
紹介する論文
A Review of the Nonmarket Strategy Literature
邦題(編集部訳): 非市場戦略研究のレビュー
結論
この論文は、社会的な取り組みを扱う戦略的CSRと、政府への働きかけを扱う企業政治活動という二つの研究の流れを整理し、両者が重なり合うにもかかわらず別々に発展してきたことを指摘しました。そのうえで、非市場戦略が組織業績に結びつく道筋を複数の理論でまとめています。人事・研修担当にとっては、社会貢献と対外対応を別部署の話として分けず、ひとつの戦略として人材育成に落とし込む必要があることを示す内容です。
企業の戦略は市場での競争だけで決まりません。この論文は、社会的な取り組みを扱う戦略的CSRと、政府や規制当局への働きかけを扱う企業政治活動という二つの研究の流れを、非市場戦略として一つに束ねて整理しています。両者は実際には重なり合っているにもかかわらず、これまでほぼ別々に発展してきました。そのうえで、非市場戦略が組織業績に効いていく道筋を描き、今後の研究課題を示しています。
この論文の要点
- 社会的な取り組みと政治的な働きかけは、本来つながっている
- 二つの研究の流れは、重なりがあるのにほぼ交わらず発展してきた
- 業績への影響を説明するため、複数の理論を組み合わせた枠組みを提示
研究の問い
企業が成果を出す手段は、価格や品質といった市場での競争だけではありません。社会や環境への責任ある取り組みで支持を得たり、政府や規制当局に働きかけて事業環境を整えたりする動きも、経営の重要な一部です。しかし研究の世界では、前者を扱う戦略的CSRと、後者を扱う企業政治活動が、それぞれ独立した領域として蓄積されてきました。実際には企業戦略の社会的な側面と政治的な側面は重なっているのに、両者を合わせて組織業績への影響を捉える視点が不足していた。ここが、このレビューの出発点です。
調べ方
新しくデータを集めた調査ではなく、既存研究を整理する文献レビューです。2000年から2014年に、主要誌および専門誌に掲載された戦略的CSRと企業政治活動の研究を対象としています。手順は四段階で、(a)非市場戦略と組織業績の関係を扱った研究の整理、(b)影響が生じるメカニズムの特定、(c)二つの研究の流れの統合、(d)複数の理論を組み合わせた多理論的枠組みの構築、という流れです。検索条件や採録した論文の本数は、抄録では明記されていません。
わかったこと
最大の指摘は、非市場戦略の研究が二つに割れたまま進んできたことです。企業の社会的な取り組みを競争力につなげる戦略的CSRの研究と、政府や規制当局への働きかけを扱う企業政治活動の研究は、対象が重なるにもかかわらず、互いをほとんど参照せずに積み上がってきました。
著者らはこの二つを非市場戦略として同じ土俵に載せ、それが組織業績にどう結びつくのかを整理します。そのうえで、影響が生まれるメカニズム、つまり取り組みが成果に効くまでの間で何が働いているのかを取り出し、複数の理論を組み合わせた多理論的枠組みとしてまとめました。単一の理論では説明しきれない、という判断が背景にあります。
ただし、どのメカニズムがどれだけ効くのかという具体的な大きさは、抄録では明記されていません。この論文が示したのは答えそのものというより、問いの立て方の整理と、今後検証すべき課題の一覧です。
人事・研修担当への示唆
- 社会貢献の研修と、規制対応や渉外の研修を別建てにせず、一本化した学習内容として設計しましょう
- CSR担当と渉外・広報の担当者が同じ場で議論する機会を年間計画に入れ、前提を共有させます
- 施策の効果を測るとき、売上への直接効果だけでなく途中のメカニズムを分けて指標化します
読むときの注意点
この論文は既存研究を整理したレビューであり、新たにデータを集めて仮説を検証したものではありません。対象は2000年から2014年に刊行された研究で、それ以降の動向は含まれません。また、どの施策がどれだけ成果を高めるかという具体的な数値は抄録に示されておらず、業界や国による条件の違いも一律には語れない点に注意が必要です。
キーワード解説
- 非市場戦略
- 非市場戦略とは、価格や品質といった市場での競争以外の手段、たとえば社会的な活動や政治的な働きかけによって企業の立場を有利にしようとする戦略のことです。
- 戦略的CSR
- 戦略的CSRとは、社会や環境への取り組みを慈善活動ではなく競争力の源泉として位置づけ、事業戦略の一部として行う考え方のことです。
- 企業政治活動
- 企業政治活動とは、企業が政府や規制当局に働きかけ、自社にとって有利な制度や政策の環境をつくろうとする活動のことです。
- 組織業績
- 組織業績とは、売上や利益といった財務的な成果に加え、評判や存続力なども含めた組織全体の成果のことです。
- メカニズム
- メカニズムとは、ある取り組みが結果に結びつくまでの間で働く仕組みや経路のことです。原因と結果をつなぐ中身を指します。
- 多理論的枠組み
- 多理論的枠組みとは、一つの理論では説明しきれない現象を、複数の理論を組み合わせて捉えようとする分析の枠組みのことです。
よくある質問
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Q非市場戦略とは何ですか?
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A市場での価格や品質の競争ではなく、社会的な取り組みや政府への働きかけを通じて企業の立場を有利にする戦略のことです。この論文は、その代表格である戦略的CSRと企業政治活動を、まとめて一つの領域として扱っています。
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QCSRと政治活動は何が違いますか?
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A向き合う相手が違います。戦略的CSRは社会や環境への責任を通じて支持を得ようとし、企業政治活動は政府や規制当局に働きかけます。ただし両者は重なる部分があり、この論文は分けて論じ続けてきたことの限界を指摘しています。
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Q人事の仕事にどう関係しますか?
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A社会貢献も渉外も、実際に動かすのは人です。両方を無関係なスキルとして扱うのではなく、非市場戦略という一つの視点で人材育成や評価の設計を考えることが役立ちます。効果の具体的な大きさは抄録では明記されていません。
原論文のライセンス: cc-by-nc。本記事は原論文の内容を人材論文百科の編集部が独自に読み解いてまとめたもので、抄録や本文の翻訳・転載ではありません。図表は掲載していません。正確な内容は冒頭のDOIから原典をご確認ください。


