マインドフルネスは注意を変え、職場の成果に届く

マインドフルネスは注意を変え、職場の成果に届く (人材論文百科の論文紹介)

紹介する論文

Contemplating Mindfulness at Work

Darren Good, Christopher Lyddy, Theresa M. Glomb, Joyce E. Bono, Kirk Warren Brown, Michelle K. Duffy, Ruth A. Baer, Judson A. Brewer, Sara W. Lazar / Journal of Management (2015年) / DOI: 10.1177/0149206315617003

邦題(編集部訳): 職場におけるマインドフルネスを考える

結論

マインドフルネスは、まず注意のあり方に働きかけ、そこから認知・感情・行動・生理という機能領域を経て、業績や人間関係、ウェルビーイングといった職場の成果に届く——本論文は分野ごとに散らばっていた研究知見を、この一本の道筋に整理しました。人事・研修担当にとっては、マインドフルネス施策を癒やしの取り組みではなく、注意という土台を扱う人材開発として位置づけ直す手がかりになります。

職場のマインドフルネスに関する研究は急速に増えていますが、知見は分野ごとに散らばったままでした。本論文はそれらを一つの枠組みに束ね、マインドフルネスが注意に働きかけ、認知・感情・行動・生理の各領域を通じて、業績・人間関係・ウェルビーイングという成果につながる道筋を示します。同時に、経営学がこれまで当然としてきた前提への問い直しも促しています。

この論文の要点

  • 出発点は注意。何にどう注意を向けるかの変化が起点になります
  • 注意の変化は認知・感情・行動・生理の四領域に波及します
  • 最終的に業績・人間関係・ウェルビーイングにつながると整理されます

研究の問い

近年、マインドフルネス(今この瞬間の経験に評価を加えず注意を向ける心のあり方)への関心は、臨床や心理学の領域を越えて経営学の研究でも急速に高まってきました。職場のさまざまな機能とマインドフルネスが深く結びついていることを示す証拠も、複数の分野で積み上がっています。しかし、それらは分野ごとにばらばらに置かれたままで、体系的に統合されてはいませんでした。そのため、実務家にとっても研究者にとっても「結局、職場の何にどう効くのか」を見通しにくい状態が続いていました。本論文は、この散在した知見を経営学の主流の研究につなげられる統合的枠組みとしてまとめ直すことを目的としています。

調べ方

本論文は新しくデータを集めた実証調査ではなく、複数の分野に散らばるマインドフルネス研究を整理し、ひとつの統合的枠組みに束ねるレビューです。著者たちは、マインドフルネスがまず注意のあり方に働きかけ、そこから認知・感情・行動・生理という機能領域へ効果が波及し、最終的に職場の成果に至るという道筋に沿って、既存の知見を配置していきます。対象とした研究の本数や具体的な文献検索の手順は、抄録では明記されていません。

わかったこと

枠組みの出発点は、マインドフルネスが注意に働きかけるという点です。何にどれだけ注意を向け、どれだけ持続できるかが変わることが、その後のさまざまな変化の起点として位置づけられています。

そして注意の変化は、認知・感情・行動・生理という四つの機能領域に下流の効果をもたらすと整理されます。たとえば認知の面では思い込みや決めつけにとらわれにくくなる認知的柔軟性が、感情の面では動揺からの立て直しにかかわる感情制御が、この枠組みの中に置かれています。

さらに、これらの機能領域の変化が、職務業績、職場での人間関係、そして心身の健康や幸福感を指すウェルビーイングという主要な職場成果に結びつくとされています。

著者たちは加えて、職場におけるマインドフルネスの証拠を突き合わせること自体が重要な問いを生み、経営学がこれまで前提としてきた考え方の見直しを促して、今後の研究課題につながると述べています。

人事・研修担当への示唆

  • 研修は知識の提供で終えず、注意を向け直す短い練習を日々続ける設計にしましょう
  • 効果測定は職務業績だけに絞らず、感情制御や人間関係の変化も指標に加えましょう
  • 万能薬として売らず、認知的柔軟性など何に効くのかを絞って社内に説明しましょう

読むときの注意点

本論文はレビューであり、著者たちが新たにデータを取って因果関係を検証したものではありません。示された道筋は各分野の知見を整理した枠組みであって、自社で同じ効果が出ることを保証するものではありません。効果の大きさや対象とした研究の範囲は抄録では明記されていないため、導入する際は小さく試し、自分たちで確かめる姿勢が欠かせません。

キーワード解説

マインドフルネス
マインドフルネスとは、今この瞬間に起きている経験に、良し悪しの評価を加えずに注意を向け続けている心のあり方のことです。
注意
注意とは、多くの情報の中から特定の対象を選び取り、そこに意識を向け続ける心の働きのことです。
認知的柔軟性
認知的柔軟性とは、状況が変わったときに、それまでの見方ややり方に固執せず、別の枠組みに切り替えられる力のことです。
感情制御
感情制御とは、湧き上がった怒りや不安などの感情に飲み込まれず、その強さや表し方を自分で調整する働きのことです。
ウェルビーイング
ウェルビーイングとは、心身の健康や仕事への満足感を含む、その人が良い状態にあることを幅広く指す概念のことです。
職務業績
職務業績とは、担当する仕事において求められる役割をどれだけ果たせているかを示す成果のことです。
統合的枠組み
統合的枠組みとは、分野ごとに散らばった知見を одном の見取り図に配置し、関係を見通せるようにした整理の枠のことです。

よくある質問

Q
マインドフルネスは仕事の成果に効きますか?
A
本論文の枠組みでは、マインドフルネスは注意のあり方を変え、認知・感情・行動・生理の各領域を通じて、業績や人間関係、ウェルビーイングにつながると整理されています。ただしレビューによる整理であり、効果の大きさが保証されているわけではありません。
Q
職場で何から始めればよいですか?
A
枠組みの起点は注意です。まずは短時間でも、今の作業や相手の話に注意を向け直す練習を日常業務の中に組み込むところから始めるのが、この論文の整理に沿った進め方になります。
Q
研修の効果はどう測ればよいですか?
A
職務業績だけを見ると変化を捉えそこねます。本論文は認知的柔軟性や感情制御といった機能領域を成果の手前に置いているため、そうした中間の変化や職場の人間関係もあわせて測ることが役立ちます。

原論文のライセンス: 記載なし。本記事は原論文の内容を人材論文百科の編集部が独自に読み解いてまとめたもので、抄録や本文の翻訳・転載ではありません。図表は掲載していません。正確な内容は冒頭のDOIから原典をご確認ください。

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