チーム研究の焦点は個人からチーム、そしてチームの集合体へ

チーム研究の焦点は個人からチーム、そしてチームの集合体へ (人材論文百科の論文紹介)

紹介する論文

A century of work teams in the Journal of Applied Psychology.

John E. Mathieu, John R. Hollenbeck, Daan van Knippenberg, Daniel R. Ilgen / Journal of Applied Psychology (2017年) / DOI: 10.1037/apl0000128 / 本文を読む(オープンアクセス)

邦題(編集部訳): Journal of Applied Psychologyにおけるワークチーム研究の1世紀

結論

働く集団の研究は、当初は個人の成績と比べるための材料として扱われていました。その後、チームそのもの、さらに複数のチームが連なるマルチチームシステムへと関心が移り、メンバーの特性やチーム構成、チームプロセスと創発状態が主要な論点になっています。人事・研修担当にとっては、個人単位の施策だけでなく、チーム単位やチーム間の設計まで視野に入れる必要があるという示唆です。

働く集団についての研究は、はじめは個人と比べるための材料として扱われていました。この論文は、その後の1世紀でチームそのもの、さらに複数のチームが連なる大きな仕組みへと関心が移ってきた流れを整理したレビューです。メンバーの特性やチーム構成、チームプロセスと創発状態が中心的な論点になり、著者らは文脈と時間の変化を織り込んだ研究を今後の課題として挙げています。

この論文の要点

  • 関心は「チーム内の個人」から「チームそのもの」へと移りました
  • さらに複数チームが連なるマルチチームシステムへ視野が広がりました
  • メンバー特性・チーム構成・チームプロセスと創発状態が主要論点です

研究の問い

働く集団は、個人と組織をつなぐ結び目のような存在です。集団を対象にした心理学的な研究は古くはホーソン研究にさかのぼりますが、応用心理学の主要誌にその成果が現れるのは遅く、当初は個人と比べたときの集団の成績を見るための比較材料という扱いにとどまっていました。1990年代以降になると、チームを扱う研究の量もテーマの幅も大きく広がります。そこで著者らは、チームワークをめぐる問いがこの1世紀でどう変わってきたのかを整理し、次に取り組むべき課題を示す必要があると考えました。

調べ方

この論文は新しいデータを集めた調査ではなく、過去1世紀のチーム研究の歩みをたどるレビューです。著者らは、掲載誌に現れたチーム関連の研究を中心に、扱われてきたテーマや成果指標を時代順に整理しています。個人への注目から、チームそのもの、さらに複数チームが連なるマルチチームシステムへという関心の移り変わりを軸に、タスクや構造、メンバーの特性とチーム構成、チームプロセスと創発状態といった観点で文献を位置づけています。対象論文数などの集計方法は、抄録では明記されていません。

わかったこと

まず、チーム研究の重心が移動してきたことが示されます。初期は、個人の成績と比べる形で集団が扱われ、チームの中の個人に光が当たっていました。その後、チームそのものを分析の単位とする研究が増え、さらに複数のチームが結びついたマルチチームシステムという、より大きな仕組みへと視野が広がっていきます。

次に、何を成果として測るのかが、チームのタスクや構造の性質と結びつけて論じられてきた点が整理されます。加えて、メンバー個々の特性やチーム構成が成果にどう関わるか、そしてやりとりの積み重ねであるチームプロセスと、信頼や結束のようにチームの中に立ち上がってくる創発状態が、主要な論点として位置づけられています。

最後に著者らは、チームの関係性が文脈の中で時間とともに変化し、複雑なシステムとして動くことを前提にした研究が今後必要だと呼びかけています。

人事・研修担当への示唆

  • 研修は個人向けだけでなく、チームプロセス(やりとりの質)を鍛える場も設計しましょう
  • 人選では個人の能力だけでなく、顔ぶれの組み合わせというチーム構成の視点を加えましょう
  • 仕事の相互依存の度合いを確認し、評価を個人単位で見るかチーム単位で見るか決めましょう

読むときの注意点

新しいデータを分析した研究ではなく、これまでの研究の流れをたどるレビューです。特定の学術誌に軸足を置いて整理されているため、他の媒体の知見の扱いには幅があります。関心の移り変わりを示すものであって、ある施策が成果を生むという因果関係を検証したものではない点に注意してください。

キーワード解説

チームワーク
チームワークとは、共通の目標に向けてメンバーが役割を分担し、協力し合いながら仕事を進めるための行動や関わり方のことです。
マルチチームシステム
マルチチームシステムとは、複数のチームが共通の上位目標のためにつながり、ひとつの大きな仕組みとして動いている状態のことです。
チーム構成
チーム構成とは、メンバーの能力や性格、経験、属性などがどう組み合わさっているかという、チームの顔ぶれの構造のことです。
チームプロセス
チームプロセスとは、目標設定や役割調整、情報共有、対立への対処など、メンバーが実際に行うやりとりの積み重ねのことです。
創発状態
創発状態とは、信頼や結束、共通の理解など、メンバーのやりとりを通じてチーム全体に立ち上がってくる心理的な状態のことです。
相互依存
相互依存とは、ある人の仕事の進み方や成果が、他のメンバーの動きに左右される度合いのことです。

よくある質問

Q
チーム研究は何が変わってきたのですか?
A
分析の単位が移ってきました。はじめは個人と集団を比べる形でしたが、やがてチームそのものが対象になり、さらに複数のチームがつながったマルチチームシステムという大きな仕組みまで扱われるようになっています。
Q
チームの成果は何で決まるのですか?
A
この論文は、成果がタスクや構造の性質と結びつけて論じられてきたこと、そしてメンバーの特性やチーム構成、チームプロセスと創発状態が主要な論点であることを整理しています。特定の要因の効果の大きさは、抄録では明記されていません。
Q
人事の現場ではどう活かせますか?
A
チームを個人の集まりとしてではなく、それ自体を設計対象として扱う視点が得られます。人選ではチーム構成を、育成ではチームプロセスを、評価では仕事の相互依存の度合いを確認するとよいでしょう。

原論文のライセンス: other-oa。本記事は原論文の内容を人材論文百科の編集部が独自に読み解いてまとめたもので、抄録や本文の翻訳・転載ではありません。図表は掲載していません。正確な内容は冒頭のDOIから原典をご確認ください。

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