
紹介する論文
It is all in the family: Understanding how and when family-work facilitation affects successful aging at work.
邦題(編集部訳): すべては家族のなかにある:家庭から仕事への促進が職場での加齢の成功にどのように、そしてどのようなときに影響するのかを理解する
結論
家庭生活で得た支えやエネルギーが仕事にうまく持ち込まれている人ほど、職場での心理的レジリエンスが高く、それが年齢を重ねても健康や意欲を保って働ける状態につながっていました。この流れは、仕事を生活の中心と考える人でより強く現れます。家庭側の充実は個人の私生活の問題ではなく、シニア人材の活躍を支える資源として捉え直せます。
家庭から仕事へのプラスの影響が、高齢の働き手の職場での加齢の成功をどう支えるのかを、中国の高齢就業者を対象に3時点の調査で2回検証した研究です。家庭で得た資源は職場での心理的レジリエンスを高め、それを通じて加齢の成功につながっていました。さらに、仕事を生活の中心に置く人ほど、その効果は強く出ていました。
この論文の要点
- 家庭から仕事への促進が、職場での心理的レジリエンスを高めていました
- そのレジリエンスを介して、加齢の成功につながる道筋が示されました
- 仕事の中心性が高い人ほど、家庭からの資源が効きやすい傾向でした
研究の問い
高齢期まで働き続ける人が増えるなか、健康や意欲、能力を保ちながら働き続けられる状態、いわゆる職場での加齢の成功をどう支えるかが課題になっています。これまで仕事と家庭の関係は、家庭が仕事を妨げる面に注目が集まりがちでした。しかし、家庭で得られる支えや前向きな気持ちが仕事にプラスに働く面、すなわち家庭から仕事への促進が、年齢を重ねた働き手にどう効くのかはよくわかっていませんでした。著者らは、ある領域で得た資源が別の領域へ移っていく過程を説明するワーク・ホーム資源モデルを手がかりに、その道筋と、効果が強まる条件を検討しています。
調べ方
調査は2つ行われています。研究1では、中国の56社で働く45歳以上の高齢就業者263名を対象に、時期をずらした3回の調査を実施しました。研究2では、同じ結果が再現されるかと、効果が強まる条件を確かめるため、中国の高齢就業者316名にオンラインで3時点の調査を行っています。研究2では、加齢の成功を説明しうる別の道筋である人と仕事の適合や職業的未来時間展望の影響を統計的に取り除いたうえで分析されました。使用した尺度や業種の詳細は抄録では明記されていません。
わかったこと
研究1では、家庭から仕事への促進が高い人ほど、職場での心理的レジリエンスが高いという関連が確認されました。そしてその心理的レジリエンスの高さが、加齢の成功と結びついていました。つまり、家庭で得た支えや前向きな気持ちが、仕事の場でしなやかに立て直す力として働き、それが年齢を重ねながら良い状態で働き続けることにつながる、という道筋です。
研究2でも同じ道筋が再現されました。しかも、加齢の成功を説明しそうな別の要因、すなわち人と仕事の適合や職業的未来時間展望の影響を取り除いても、この関係は残っています。家庭からのプラスの影響には、それら独自の役割があると示唆されます。
さらに研究2では条件も見つかりました。仕事の中心性、つまり仕事が生活のなかでどれだけ重要な位置を占めるかが高い人ほど、家庭から仕事への促進が心理的レジリエンスを押し上げる度合いが強かったのです。
人事・研修担当への示唆
- シニア層の面談で、家庭側の支えが仕事にどう活きているかも話題にし、両立支援を負担軽減だけに絞らない
- 介護や家族行事への配慮といった家庭の資源を守る制度を、高齢社員の戦力化施策として位置づけ直す
- 研修では、家庭で培った経験を仕事の課題に転用する視点を扱い、心理的レジリエンスの土台を広げる
読むときの注意点
2つの研究はいずれも中国の高齢就業者への質問紙調査で、他の国や若年層にそのまま当てはまるとは限りません。時期をずらした調査ではありますが、示されたのは関連であり、家庭から仕事への促進が加齢の成功を引き起こすと断定はできません。逆に、職場で良い状態にある人ほど家庭の資源を活かしやすい可能性も残ります。
キーワード解説
- 加齢の成功
- 加齢の成功とは、年齢を重ねても健康や意欲、働く能力を保ち、仕事のなかで良い状態を維持し続けられることです。
- 家庭から仕事への促進
- 家庭から仕事への促進とは、家庭生活で得た支えや気力、経験が仕事の場面にプラスに働き、成果や適応を助けることです。
- 心理的レジリエンス
- 心理的レジリエンスとは、困難やストレスに直面しても押しつぶされず、立て直して機能を回復できる心の弾力性のことです。
- ワーク・ホーム資源モデル
- ワーク・ホーム資源モデルとは、仕事と家庭の間で資源がどのように移り、成果に影響するかを説明する理論的枠組みのことです。
- 仕事の中心性
- 仕事の中心性とは、その人の生活全体のなかで仕事がどれだけ重要な位置を占めていると本人が感じているかの程度です。
- 人と仕事の適合
- 人と仕事の適合とは、本人の能力や価値観と、担当する職務の要求や特徴とがどれだけ噛み合っているかを表す概念です。
- 職業的未来時間展望
- 職業的未来時間展望とは、自分の職業人生に残された時間や機会がどれだけあると本人が捉えているかを指す考え方です。
よくある質問
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Q家庭の充実は仕事にも良い影響がありますか?
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Aこの研究では、家庭で得た支えや気力が仕事に持ち込まれている人ほど、職場での心理的レジリエンスが高く、年齢を重ねても良い状態で働けている傾向が示されました。家庭は仕事の妨げになるだけではない、という視点が得られます。
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Q両立支援はシニア施策として意味がありますか?
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A家庭側の資源が職場での立て直す力を支え、加齢の成功につながる道筋が示されているため、両立支援を高齢社員の活躍施策の一部として設計する根拠になります。ただし調査は関連を示すもので、効果の保証ではありません。
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Q効果が出やすいのはどんな社員ですか?
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A仕事の中心性が高い人、つまり仕事を生活のなかで重要だと感じている人ほど、家庭から仕事への促進が心理的レジリエンスを高める度合いが強い、という結果でした。一律ではなく個人差がある点に注意が必要です。
原論文のライセンス: 記載なし。本記事は原論文の内容を人材論文百科の編集部が独自に読み解いてまとめたもので、抄録や本文の翻訳・転載ではありません。図表は掲載していません。正確な内容は冒頭のDOIから原典をご確認ください。


