CEOは個人・チーム・組織の各層のニーズを通じて経営陣の熱意に関わる

CEOは個人・チーム・組織の各層のニーズを通じて経営陣の熱意に関わる (人材論文百科の論文紹介)

紹介する論文

CEO ‘s Influence on Top Management Team’s Employee Engagement: A Qualitative Study

Wafa Damlaj, Matthew W. Hurtienne, Laura E. Hurtienne / Human Resource Development Quarterly (2026年) / DOI: 10.1002/hrdq.70031

邦題(編集部訳): CEOがトップマネジメントチームの従業員エンゲージメントに及ぼす影響:質的研究

結論

経営幹部へのインタビューから、CEOは幹部の個人・チーム・組織という各層のニーズに応えることで、幹部のエンゲージメントに影響していると捉えられていることがわかりました。層ごとに合うリーダーシップのスタイルや資質は異なります。人事・研修担当にとっては、CEOや経営層の育成を「どの層のニーズに応えるか」で整理する手がかりになります。

組織の熱意は現場だけの課題ではありません。経営幹部自身のエンゲージメントも、トップであるCEOの関わり方に左右されている可能性があります。本研究は幹部へのインタビューから、CEOが個人・チーム・組織の各層のニーズに応えることで幹部の意欲を支えていると報告し、層ごとに求められるリーダーシップ像を整理しています。

この論文の要点

  • 経営幹部のエンゲージメントにCEOがどう関わるかを、幹部へのインタビューで探った
  • CEOの影響は個人・チーム・組織という各層のニーズへの対応として整理された
  • 層ごとに合うリーダーシップのスタイルと資質が異なることが示された

研究の問い

エンゲージメント(仕事への熱意や没頭の度合い)の研究は、一般社員を対象にしたものが中心でした。一方で、経営の中枢を担うトップマネジメントチーム、つまりCEOを支える役員・幹部層の意欲がどのように保たれているのかは、あまり掘り下げられてきませんでした。幹部の熱意は組織全体の方向づけや部下の意欲にも波及しうるため、その源を知ることは重要です。そこで本研究は、幹部に最も近い存在であるCEOが、幹部のエンゲージメントをどのような形で形づくっているのかを、当事者の経験から明らかにしようとしました。

調べ方

研究者は、当事者が経験をどう意味づけているかを重視する構成主義的な現象学的アプローチを用いました。トップマネジメントチームに所属する専門職の人々を対象に半構造化インタビュー(大枠の質問を用意しつつ話の流れに応じて深掘りする面接)を行いました。分析では、まずオープンコーディングで主要な概念を拾い出し、次に軸足コーディングで概念同士の関係から分類を整え、最後にテーマ別コーディングで中心的なテーマにまとめています。

わかったこと

分析の結果、CEOは幹部のニーズに応えることを通じて、幹部のエンゲージメントに影響していると整理されました。そのニーズは、幹部一人ひとりに関わる個人の層、幹部同士の協働に関わるチームの層、会社全体の方向性に関わる組織の層に分けて捉えられています。

さらに、それぞれの層のニーズには、それに応えるのに適したCEOのリーダーシップのスタイルと、欠かせない資質が対応していることが示されました。つまり、幹部の熱意を高めるうえで「万能のリーダー像」があるというより、どの層のニーズに向き合うかによって求められる関わり方が変わる、という見方です。

著者らは、こうした特性が幹部のエンゲージメントを高めることが示されたと述べ、人材開発の実務と今後の研究への示唆を提示しています。ただし、各層の具体的なスタイル名や資質の中身は抄録では明記されていません。

人事・研修担当への示唆

  • 経営幹部の意欲調査やヒアリングで、個人・チーム・組織のどの層のニーズが満たされていないかを分けて聞く
  • CEO・役員向けのリーダーシップ研修で、層ごとに求められる関わり方を整理して扱う
  • 幹部の離脱や意欲低下が見られたら、CEOとの関係や経営チーム内の協働状況も点検項目に入れる

読むときの注意点

少人数の幹部へのインタビューに基づく質的研究であり、結果を一般化したり、CEOの行動が幹部の熱意を生んだという因果関係を確定したりするものではありません。対象者の業種・国・企業規模などは抄録では明記されていないため、自社の状況にそのまま当てはまるとは限りません。

キーワード解説

エンゲージメント
エンゲージメントとは、働く人が仕事に対して熱意を持ち、活力をもって没頭している心理状態のことです。
トップマネジメントチーム
トップマネジメントチームとは、CEOとともに企業の戦略や重要な意思決定を担う役員・経営幹部の集団のことです。
現象学的アプローチ
現象学的アプローチとは、人がある出来事をどのように経験し意味づけているかを、当事者の語りから理解しようとする研究方法のことです。
半構造化インタビュー
半構造化インタビューとは、あらかじめ主な質問を用意しつつ、相手の回答に応じて質問を追加・変更しながら深掘りする面接方法のことです。
軸足コーディング
軸足コーディングとは、質的データから拾い出した概念同士の関係を検討し、より整理されたカテゴリーにまとめ直す分析手順のことです。
リーダーシップのスタイル
リーダーシップのスタイルとは、リーダーが部下や周囲に働きかける際の典型的な振る舞い方や関わり方の型のことです。

よくある質問

Q
CEOは役員のエンゲージメントに影響しますか?
A
この研究では、経営幹部へのインタビューから、CEOが幹部の個人・チーム・組織の各層のニーズに応えることで、幹部のエンゲージメントに影響していると整理されました。ただし質的研究のため、因果関係を確かめたものではありません。
Q
経営幹部の意欲を高めるリーダーシップとは?
A
本研究によると、決まった一つのスタイルがあるというより、個人・チーム・組織のどの層のニーズに応えるかによって、適したリーダーシップのスタイルや資質が異なると示されています。具体的なスタイル名は抄録では明記されていません。
Q
役員層のエンゲージメントはどう把握すればいい?
A
この研究の枠組みを使えば、幹部個人の欲求、経営チーム内の協働、組織全体の方向性という層に分けてニーズを聞き取る方法が考えられます。どの層が満たされていないかを見分けることで、CEOの関わり方や育成施策を検討しやすくなります。

原論文のライセンス: cc-by。本記事は原論文の内容を人材論文百科の編集部が独自に読み解いてまとめたもので、抄録や本文の翻訳・転載ではありません。図表は掲載していません。正確な内容は冒頭のDOIから原典をご確認ください。

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