家庭が仕事を支える人ほど、年齢を重ねても活き活き働ける

家庭から仕事へのプラスの影響が、高齢の働き手の職場での加齢の成功をどう支えるのかを、中国の高齢就業者を対象に3時点の調査で2回検証した研究です。家庭で得た資源は職場での心理的レジリエンスを高め、それを通じて加齢の成功につながっていました。さらに、仕事を生活の中心に置く人ほど、その効果は強く出ていました。

コワーキングの価値は「ワークコンパニオン」という関係から生まれる

働く場所を選べる時代に、コワーキングスペースで隣り合う人たちは、互いにとって何なのでしょうか。本研究は、家族でも友人でも同僚でもなく、仕事に向かう姿勢だけを共有して隣で働く相手を「ワークコンパニオン」と名づけました。義務がないからこそ関わり方を自由に選べ、会話をするときも、黙って並んで働くだけのときも、そこから仕事上の助けと個人的な支えを得ていたことが示されています。

出来事は新奇・破壊的・重大なときに組織を動かします

組織は絶えず動いており、それぞれの階層でさまざまな出来事が生まれます。本論文は、そうした出来事が新奇性・破壊性・重要性を備えるときに強く意識され、階層を上下に移動しながら組織の行動や特徴を変えていくと論じます。さらに、持続時間やタイミングによって影響が時間的にも広がることを示し、検証可能な命題として整理しました。

ステークホルダーの集合行動は発生前から抑圧されうる

従業員や地域社会などからの圧力に対し、組織は受け入れ・無視・協働・抵抗といった形で反応してきたと理解されてきました。本論文は、それらに加えて、集合行動が育つ条件そのものを狙って予防・制御する統合的な戦略を「組織的抑圧」として概念化します。抑圧は、発生・結集・組織化という三つの局面ごとに異なる形で働くと論じられます。

チーム研究の焦点は個人からチーム、そしてチームの集合体へ

働く集団についての研究は、はじめは個人と比べるための材料として扱われていました。この論文は、その後の1世紀でチームそのもの、さらに複数のチームが連なる大きな仕組みへと関心が移ってきた流れを整理したレビューです。メンバーの特性やチーム構成、チームプロセスと創発状態が中心的な論点になり、著者らは文脈と時間の変化を織り込んだ研究を今後の課題として挙げています。

心理的安全性は何が育て、何を高めるのかを総合検証

心理的安全性についての研究は数多く積み上がってきましたが、何がそれを生み、どこまで成果につながるのかは散らばったままでした。本研究は既存の理論と実証研究を統合し、先行要因と結果を一枚の地図として描き直しています。さらに、近い概念を差し引いても効果が残るか、研究デザインや国民文化で結果が変わるか、個人と集団で同じ構図が成り立つかまで検討しています。

生成AIは管理職の実践知を奪うのか鍛えるのかは条件次第

管理職の判断力は、現場で自分が直接くぐった経験から育ちます。ところが生成AIが日常業務に入り込むと、その経験の多くがAIの生成した出力に置き換わっていきます。本論文は、生成AIが管理職の実践知の育ち方を二つの方向に分岐させると論じます。急かされている状況では判断力が痩せていき、自分の判断を説明する責任が効いている状況ではむしろ鍛えられる、という見立てです。

職場の男女比が均衡に近いほど働く人の偏見は低い

職場に女性が多いほど、また男女の比率が均衡に近いほど、そこで働く人の偏見は弱い傾向にありました。偏見の対象は女性に限らず、ゲイ・レズビアンの人々、異なる人種・民族、貧困層にも及びます。関係が最も強く出たのは女性が多数を占める職場ではなく、男女がおおよそ半々に近づいた職場で、しかもこの傾向は主に男性従業員で見られました。

ゴシップが広がるチームほど「やってはいけない」規範が弱まる

「陰口が多い職場は、かえって行儀がよくなる」という見方があります。悪く言われたくないという気持ちが、不適切な行動を抑えるという理屈です。しかしZhongらの研究は、チーム全体で見るとむしろ逆の現象が起きることを示しました。ネガティブなゴシップがメンバー間に張りめぐらされたチームほど、やってはいけないことを戒める規範が弱まり、反生産的な行動が増えていたのです。

働く人の時間感覚は日ごとに変わり、その日の成果に効く

同じ人でも、昨日と今日とで「過去を振り返る日」「今この瞬間に集中する日」「先を見据える日」は入れ替わります。この研究は、そうした日々の時間的焦点の組み合わせをいくつかの типパターンとして取り出し、朝の時点での見通しによってどのパターンになるかが変わること、そしてその日の仕事ぶりと結びついていることを示しました。

HRアナリティクスは今のままでは期待に応えられない

HRアナリティクスは、HRの未来を保証する「必須能力」として語られがちです。しかしこの論文は、その楽観論をそのまま受け入れることに異議を唱えます。HRという職能が可能性と落とし穴の両方を理解し、実務と戦略の両面でよりよい手法づくりに踏み込まない限り、現在のHRアナリティクスの実践が組織を変えることはないと論じています。

CSRと政治活動を切り離さない、非市場戦略という統合視点

企業の戦略は市場での競争だけで決まりません。この論文は、社会的な取り組みを扱う戦略的CSRと、政府や規制当局への働きかけを扱う企業政治活動という二つの研究の流れを、非市場戦略として一つに束ねて整理しています。両者は実際には重なり合っているにもかかわらず、これまでほぼ別々に発展してきました。そのうえで、非市場戦略が組織業績に効いていく道筋を描き、今後の研究課題を示しています。

上司と性別が同じでも仕事の成果は変わらない

メンターや上司との性別が同じであることは、関係づくりにどこまで効くのか。多数の研究を統合したこの分析では、性別の一致は「似ている」という認識と関係の質を高めるものの、仕事上の成果までは押し上げないと報告されています。さらにその効き方は、部下が女性か男性かによって違っていました。

リモートワークと業績の関係は、条件で変わります

リモートワークやハイブリッドワークが定着した一方で、それが業績を助けるのか妨げるのかという論争は続いています。本レビューは、客観指標と上司評価による職務業績、そして創造性やイノベーションに関する研究を整理しました。示されたのは「勤務場所そのものより、効果を生む仕組みと効果が変わる境界条件を見るべきだ」という見取り図です。

報道の偏りは論調ではなく「取り上げるか」に出る

企業が社会的・政治的な問題に立場を示すと、その報じられ方は媒体の政治的な立場に左右されるのでしょうか。本研究は、報道を「取り上げるか」と「どう描くか」の二段階に分けて検討し、両者で偏りの出方が違うことを示しました。立場が近いほど記事にはなりますが、いざ書かれた記事の評価的な調子までは、立場の近さでは決まっていませんでした。

CEOの心理特性しだいで業績ギャップへの反応は逆転する

業績が目標に届かないとき、企業は思い切った投資に踏み切るのか、それとも守りに入るのか。この研究は、どちらが起きるかがCEOのサイコパシー傾向という個人差によって変わると論じ、フィンランド企業を追った長期データで確かめました。同じ業績フィードバックでも、経営者によって正反対の反応が生まれるという結論です。

企業は気候変動を「いつもの業務」に変えていく

気候変動への対応を高く掲げた企業が、いつのまにか元どおりの事業運営に戻っていく——本研究はその過程を内側から追いました。企業は課題を自社にとっての問題として枠づけ、部門ごとの施策に落とし込み、やがて日常の手順として当たり前のものに変えていきます。著者らは、社内外から寄せられる批判こそが、この変換を進める主な原動力だと指摘しています。

危機研究は「社内の力学」と「社外対応」に分かれていた

組織の危機については長く研究が積み重ねられてきましたが、分野ごとにばらばらで全体像がつかみにくい状態でした。この論文は、危機を扱う研究には「組織の内部で何が起きているか」を見る流れと「社外の関係者にどう向き合うか」を見る流れの二つがあると整理します。そのうえで両者に共通する概念を洗い出し、ひとつの枠組みとして結び直すことを提案しています。

掲げた理想と実践のズレこそ、組織が規範を見直す手がかり

フェミニスト・オーディオポルノを手がけるErotic Storiesを題材に、同意にもとづく性のあり方を先取りして描く実践が検討されました。理想として思い描かれる同意と、実際の運営で形になる同意にはずれがあり、著者らはそのずれこそが、そこで作られている規範を映し出すと述べます。掲げた価値観を固定せず、問い直し続ける組織のあり方が示されています。

疲弊のリスクは、職務要求と資源の「組み合わせ」で見えてくる

仕事の負担と支えは、一つずつ足し引きするより「どう重なっているか」で見たほうが、働く人の疲弊をよく説明できるようです。本研究は条件の組み合わせを扱う質的比較分析と、マルチレベル分析による検証を組み合わせ、疲弊と結びつく構成パターンを特定しました。危険な組み合わせは複数あり、逆に守りに働く組み合わせも見つかっています。