
紹介する論文
Latent profile analysis: A review and “how to” guide of its application within vocational behavior research
邦題(編集部訳): 潜在プロファイル分析:職業行動研究における応用のレビューと実践の手引き
結論
潜在プロファイル分析は、集団全体の平均ではなく、複数の変数の組み合わせが似た人どうしを潜在的なサブグループとして取り出す手法です。本論文は職業行動研究でのこれまでの使われ方を整理し、非技術的な言葉で分析手順とベストプラクティスを示しました。人事・研修担当にとっては、社員を一律に扱わず、働き方のタイプごとに打ち手を変えるという発想の土台になります。
同じ職場でも、働き方のパターンは人によって違います。この論文は、そうした「人の中での変数の組み合わせ」からタイプを取り出す潜在プロファイル分析について、職業行動研究での使われ方を整理した総説です。すでに幅広いテーマで使われている一方、手順や報告の仕方にばらつきがあることを示し、実践しやすい手引きとベストプラクティスをまとめています。
この論文の要点
- 平均ではなく「似た人のかたまり」を見つける分析法の総説です
- 職業行動研究では、すでに7つのテーマで使われていました
- 人を確定的に分けず、所属確率として扱うのが特徴です
研究の問い
人や組織を扱う研究の多くは、変数どうしの関係を集団全体の平均で捉えてきました。しかし現場の実感としては、同じ職場でも働き方のパターンは人によって大きく異なります。熱意も高いが強迫的な働き方も強い人と、熱意だけが高い人とでは、必要な支援は違うはずです。こうした「一人の中での変数の組み合わせ」に注目し、似た組み合わせを持つ人の集まりを見つけ出すのが、潜在プロファイル分析と呼ばれる手法です。この論文は、この手法が職業行動の研究領域で整理されないまま広がり、分析の進め方や結果の示し方がそろっていない状況を問題として取り上げました。そこで、これまでの使われ方を整理したうえで、実践しやすい手引きを示すことを目的としています。
調べ方
著者らは、職業行動研究の中心的な学術誌に掲載された46件の研究を集め、潜在プロファイル分析がどのようなテーマで、どのような手順で用いられてきたかを整理しました。あわせて、分析の進め方を専門用語に頼らず説明する事例として、過度な仕事投入(強迫的な働き方、過剰な働き方、ワーク・エンゲイジメント)を取り上げ、潜在的なサブグループを見つけるまでの一連の手続きを実演しています。そのうえで、今後の研究に向けたベストプラクティスを導いています。
わかったこと
レビューの結果、職業行動研究でこの手法が使われてきたテーマは7つに整理されました。仕事や組織に対する態度・行動、働く動機づけ、キャリアに関する態度や志向、職業興味などが含まれます。つまり、特定の狭い領域にとどまらず、働く人を扱う幅広いテーマにすでに広がっているということです。
潜在プロファイル分析の考え方の中心は、人をきっぱり分類するのではなく、それぞれのプロファイルへの所属確率として捉える点にあります。ある人は特定の型に当てはまる可能性が高く、同時に別の型の性質も一部あわせ持つ、という形で位置づけられ、境界のあいまいさを残したまま類型を扱えます。
事例として示された過度な仕事投入では、強迫的な働き方や過剰な働き方、ワーク・エンゲイジメントといった要素の組み合わせから、複数のサブグループが描き出されました。著者らは、過去の研究でプロファイルの数の決め方や結果の報告の仕方がそろっていない点を指摘し、手順を透明にするためのベストプラクティスをまとめています。
人事・研修担当への示唆
- サーベイ結果を平均値だけで見ず、回答パターンが似た層に分けて眺め直してみましょう
- 「熱意が高い」層を一括りにせず、強迫的な働き方を伴う層を分けて支援策を変えましょう
- 分析を外部に依頼する際は、型の数をどう決めたかの説明を必ず求めましょう
読むときの注意点
これは方法論のレビューと手引きであり、特定の人事施策の効果を検証した研究ではありません。示された事例も手順を説明するための例示です。また、見つかるプロファイルは分析に入れた変数と対象集団に左右されるため、どこでも通用する普遍的な人物類型が示されたわけではない点に注意が必要です。
キーワード解説
- 潜在プロファイル分析
- 潜在プロファイル分析とは、複数の変数の値の組み合わせが似ている人どうしをまとめ、集団の中に隠れたタイプを見つけ出す統計手法のことです。
- サブグループ
- サブグループとは、ある集団の中で、特徴の現れ方が共通している人たちのまとまりのことです。分析によって事後的に見つけ出されます。
- 所属確率
- 所属確率とは、ある人がそれぞれのタイプにどのくらい当てはまりそうかを表す数値のことです。白黒つけずに типологиーを扱えます。
- ワーク・エンゲイジメント
- ワーク・エンゲイジメントとは、仕事に対して活力を感じ、熱意を持って没頭している、前向きで充実した心理状態のことです。
- 強迫的な働き方
- 強迫的な働き方とは、内側から突き動かされるように働かずにいられない状態のことです。休むことに落ち着かなさを感じるのが特徴です。
- 職業行動
- 職業行動とは、キャリア選択や仕事への態度、働き方や職業生活の移行など、人が職業に関して示す行動全般を指す研究領域のことです。
- ベストプラクティス
- ベストプラクティスとは、これまでの知見をふまえて推奨される、望ましい進め方や手順の目安のことです。
よくある質問
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Q潜在プロファイル分析とは何ですか?
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A複数の変数の組み合わせが似ている人どうしをまとめ、集団に隠れたタイプを見つける手法です。全体の平均で語るのではなく、「こういう組み合わせの人たちがいる」という形で人を捉えられる点が特徴です。
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Qクラスター分析と何が違うのですか?
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A本論文が強調するのは、人をきっぱり分類するのではなく、各タイプへの所属確率として扱う点です。境界のあいまいさを残したまま類型を検討でき、タイプの数の決め方も統計的な指標に基づいて議論できます。
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Q人事の実務でどう役立ちますか?
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Aエンゲージメント調査などの結果を平均だけで見るのではなく、回答パターンが似た層に分けて施策を考える発想につながります。ただし本論文は方法論の手引きであり、施策の効果そのものを検証したものではありません。
原論文のライセンス: cc-by-nc-nd。本記事は原論文の内容を人材論文百科の編集部が独自に読み解いてまとめたもので、抄録や本文の翻訳・転載ではありません。図表は掲載していません。正確な内容は冒頭のDOIから原典をご確認ください。


