
紹介する論文
How Followers Respond to Leader Differentiation: The Importance of Considering All Leader Differentiation Properties
邦題(編集部訳): フォロワーはリーダーの差異化にどう反応するか:リーダーの差異化のすべての性質を考慮することの重要性
結論
上司が部下ごとに扱いを変えること(リーダーの差異化)は、部下の相互作用的公正の感覚を下げ、その結果として上司への逸脱行動を増やし、組織市民行動を減らしていました。ただし本人のLMXの質が高く、社会的比較でも自分は恵まれていると感じている場合、この悪影響は最も弱く、統計的にゼロと区別できる水準ではありませんでした。差をなくすことより、一人ひとりとの関係の質を高めることが実務の要点です。
多くのリーダーシップ理論は、上司が部下を全員同じようには扱わないことを前提にしてきました。この研究は、リーダーの差異化を「職場内にどれだけ扱いの差があるか」「自分と上司の関係の質」「他の部下と比べた自分の位置」という三つの性質に分け、これらが組み合わさって部下の受け止め方と行動を左右することを示しました。差そのものより、その差の中で自分がどう位置づくかが効いていました。
この論文の要点
- 扱いの差は、上司への公正さの感覚を通じて部下の行動に影響します
- 関係の質と社会的比較がともに高いと、差の悪影響は最も弱くなります
- 実験と二つの追跡調査で、同じパターンが一貫して確認されました
研究の問い
上司が部下を全員同じようには扱わないことは、多くのリーダーシップ理論が前提にしてきました。実際、リーダーの差異化はどの職場でも起きています。ところが、それが部下や上司にどのような結果をもたらすのかは、十分に整理されてきませんでした。これまでの研究は、職場内にどれだけ扱いの差があるかという点だけを見たり、上司と自分の関係の良さだけを見たりと、性質を別々に扱いがちだったためです。同じ「差がある職場」でも、自分がその中でどの位置にいるかによって受け止め方は変わるはずです。本研究は三つの性質を同時に考えることで、この食い違いを解きほぐそうとしました。
調べ方
検証は三つの研究で行われました。まず、事前登録した実験によって因果関係を確かめ、次に同じ回答者に時期をずらして複数回たずねる多時点調査を実施しました。さらに、部下と上司など複数の情報源からデータを集め、職場単位と個人単位を分けて分析する多階層の多時点調査も行いました。対象者の人数や業種、調査が行われた国などの詳細は、抄録では明記されていません。
わかったこと
第一に、リーダーの差異化は、部下が上司から敬意ある扱いを受けているかという相互作用的公正の認識を通じて、上司への逸脱行動と組織市民行動に間接的に影響していました。差そのものが直接効くというより、公正さの受け止め方を経由する道筋です。
第二に、三つの性質は互いに組み合わさって働いていました。LMXの質が高く、かつ社会的比較でも自分は他の部下より恵まれていると感じている場合、差異化が相互作用的公正を下げる働きは最も弱く、統計的にゼロと区別できる水準ではありませんでした。
第三に、同じ条件のもとでは、差異化が上司への逸脱行動を増やす間接効果も、組織市民行動を減らす間接効果も最も弱く、やはりゼロと区別できませんでした。この形は、実験と二つの追跡調査を通じて一貫して支持されています。
人事・研修担当への示唆
- 職場の扱いの差をならすことより、部下一人ひとりとのLMXの質を上げる面談を優先しましょう
- 差をつける場面では理由と基準を丁寧に説明し、相互作用的公正を損なわない伝え方を管理職研修に組み込みましょう
- サーベイでは扱いの差だけでなく、他の部下と比べた自分の位置という社会的比較の視点も設問に加えましょう
読むときの注意点
三つの性質がそろって高いときに悪影響が「最も弱い」という結果であり、差をつけること自体が望ましいと示されたわけではありません。またゼロと区別できないという結果は、効果が存在しない証明ではありません。対象者の属性や業種、調査地などは抄録では明記されておらず、自社にそのまま当てはまるかは慎重な確認が必要です。
キーワード解説
- リーダーの差異化
- リーダーの差異化とは、上司が部下一人ひとりに異なる関わり方をし、職場の中に扱いの差が生まれることです。
- LMXの質
- LMXの質とは、上司と部下一人ひとりの間に築かれる信頼や支援のやり取りが、どれだけ良好かを表す程度のことです。
- 社会的比較
- 社会的比較とは、自分の状況を周りの人と照らし合わせ、自分が恵まれているかどうかを判断する心の働きのことです。
- 相互作用的公正
- 相互作用的公正とは、上司から敬意ある扱いや十分な説明を受けているかという、対人的なやり取りの公正さの認識のことです。
- 上司への逸脱行動
- 上司への逸脱行動とは、上司に向けられる、規範から外れた否定的な言動や協力の拒否などの行動のことです。
- 組織市民行動
- 組織市民行動とは、職務として求められてはいないものの、上司や同僚を自発的に助ける行動のことです。
- 事前登録
- 事前登録とは、研究の仮説や分析手順をデータ収集の前に公開して記録しておく、透明性を高める手続きのことです。
- 多時点調査
- 多時点調査とは、同じ対象者に時期をずらして複数回たずね、変数どうしの関係を時間差で確かめる調査方法のことです。
よくある質問
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Q部下によって扱いを変えるのは悪いことですか?
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A扱いに差があること自体より、部下がその差の中で敬意ある扱いを受けていないと感じることが問題でした。関係の質が高く、他の部下と比べても自分は恵まれていると感じられていれば、悪影響は最も弱くなっていました。
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Qリーダーの差異化とは何ですか?
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A上司が部下一人ひとりと異なる関わり方をし、職場の中に扱いの差が生まれることです。この研究では、差の大きさ、自分と上司の関係の質、他の部下と比べた自分の位置という三つの性質に分けて捉えています。
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Q上司への逸脱行動はどうすれば減らせますか?
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A本研究では、上司から敬意ある扱いを受けているという公正さの認識が保たれているほど、逸脱行動は起きにくく、自発的な援助行動は減りにくい関係が示されました。差をなくすより、説明と敬意ある対応が手がかりになります。
原論文のライセンス: 記載なし。本記事は原論文の内容を人材論文百科の編集部が独自に読み解いてまとめたもので、抄録や本文の翻訳・転載ではありません。図表は掲載していません。正確な内容は冒頭のDOIから原典をご確認ください。


