人材論文百科 編集部

権力を持つ男性が「うちは実力主義」と見る理由は資源の充足感

女性が権力ある地位に就きにくいのはなぜか。この研究は、権限そのものではなく、権限に見合う資源が伴っているかどうかに注目します。男性は権限が大きいほど自社を実力主義的だと捉えやすく、その背景には、役割を果たすだけの資源が自分にはあるという認識の男女差がありました。資源が足りているという感覚は、実力主義の見方を通じて公平性向上の取り組みへの支持を弱めていました。

AI導入は人材の見極めと育成の前提を変える

AIの導入は、業務の一部を置き換えるだけでなく、働き方の前提そのものを組み替えていきます。本論文は、その変化が人材の見極め・育成・定着というタレントマネジメントの中核をどう作り替えるのかを、概念的に整理しました。そして、AIが職場に根づくかどうかは従業員自身の関わり方に左右されるとして、人事こそが経営の対応を先導する役割を担うと論じています。

前向きさは性格ではなく、測れて育てられる四つの資源です

前向きさは性格だから変えられない——そう考えられがちですが、本論文はそこに線を引きます。ホープ、自己効力感、レジリエンス、楽観という四つの資源からなる心理的資本は、測定でき、状況によって変わり、働きかけによって伸ばせるものとして位置づけられます。そのうえで、開発の方法やリーダーの関わり方まで含め、研究と実践の両面から到達点がまとめられています。

VRの状況判断テストは臨場感を高め組織の魅力も上げる

採用選考で使われる状況判断テストの場面を、テキスト・動画・VRのどれで見せるかによって、受検者の感じ方は変わります。二つの実験の結果、動画は臨場感を高めたものの組織の魅力度には影響せず、VRは臨場感と魅力度の両方を高めました。さらにVRの効果は、若年・中年の受検者で高年齢の受検者より強く表れました。

企業が従業員に権威を行使しているとは限らない

企業は従業員を統治する「私的政府」だ、という見方が広がっています。本論文は、権威が成り立つには「従わせる意図」と「実際に従われていること」の二つが必要だと整理し、この基準では経営陣が従業員に権威を行使していると言い切れる根拠は乏しいと論じます。権威は企業に必ず備わる性質ではなく、あるかどうかは場合による、というのが結論です。

AIと一体化した自己像は、創造の自信と依存の両方を生む

職場にAIが入り込み、働き手が「AIを使いこなす自分」という自己像を持つようになったとき、創造性はどうなるのでしょうか。本研究は、その自己像が創造的自己効力感を通じて創造的逸脱を促す一方、AI依存を通じてそれを抑えるという、逆向きの二つの経路があることを示しました。抑え込む側の経路は、損失や失敗を避けようとする傾向が強い人ほどはっきり現れています。

上司のワーカホリズムの悪影響は部下の「同一視」で和らぐ

働きすぎの上司のもとで部下が疲弊するかどうかは、部下がその上司をどう受け止めているかによって変わるようです。本研究では、上司のワーカホリズムが部下の強迫的情熱を高め、それがバーンアウトへとつながる経路が確認されました。一方で、上司に自分を重ねるリーダー同一視が強い部下では、この経路が弱まっていました。

ビジネスモデル革新の研究は、言葉の定義がそろっていない

ビジネスモデル革新は、この15年ほどで研究者にも実務家にも注目されてきたテーマです。しかし著者らが2000年から2015年の査読論文150本を見直したところ、この分野には理論的な土台が乏しく、実証研究も積み上がっていないことが浮かび上がりました。何がきっかけで革新が起き、どんな条件でどんな成果が出るのかは、まだ十分に描かれていません。

人事研究に定着したPLS-SEM、使い方には改善の余地

エンゲージメントのように直接は測れない概念を扱う人事研究では、PLS-SEMという分析手法が広く使われています。本研究は、主要誌に30年間で掲載された77本のHRM研究を集め、その使われ方を最新のガイドラインと突き合わせました。手法は分野に定着している一方で、適用と報告の両面に改善すべき点が残っていることが示されています。

職業データベースO*NETの派生尺度を整理し妥当性を検証

経営や組織の研究では、職業の特徴を測るためにO*NETの記述子を組み合わせた独自の尺度が数多く作られてきました。本レビューはそうした尺度を集めて整理し、妥当性の根拠が十分なものを選び出して、「O*NET Plus」という拡張された枠組みにまとめています。研究者が似た尺度を作り直す手間を減らし、職業記述の共通基盤を用意しようとする試みです。