キャリアショックが行動を促すのは会社派遣の駐在員 海外赴任にはトラブルや転機がつきものです。本研究は、そうした予期せぬ出来事が国際的なキャリアの持続性にどう関わるかを、質的調査と量的調査を組み合わせて検討しました。その結果、ショックを感じたときにキャリアを切り開く行動が強まる関係は、会社から派遣された駐在員でより強く見られました。主体性は本人の資質だけでなく、周囲の支援の在り方に条件づけられている可能性が示されています。 2026.09.15 育成・評価・タレント
女性起業家の正当性は宗教の再解釈から始まる アラブ首長国連邦の女性起業家は、国の女性活躍推進や国家発展という大きな物語に自分の事業を重ね、起業家としての正当性を語りによって築いていました。同時に彼女たちは、イスラームの教えとビジネス倫理を自ら読み直し、女性が事業を営むことは倫理的で社会的責任のある行いだと位置づけていました。外向きの説得の前に、内側での解釈のやり直しがあったのです。 2026.09.15 組織・エンゲージメント
従来型の運用者もESGを使い、主な用途は危険信号とリスク管理 ESGへの配慮は一部の専門ファンドだけのものと思われがちですが、国際的なファンドマネジャー調査は違う姿を映しました。従来型の運用者の多くがすでに責任投資の要素を組み込み、ESG情報を主に危険信号の検出とリスク管理に使っています。著者らは、その進め方が従来のファンダメンタル投資とよく似ていると論じています。 2026.09.15 倫理・コンプライアンス
一般知的能力の業績予測力は従来説より小さい 一般知的能力は長らく「職務業績を最もよく予測する単一の指標」と語られてきました。本研究は、1990年以降の研究を扱った三つのメタ分析のデータをすべて集め直し、重複を整理したうえで再分析しています。その結果、操作的妥当性は.18〜.22の範囲にとどまり、著者らは.20を現代の要約値として示しました。さらに、知的に複雑な仕事ほど予測力が高いという通説も、そのままでは支持されませんでした。 2026.09.14 組織・エンゲージメント
女性取締役の選任が続くと、海外進出はM&Aより自前設立に傾く 取締役会に新しく女性取締役が加わると、企業の海外進出の仕方そのものが変わるかもしれません。台湾の製造業企業を対象とした本研究では、女性取締役の選任が進んだ後、海外進出でM&Aよりもグリーンフィールドが選ばれやすくなる傾向が示されました。しかもその傾向は、取締役会議長が女性か、既存メンバーに国際経験があるかによって強弱が変わります。 2026.09.14 多様性・ハラスメント
HR分析は成果につながるのに、なぜ広がらないのか 人事のデータ活用をめぐる研究を体系的に読み解いた論文です。導入が組織の成果につながるという証拠は存在するのに、実際に取り組む組織はごく少ないという矛盾が浮かび上がりました。しかも質の高い査読誌に載った研究自体が限られており、根拠はまだ十分に積み上がっていません。 2026.09.14 採用・HRテック
人脈づくりが報われるかは、性別と国で変わります 自分から動く人ほど人脈を広げ、その人脈がキャリアへの満足を高める——この流れは、ベトナムでも米国でも確認されました。しかし、人脈づくりが満足に結びつくかどうかは、どこでも同じではありませんでした。ベトナムでは男性にその関係が見られた一方、女性では確認されず、米国では男女で目立った差がありませんでした。努力が報われる条件は、性別と社会の期待によって変わるようです。 2026.09.13 働き方・ウェルビーイング
実務家向け雑誌を内容分析すると現場の関心が見える 人材開発の研究と現場の間には隔たりがあると言われ続けてきました。本論文は、実務家向けに発行されている雑誌そのものを分析対象に据え、内容分析の手順を組み立てて示します。学術的な枠組みを持ち込まず、その媒体の論理に沿って読むことで、通常の文献レビューでは見えない現場の関心や優先順位を継続的に追跡できる、というのが著者らの主張です。 2026.09.13 育成・評価・タレント
撤退できないのは意思決定ではなく、日々の会話の積み重ね 複数あった選択肢が、いつのまにか一本の失敗しつつある道へ絞り込まれていく。本研究はその過程を、個人の判断の誤りとしてではなく、メンバー同士のやり取りのなかで結びつきが強まっていく過程として描き直しました。人はアイデアを握りしめるだけでなく、次第にそのアイデアの側に握られていく。実務家の実感に近いこの見方が、抜け出せないチームを理解する手がかりになります。 2026.09.13 リーダーシップ・マネジメント
同じ目標でも探し方が違えば行き着く戦略が変わる 企業は利益と社会的責任のように複数の目標を同時に抱えますが、実際に手を動かして改善案を探すとき、その進め方までは意識されていません。この研究はシミュレーションによって、同じ選好を持っていても採用する探索の手順(ヒューリスティック)が違えば、たどり着く戦略も見つかる機会も系統的に変わることを示しました。 2026.09.12 倫理・コンプライアンス
アイデアが実る道は4局面、必要な人脈は局面ごとに変わる 良いアイデアが形になるかどうかは、思いつきの質だけで決まるわけではありません。この論文は、アイデアが着想から完成へ至る道のりを4つの局面に分けて捉え、局面ごとに必要な支えと人のつながりが変わることを理論的に示しました。しかも、ある局面で有利なつながりは、別の局面では足かせになります。だからこそ担い手は、局面に応じて物事の捉え方を切り替える必要がある、と提案しています。 2026.09.12 チーム・協働
組織に大切にされている実感が、働く姿勢と成果と健康を左右する 働く人は日々の経験から、「この組織は自分の貢献を認め、自分を気にかけてくれるか」という総合的な見方を作り上げます。著者らは、この見方を扱う理論について、蓄積された既存研究を統合して検証しました。その結果、何がこの実感を高めるのか、そしてそれが何につながるのかという理論の予測は、おおむね支持されました。関係の強さの違いや、あいだに入るしくみまで言い当てていた点が特徴です。 2026.09.12 組織・エンゲージメント
西洋発の枠組みでは多極化する世界の人事は語れない 国際人的資源管理の研究者が集まり、いまのグローバル人事の理論が現実に追いついているのかを検討した論考集です。結論は、欧米で組み立てられた「どこでも通用する」枠組みでは、政治と経済の中心が分散し、制度も文化も異なる現在の環境を説明しきれない、というものでした。国・組織・個人という3つの層をつなぎ、地域の文脈に合わせて人事を設計し直す必要があると述べています。 2026.09.11 採用・HRテック
退屈が増えた時期は落ち込みと先延ばしも同時に増える 仕事の退屈が高まった時期には、同じ時期に抑うつ気分やフラストレーションも高まり、それを通じて先延ばしや反生産的職務行動の増加ともつながるという関係が見られました。一方で、6週間後の時点への持ち越し(時間差の関係)は確認されていません。さらにこの結び付きは、仕事の進め方を自分で決められる度合いが高い人ほど弱くなっていました。退屈への対処は、起きているその時期に手を打つことが鍵になりそうです。 2026.09.11 組織・エンゲージメント
ガラスの天井は残り、越境するキャリア研究が広がる ジェンダーとキャリアに関する学術研究を長期にわたって集め、地図として整理した論文です。研究の量は増え続けており、中心にあるのは「ジェンダー化された組織」や不平等、昇進を阻む「ガラスの天井」といった主題でした。同時に、コロナ禍やデジタル化、ギグエコノミーを背景に、女性起業や国際キャリア、バウンダリーレス・キャリアへの関心が高まっていることが示されています。 2026.09.11 多様性・ハラスメント
気候アクティビズムは事業と両立する形だけがキャリアに報われる 社内で気候変動に取り組む専門職の活動は、どんな形なら評価され、どんな形なら見過ごされるのか。本研究は、専門サービス企業で働くコンサルタントらへの聞き取りから、活動の進め方には三つの型があり、事業と両立しやすい形ほどキャリア上の見返りを得やすいことを示しました。抵抗的な活動は評価されにくく、社内の変化は小幅なものにとどまりやすいと論じられています。 2026.09.10 リーダーシップ・マネジメント
職務の要求と資源の理論は、個人差・階層・家庭へ広がった 働く人が消耗するか、いきいき働けるかは、仕事の負荷と、それを支える資源の組み合わせで決まる。この考え方を提唱した著者ら自身が、先行レビュー以降の研究の広がりを整理し直したのが本稿です。近年の発展として、人によって効き方が違うこと、要求と資源は個人だけでなくチームや組織にもあること、働く人が自ら環境に働きかけること、そして仕事と家庭がつながっていることの四つが挙げられています。 2026.09.10 働き方・ウェルビーイング
やる気の「量」より「質」が成果と健康を決める 働く人のやる気は、多いか少ないかではなく、どんな質かで結果が変わります。本論文は自己決定理論の研究を職場の文脈で整理し、自律的動機づけが成果の質と働く人のウェルビーイング(心身の良好な状態)の両方を支えることを論じます。さらに、変革型リーダーシップや職務特性、公正さ、報酬制度との関係も検討しています。 2026.09.10 組織・エンゲージメント
危機下の企業と人道支援の連携は、原則を組み込まないと害になる 災害や紛争などの急性期の危機で、企業と人道支援組織の連携が増えています。この論文は、善意の協働であっても被災した人々に害を与え、人道支援のあり方を歪めうると指摘します。そのうえで、人道原則を各段階の倫理的な制約として組み込んだ評価枠組み「Humanitarian Impact Value Chain(HIVC)」を提案しています。 2026.09.09 組織・エンゲージメント
社会的評価が目標を上回ると企業の善行は緩む 企業の社会貢献は、経営者個人の「自分は道徳的な人間だ」という感覚に左右されるようです。本研究は、自社の社会面での成績が目標を下回ると経営者が埋め合わせに動き、上回るとむしろ気が緩むという、道徳のシーソーのような仕組みを描きました。企業の状況が経営者の心理に降り、そこから再び企業の行動へ戻る往復の道筋を、アーカイバルデータの分析と実験の両面から検討しています。 2026.09.09 倫理・コンプライアンス