障害者雇用の認証や社員ネットワークがあっても、求人広告の包摂的施策は少ない 英国で、障害者雇用に関する政府の認証制度に参加していたり、障害のある社員のネットワークを持っていたりする組織は、一部の障害者向け採用・定着施策を求人広告に載せる傾向がありました。しかし、そうした組織でも記載はまれでした。認証や社内組織があることが実際の取り組みにつながっているのか、それとも対外的な見せ方にとどまっているのかが問われています。 2026.10.16 育成・評価・タレント
信頼で結ぶ利害関係者との関係は、まねされにくい強みになりうる 従業員や取引先と信頼と協力に根ざした関係を築くことは、倫理的に望ましいだけではありません。他社がまねしにくい競争上の強みにもなりうる、と論じたのが本論文です。一方で著者らは、こうした関係づくりにはコストがかかり、利点がコストを上回るのは一定の状況に限られるとも指摘しています。信頼関係に「いつ、どこで」投資すべきかを考えるための理論的な枠組みを示した研究です。 2026.10.15 倫理・コンプライアンス
成果は「要因の組み合わせ」で説明する:理論づくりの3段階 経営や組織で起きることが、ひとつの要因だけで決まることはめったにありません。この論文は、要因ごとの影響を切り分けて考える従来のやり方では、要因が絡み合う複雑な因果を捉えにくいと指摘します。そのうえで、要因の「組み合わせ」から理論を組み立てる3段階の進め方と、各段階で考えを深めるための手がかりを提案した理論研究です。 2026.10.14 リーダーシップ・マネジメント
多様性推進への逆風の今こそ、倫理と責任の視点から問い直すべきだ 多様性・公正・包摂(EDI)への逆風が強まっています。それなのに、その取り組みを倫理の問題として捉え直す視点は、研究の世界でもまだ足りていません。本稿は、多様性の「実践」を論じた一冊を手がかりに、そう指摘する書評論文です。画一化を求める圧力や、多様な人が集まれる場が失われていく動きに抗うことに注目し、急いで取り組むべき研究の方向を示しています。 2026.10.13 多様性・ハラスメント
感情知性の評価は、能力より「見慣れた振る舞い」を測りがちと指摘 感情知性(EI)は、リーダー育成や採用、業績管理で広く使われている考え方です。本論文は、その評価が知らないうちに「組織が慣れ親しんだ感情の表し方」をする人を高く評価する仕組みになっている可能性を指摘します。特に、ニューロダイバージェンス(発達特性などによる脳の働き方の多様性)をもつ人の力が見落とされやすいとしています。そのうえで、EIを捨てるのではなく、捉え方を広げることを提案しています。 2026.10.12 組織・エンゲージメント
リーダーほどリスクを好む傾向、人間にもチンパンジーにも共通 「リーダーはリスクを取る人だ」という通説は、これまで実際のデータではほとんど確かめられていませんでした。この研究では人間とチンパンジーの両方を調べ、リスクを好む傾向とリーダーの立場や順位との間に、どちらの種でもプラスの関連があることを示しました。関連はチンパンジーのほうがはっきりしていました。著者らは、リーダーとリスクを取ることの結びつきには進化上の古い起源があるのかもしれないと考えています。 2026.10.11 組織・エンゲージメント
境界コントロールの成否は社員の技術の使い方で決まる リモートワークの境界づくりは、人事が制度として設計できます。しかし本論文は、その設計が成果につながるかどうかは、従業員が実際に技術をどう使い、どう回避するかに左右されると論じます。監視や接続の要求が強すぎれば反発や負担を招き、制限が硬直的なら非公認ツールへの迂回を生みます。制度の意図だけでなく、現場での使われ方まで見込んだ設計が必要だという指摘です。 2026.10.10 働き方・ウェルビーイング
人事と研修の専門職は、対立しつつ協力して境界を引き直してきた 人事の仕事がタレントマネジメントやデータ分析、コーチングへと広がるなか、専門職としての「持ち場」は誰がどう決めるのでしょうか。英国の人事専門職団体CIPDの100年の歴史を分析した本研究は、人事管理と学習・人材開発という隣り合う2つの専門領域が、競い合いと協力を同時に進めながら境界を調整してきたことを明らかにしました。著者らはこの関係を「共生的相利関係」と名付けています。 2026.10.09 採用・HRテック
100年の人事評価研究を総括、今後の焦点は業績管理にあると提言 人事評価はどうすれば正確で役に立つものになるのでしょうか。著者らは、この問いに取り組んできた約100年分の研究を8つのテーマに分けて振り返りました。研究が特に盛んだった1970〜2000年については、実りの多かった研究の方向と、前進を妨げた可能性のある方向を見分けています。結論として、主要誌の論文は新しい理論を生み出すよりも、他で提案された考えを検証する役割が中心でした。それでも重要な問いの多くに答えてきたと評価しています。 2026.10.08 育成・評価・タレント
アルゴリズムは価値中立ではなく設計者に説明責任がある 採用や昇進の判断にアルゴリズムが入り込むほど、「結果の責任は誰にあるのか」があいまいになります。本研究は、アルゴリズムを中立な道具ではなく価値を帯びたものととらえ直し、開発した企業は出力の中身だけでなく、意思決定における人と機械の役割分担そのものにも責任を負うと論じます。人の関与を締め出す設計をしたなら、その責任は設計者にある、というのが中心の主張です。 2026.10.07 倫理・コンプライアンス
移民女性の職場経験は、性別と人種が重なって形づくられる アイルランドのサービス業で働く移民の有色女性たちは、仕事と自分らしさ、居場所の感覚を日々調整しながら働いていました。同時に、常に見られ判断される感覚と、型にはまった決めつけにさらされています。雇用主側は制度や方針、社会的・文化的な統合を包摂の制約として挙げており、個人が必要とするものと組織の現実のあいだに緊張があることが示されました。 2026.10.06 多様性・ハラスメント
従業員のレジリエンスは、危機下の感情制御と周囲の支えで高まる 嵐が繰り返し襲う地域のホテル従業員への調査では、部下のウェルビーイングに配慮した危機リーダーシップが、認知的再評価と表出抑制という二つの感情の整え方を通じて、従業員のレジリエンスと結びついていました。さらに、周囲から得られる社会的ネットワーク支援の質を高く感じている人ほど、その結びつきは強くなっていました。危機下のリーダーの言動は、感情面の支えを介して効いている可能性があります。 2026.10.06 組織・エンゲージメント
マインドフルネスは注意を変え、職場の成果に届く 職場のマインドフルネスに関する研究は急速に増えていますが、知見は分野ごとに散らばったままでした。本論文はそれらを一つの枠組みに束ね、マインドフルネスが注意に働きかけ、認知・感情・行動・生理の各領域を通じて、業績・人間関係・ウェルビーイングという成果につながる道筋を示します。同時に、経営学がこれまで当然としてきた前提への問い直しも促しています。 2026.10.06 組織・エンゲージメント
家庭が仕事を支える人ほど、年齢を重ねても活き活き働ける 家庭から仕事へのプラスの影響が、高齢の働き手の職場での加齢の成功をどう支えるのかを、中国の高齢就業者を対象に3時点の調査で2回検証した研究です。家庭で得た資源は職場での心理的レジリエンスを高め、それを通じて加齢の成功につながっていました。さらに、仕事を生活の中心に置く人ほど、その効果は強く出ていました。 2026.10.05 働き方・ウェルビーイング
コワーキングの価値は「ワークコンパニオン」という関係から生まれる 働く場所を選べる時代に、コワーキングスペースで隣り合う人たちは、互いにとって何なのでしょうか。本研究は、家族でも友人でも同僚でもなく、仕事に向かう姿勢だけを共有して隣で働く相手を「ワークコンパニオン」と名づけました。義務がないからこそ関わり方を自由に選べ、会話をするときも、黙って並んで働くだけのときも、そこから仕事上の助けと個人的な支えを得ていたことが示されています。 2026.10.05 組織・エンゲージメント
出来事は新奇・破壊的・重大なときに組織を動かします 組織は絶えず動いており、それぞれの階層でさまざまな出来事が生まれます。本論文は、そうした出来事が新奇性・破壊性・重要性を備えるときに強く意識され、階層を上下に移動しながら組織の行動や特徴を変えていくと論じます。さらに、持続時間やタイミングによって影響が時間的にも広がることを示し、検証可能な命題として整理しました。 2026.10.05 リーダーシップ・マネジメント
ステークホルダーの集合行動は発生前から抑圧されうる 従業員や地域社会などからの圧力に対し、組織は受け入れ・無視・協働・抵抗といった形で反応してきたと理解されてきました。本論文は、それらに加えて、集合行動が育つ条件そのものを狙って予防・制御する統合的な戦略を「組織的抑圧」として概念化します。抑圧は、発生・結集・組織化という三つの局面ごとに異なる形で働くと論じられます。 2026.10.04 リーダーシップ・マネジメント
チーム研究の焦点は個人からチーム、そしてチームの集合体へ 働く集団についての研究は、はじめは個人と比べるための材料として扱われていました。この論文は、その後の1世紀でチームそのもの、さらに複数のチームが連なる大きな仕組みへと関心が移ってきた流れを整理したレビューです。メンバーの特性やチーム構成、チームプロセスと創発状態が中心的な論点になり、著者らは文脈と時間の変化を織り込んだ研究を今後の課題として挙げています。 2026.10.04 チーム・協働
心理的安全性は何が育て、何を高めるのかを総合検証 心理的安全性についての研究は数多く積み上がってきましたが、何がそれを生み、どこまで成果につながるのかは散らばったままでした。本研究は既存の理論と実証研究を統合し、先行要因と結果を一枚の地図として描き直しています。さらに、近い概念を差し引いても効果が残るか、研究デザインや国民文化で結果が変わるか、個人と集団で同じ構図が成り立つかまで検討しています。 2026.10.04 組織・エンゲージメント
生成AIは管理職の実践知を奪うのか鍛えるのかは条件次第 管理職の判断力は、現場で自分が直接くぐった経験から育ちます。ところが生成AIが日常業務に入り込むと、その経験の多くがAIの生成した出力に置き換わっていきます。本論文は、生成AIが管理職の実践知の育ち方を二つの方向に分岐させると論じます。急かされている状況では判断力が痩せていき、自分の判断を説明する責任が効いている状況ではむしろ鍛えられる、という見立てです。 2026.10.03 育成・評価・タレント