組織行動

権力を持つ男性が「うちは実力主義」と見る理由は資源の充足感

女性が権力ある地位に就きにくいのはなぜか。この研究は、権限そのものではなく、権限に見合う資源が伴っているかどうかに注目します。男性は権限が大きいほど自社を実力主義的だと捉えやすく、その背景には、役割を果たすだけの資源が自分にはあるという認識の男女差がありました。資源が足りているという感覚は、実力主義の見方を通じて公平性向上の取り組みへの支持を弱めていました。

前向きさは性格ではなく、測れて育てられる四つの資源です

前向きさは性格だから変えられない——そう考えられがちですが、本論文はそこに線を引きます。ホープ、自己効力感、レジリエンス、楽観という四つの資源からなる心理的資本は、測定でき、状況によって変わり、働きかけによって伸ばせるものとして位置づけられます。そのうえで、開発の方法やリーダーの関わり方まで含め、研究と実践の両面から到達点がまとめられています。

企業が従業員に権威を行使しているとは限らない

企業は従業員を統治する「私的政府」だ、という見方が広がっています。本論文は、権威が成り立つには「従わせる意図」と「実際に従われていること」の二つが必要だと整理し、この基準では経営陣が従業員に権威を行使していると言い切れる根拠は乏しいと論じます。権威は企業に必ず備わる性質ではなく、あるかどうかは場合による、というのが結論です。

セルフモニタリングは業績そのものより上司の評価を動かす

場面に応じて自分の振る舞いを調整する「セルフモニタリング」は、長く仕事ができる人の条件だと考えられてきました。しかし複数の研究をまとめたメタ分析の結果、職務業績との関連は全体としてわずかで、上司が付けた評価では関連が見られる一方、成果に基づく指標では見られませんでした。著者らは、これは能力の高さというより、評価する側の印象形成に働きかけた結果ではないかと述べています。

親友でもある同僚への妬みは、関係を守る動機と同時に働きます

職場の同僚が同時に親しい友人でもある関係は、比較の材料を増やし、相手の成功や恵まれた境遇が自分ごとになりやすくします。本論文は、そこで生まれる妬みが「つらさを減らしたい」という個人的な動機と「大切な関係を保ちたい」という関係的な動機を同時に立ち上げると論じます。そして、その処理の仕方によって、感情そのもの・状況・表に出し方のいずれかを調整する経路へ分かれ、経路ごとにその後の感情と関係の行方が違ってくると整理しています。

統制変数は性別・年齢・在職期間に偏り、理由の説明はほぼない

組織や人事の研究では、実験が組みにくい代わりに統制変数を入れて他の影響を取り除きます。主要誌に10年間で載った580本を内容分析したこの研究は、テーマがまるで違う領域でも統制変数が性別・年齢・在職期間に集中し、選んだ理由の説明はごくわずかだと示しました。著者らは、含めるべきかを判断するための問いと手順を提案しています。

女性取締役の選任が続くと、海外進出はM&Aより自前設立に傾く

取締役会に新しく女性取締役が加わると、企業の海外進出の仕方そのものが変わるかもしれません。台湾の製造業企業を対象とした本研究では、女性取締役の選任が進んだ後、海外進出でM&Aよりもグリーンフィールドが選ばれやすくなる傾向が示されました。しかもその傾向は、取締役会議長が女性か、既存メンバーに国際経験があるかによって強弱が変わります。

人脈づくりが報われるかは、性別と国で変わります

自分から動く人ほど人脈を広げ、その人脈がキャリアへの満足を高める——この流れは、ベトナムでも米国でも確認されました。しかし、人脈づくりが満足に結びつくかどうかは、どこでも同じではありませんでした。ベトナムでは男性にその関係が見られた一方、女性では確認されず、米国では男女で目立った差がありませんでした。努力が報われる条件は、性別と社会の期待によって変わるようです。

撤退できないのは意思決定ではなく、日々の会話の積み重ね

複数あった選択肢が、いつのまにか一本の失敗しつつある道へ絞り込まれていく。本研究はその過程を、個人の判断の誤りとしてではなく、メンバー同士のやり取りのなかで結びつきが強まっていく過程として描き直しました。人はアイデアを握りしめるだけでなく、次第にそのアイデアの側に握られていく。実務家の実感に近いこの見方が、抜け出せないチームを理解する手がかりになります。

アイデアが実る道は4局面、必要な人脈は局面ごとに変わる

良いアイデアが形になるかどうかは、思いつきの質だけで決まるわけではありません。この論文は、アイデアが着想から完成へ至る道のりを4つの局面に分けて捉え、局面ごとに必要な支えと人のつながりが変わることを理論的に示しました。しかも、ある局面で有利なつながりは、別の局面では足かせになります。だからこそ担い手は、局面に応じて物事の捉え方を切り替える必要がある、と提案しています。