22 組織・エンゲージメント
成果は単一要因でなく組み合わせ—因果の複雑さを扱う新視点 同じ施策でも、ある組織では成果につながり、別の組織では効きません。この論文は、そうした「条件の組み合わせによって結果が変わる」性質を正面から扱う研究の枠組みを示します。著者らは質的比較分析(QCA)を単なる新しい手法ではなく、経営研究における新しい視点の登場だと位置づけ、その土台となる四つの考え方を整理したうえで、経営学におけるQCA研究の展開を包括的にレビューしています。 2026.09.22 リーダーシップ・マネジメント
権力を持つ男性が「うちは実力主義」と見る理由は資源の充足感 女性が権力ある地位に就きにくいのはなぜか。この研究は、権限そのものではなく、権限に見合う資源が伴っているかどうかに注目します。男性は権限が大きいほど自社を実力主義的だと捉えやすく、その背景には、役割を果たすだけの資源が自分にはあるという認識の男女差がありました。資源が足りているという感覚は、実力主義の見方を通じて公平性向上の取り組みへの支持を弱めていました。 2026.09.21 多様性・ハラスメント
AI導入は人材の見極めと育成の前提を変える AIの導入は、業務の一部を置き換えるだけでなく、働き方の前提そのものを組み替えていきます。本論文は、その変化が人材の見極め・育成・定着というタレントマネジメントの中核をどう作り替えるのかを、概念的に整理しました。そして、AIが職場に根づくかどうかは従業員自身の関わり方に左右されるとして、人事こそが経営の対応を先導する役割を担うと論じています。 2026.09.21 育成・評価・タレント
前向きさは性格ではなく、測れて育てられる四つの資源です 前向きさは性格だから変えられない——そう考えられがちですが、本論文はそこに線を引きます。ホープ、自己効力感、レジリエンス、楽観という四つの資源からなる心理的資本は、測定でき、状況によって変わり、働きかけによって伸ばせるものとして位置づけられます。そのうえで、開発の方法やリーダーの関わり方まで含め、研究と実践の両面から到達点がまとめられています。 2026.09.21 働き方・ウェルビーイング
VRの状況判断テストは臨場感を高め組織の魅力も上げる 採用選考で使われる状況判断テストの場面を、テキスト・動画・VRのどれで見せるかによって、受検者の感じ方は変わります。二つの実験の結果、動画は臨場感を高めたものの組織の魅力度には影響せず、VRは臨場感と魅力度の両方を高めました。さらにVRの効果は、若年・中年の受検者で高年齢の受検者より強く表れました。 2026.09.20 採用・HRテック
企業が従業員に権威を行使しているとは限らない 企業は従業員を統治する「私的政府」だ、という見方が広がっています。本論文は、権威が成り立つには「従わせる意図」と「実際に従われていること」の二つが必要だと整理し、この基準では経営陣が従業員に権威を行使していると言い切れる根拠は乏しいと論じます。権威は企業に必ず備わる性質ではなく、あるかどうかは場合による、というのが結論です。 2026.09.20 組織・エンゲージメント
AIと一体化した自己像は、創造の自信と依存の両方を生む 職場にAIが入り込み、働き手が「AIを使いこなす自分」という自己像を持つようになったとき、創造性はどうなるのでしょうか。本研究は、その自己像が創造的自己効力感を通じて創造的逸脱を促す一方、AI依存を通じてそれを抑えるという、逆向きの二つの経路があることを示しました。抑え込む側の経路は、損失や失敗を避けようとする傾向が強い人ほどはっきり現れています。 2026.09.20 倫理・コンプライアンス
上司のワーカホリズムの悪影響は部下の「同一視」で和らぐ 働きすぎの上司のもとで部下が疲弊するかどうかは、部下がその上司をどう受け止めているかによって変わるようです。本研究では、上司のワーカホリズムが部下の強迫的情熱を高め、それがバーンアウトへとつながる経路が確認されました。一方で、上司に自分を重ねるリーダー同一視が強い部下では、この経路が弱まっていました。 2026.09.19 働き方・ウェルビーイング
ビジネスモデル革新の研究は、言葉の定義がそろっていない ビジネスモデル革新は、この15年ほどで研究者にも実務家にも注目されてきたテーマです。しかし著者らが2000年から2015年の査読論文150本を見直したところ、この分野には理論的な土台が乏しく、実証研究も積み上がっていないことが浮かび上がりました。何がきっかけで革新が起き、どんな条件でどんな成果が出るのかは、まだ十分に描かれていません。 2026.09.19 リーダーシップ・マネジメント
人事研究に定着したPLS-SEM、使い方には改善の余地 エンゲージメントのように直接は測れない概念を扱う人事研究では、PLS-SEMという分析手法が広く使われています。本研究は、主要誌に30年間で掲載された77本のHRM研究を集め、その使われ方を最新のガイドラインと突き合わせました。手法は分野に定着している一方で、適用と報告の両面に改善すべき点が残っていることが示されています。 2026.09.19 組織・エンゲージメント
職業データベースO*NETの派生尺度を整理し妥当性を検証 経営や組織の研究では、職業の特徴を測るためにO*NETの記述子を組み合わせた独自の尺度が数多く作られてきました。本レビューはそうした尺度を集めて整理し、妥当性の根拠が十分なものを選び出して、「O*NET Plus」という拡張された枠組みにまとめています。研究者が似た尺度を作り直す手間を減らし、職業記述の共通基盤を用意しようとする試みです。 2026.09.18 育成・評価・タレント
セルフモニタリングは業績そのものより上司の評価を動かす 場面に応じて自分の振る舞いを調整する「セルフモニタリング」は、長く仕事ができる人の条件だと考えられてきました。しかし複数の研究をまとめたメタ分析の結果、職務業績との関連は全体としてわずかで、上司が付けた評価では関連が見られる一方、成果に基づく指標では見られませんでした。著者らは、これは能力の高さというより、評価する側の印象形成に働きかけた結果ではないかと述べています。 2026.09.18 組織・エンゲージメント
チーム研修で個人が学べるかは「チーム内の役割志向」で決まる チーム単位の研修がうまくいったからといって、参加者一人ひとりが学べているとは限りません。本研究は、シミュレーション型のチーム訓練に取り組んだ学生チームを対象に、メンバーの役割志向が個人の学習成果とどう結びつくかを調べました。実行役・関係づくり役・段取り役という三つの志向で学びの中身が分かれ、自分の貢献を振り返る調整的学習行動がその一部を説明していました。 2026.09.18 チーム・協働
親友でもある同僚への妬みは、関係を守る動機と同時に働きます 職場の同僚が同時に親しい友人でもある関係は、比較の材料を増やし、相手の成功や恵まれた境遇が自分ごとになりやすくします。本論文は、そこで生まれる妬みが「つらさを減らしたい」という個人的な動機と「大切な関係を保ちたい」という関係的な動機を同時に立ち上げると論じます。そして、その処理の仕方によって、感情そのもの・状況・表に出し方のいずれかを調整する経路へ分かれ、経路ごとにその後の感情と関係の行方が違ってくると整理しています。 2026.09.17 倫理・コンプライアンス
投資家の質問の焦点が、男女の資金調達差を生む 男性起業家と女性起業家の資金調達額の差は、投資家が投げる質問の違いから生まれていました。男性には成長や可能性を問う質問、女性には損失回避を問う質問が多く向けられ、起業家も同じ枠組みで答えます。そして損失回避を問われた起業家ほど、調達額が低くなっていました。答え方を変える介入によって、この差を縮められる可能性も示されました。 2026.09.17 多様性・ハラスメント
統制変数は性別・年齢・在職期間に偏り、理由の説明はほぼない 組織や人事の研究では、実験が組みにくい代わりに統制変数を入れて他の影響を取り除きます。主要誌に10年間で載った580本を内容分析したこの研究は、テーマがまるで違う領域でも統制変数が性別・年齢・在職期間に集中し、選んだ理由の説明はごくわずかだと示しました。著者らは、含めるべきかを判断するための問いと手順を提案しています。 2026.09.17 組織・エンゲージメント
時間を整えるリーダーは消耗し、メンバーは救われる 締め切りやペース配分を整えるリーダーの働きかけは、メンバーにとっては助けになりますが、それを担うリーダー自身はすり減っていきます。2つのフィールド調査は、この役割をまたぐ資源のやりとりを描き出しました。さらに、チームの仕事が複雑な場面ほど、コストよりも恩恵のほうが強く現れることも示されています。 2026.09.16 チーム・協働
ロビイングが承認を早めるかは企業の評判しだい 企業が規制当局に働きかけるロビイングは、承認を早めることもあれば、かえって審査を慎重にさせることもあります。本研究は、当局が「早すぎる決定」と「遅すぎる決定」の両方で批判されうる立場にあり、自らの評判を守るために審査の時間を裁量的に使うと考えました。米国FDAの医療機器承認データの分析では、ロビイングと承認の速さの関係が、企業のリコール歴や革新性の評判によって変わることが示されています。 2026.09.16 リーダーシップ・マネジメント
職務満足が自分の平均より高い時期は、ストレスも炎症も低い 高齢者介護施設で働く人たちを18か月にわたって追いかけた研究です。同じ人の中で職務満足が高まった時期には、知覚ストレスが低く、血液中の炎症指標も低いという関連が確認されました。勤務外で無償の介護を担う人とそうでない人とで、まったく別の経路が働くとまでは言えませんでしたが、個人の中で起きるパターンには違いが見られました。 2026.09.16 働き方・ウェルビーイング