配偶者の発言力が強いほど、家庭のエコ行動が職場に広がる

配偶者の発言力が強いほど、家庭のエコ行動が職場に広がる (人材論文百科の論文紹介)

紹介する論文

From “green spouses” to “green employees”: the mechanisms through which spouse family green behavior influences employees’ green advocacy behavior

Yuchen Jiao, Renhuai LIU, Tong Wen / Personnel Review (2026年) / DOI: 10.1108/pr-04-2025-0384

邦題(編集部訳): 「グリーンな配偶者」から「グリーンな従業員」へ:配偶者の家庭でのグリーン行動が従業員のグリーン擁護行動に影響するメカニズム

結論

家庭で配偶者が環境に配慮した行動をとっていると、従業員自身の環境に対する内発的動機づけが高まり、職場で環境配慮を呼びかけるグリーン擁護行動につながることが示されました。ただしこの流れは、配偶者の関係パワーが高い場合に強く働きます。従業員の環境行動は職場だけで決まるものではない、という視点を人事に与える研究です。

従業員が職場で環境配慮を提案したり呼びかけたりする行動は、これまで主に職場側の要因から説明されてきました。この研究は家庭に目を向け、配偶者の環境配慮行動が従業員の内発的動機づけを経て職場での働きかけにつながる道筋を検討しています。その道筋は配偶者の関係パワーの高さに左右され、さらにチームの命令的規範が動機と行動の結びつきを弱めることも示されました。

この論文の要点

  • 配偶者の家庭でのグリーン行動が、従業員の職場での提案行動につながります
  • 橋渡し役は、従業員自身の環境に対する内発的動機づけです
  • 配偶者の関係パワーが低いと、この結びつきは弱まります

研究の問い

従業員が自発的に環境配慮を職場に広げる行動は、企業のサステナビリティ推進にとって重要です。しかしこれまでの研究は、上司の姿勢や制度といった職場の要因に説明を求め、家庭という別の生活領域にいる重要な他者の存在をほとんど扱ってきませんでした。この研究は、人は身近な他者の行動を観察して学ぶという社会的学習理論に立ち、家庭での配偶者のグリーン行動が、職場でのグリーン擁護行動という、プロアクティブ性の高い環境行動にどう波及するのかを領域をまたいで検討します。あわせて、家庭側と組織側それぞれの条件が、この波及を強めたり弱めたりするのかを確かめようとしました。

調べ方

複数の方法を組み合わせた設計がとられています。研究1では、中国江西省の大手製造企業に勤める既婚の従業員140名を対象に、場面想定実験を実施しました。研究2では、中国の5つの省にまたがる63チームから集めた、従業員とその配偶者を対応づけた313組のデータを用い、3時点にわたって複数の情報源から回答を集める多階層のフィールド調査を行っています。

わかったこと

配偶者の関係パワー、つまり夫婦関係のなかでその配偶者が持つ影響力が高い場合、配偶者の家庭でのグリーン行動は従業員の環境に対する内発的動機づけを明確に高め、それが職場でのグリーン擁護行動を促していました。

一方、配偶者の関係パワーが低い場合には、同じグリーン行動であっても内発的動機づけを押し上げる力が弱まり、その先の擁護行動への効果も小さくなりました。家庭での行動が職場に伝わるかどうかは、その行動を誰がとっているかという関係性の重みに左右される、という結果です。

さらに組織側の条件として、チームの命令的規範、すなわち「環境に配慮すべきだ」とチーム内で共有された当為の期待が強い場合、従業員の内発的動機づけとグリーン擁護行動の結びつきはむしろ弱まっていました。規範が強い環境では、自分から呼びかける動機が行動に結びつきにくくなる可能性が示されています。

人事・研修担当への示唆

  • 環境施策の説明会や資料を、従業員本人だけでなく家族にも届く形で用意してみてください
  • 職場だけを対象にした環境研修の設計を見直し、家庭での実践を語る場を組み込みましょう
  • 「やって当然」と押し出す規範づくりが、自発的な呼びかけを抑えていないか点検してください

読むときの注意点

対象は中国の企業に勤める既婚の従業員とその配偶者であり、文化や家族のあり方が異なる職場にそのまま当てはまるとは限りません。実験と調査を組み合わせているものの、結果の多くは変数間の関連を示すものとして読むのが安全です。チームの命令的規範がなぜ結びつきを弱めるのかについて、抄録では詳しい説明はされていません。

キーワード解説

グリーン擁護行動
グリーン擁護行動とは、従業員が職場で環境に配慮した取り組みを他者に呼びかけ、支持を広げようと働きかける行動のことです。
社会的学習理論
社会的学習理論とは、人は身近な他者の行動やその結果を観察することを通じて、自分の行動を学び取っていくと考える理論のことです。
内発的動機づけ
内発的動機づけとは、報酬や罰といった外からの働きかけではなく、その活動自体への関心や価値観から生まれるやる気のことです。
関係パワー
関係パワーとは、夫婦などの親密な関係のなかで、一方が相手の判断や行動に影響を及ぼしうる力の大きさのことです。
命令的規範
命令的規範とは、その集団のなかで何をすべきか、何をすべきでないかとして共有されている当為の期待のことです。
プロアクティブ性
プロアクティブ性とは、指示を待たずに自分から状況に働きかけ、変化を起こそうとする姿勢のことです。
場面想定実験
場面想定実験とは、参加者に架空の状況を文章などで示し、その条件を変えて反応の違いを比べる調査方法のことです。

よくある質問

Q
家庭での配偶者の行動が、職場の行動に影響するのですか?
A
この研究では、配偶者の家庭でのグリーン行動が従業員の環境に対する内発的動機づけを高め、職場での呼びかけ行動につながる道筋が示されました。ただし影響の強さは、配偶者の関係パワーの高さに左右されます。
Q
チームで環境規範を強めれば、従業員は動いてくれますか?
A
この研究の結果はむしろ逆で、チームの命令的規範が強い場合、内発的動機づけと自発的な呼びかけ行動の結びつきは弱まっていました。規範で押し出すだけでは、自発性が引き出せない可能性があります。
Q
人事はこの結果を何に活かせますか?
A
環境施策を職場の中だけで完結させず、家庭にも情報が届く設計を検討する材料になります。また、規範の強調と自発的な働きかけの関係を、現場の実感と照らして点検するきっかけにもなります。

原論文のライセンス: 記載なし。本記事は原論文の内容を人材論文百科の編集部が独自に読み解いてまとめたもので、抄録や本文の翻訳・転載ではありません。図表は掲載していません。正確な内容は冒頭のDOIから原典をご確認ください。

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