硬直した仕組みは現場管理職の「組み合わせ直し」で動き出す

硬直した仕組みは現場管理職の「組み合わせ直し」で動き出す (人材論文百科の論文紹介)

紹介する論文

Countering Organizational Rigidity Through Operational Resource Bundling: Integrating Resource Orchestration and Dynamic Capabilities

Catherine Collins, Cristina B. Gibson, Martijn van der Kamp / Journal of Management (2026年) / DOI: 10.1177/01492063261471061

邦題(編集部訳): オペレーショナルな資源バンドリングによる組織の硬直性への対抗——資源オーケストレーションと動的能力の統合

結論

組織が成熟すると、標準化された仕組みや情報システムは効率を高める一方で、使い方が固まっていきます。この研究は、現場に近い運用管理者が硬直した資源に柔軟な資源を組み合わせ直し、上位管理者がそれを承認して後押しすることで価値創造につながる筋道を描きました。人事にとっては、制度を作り替えるより、現場の組み合わせ直しを支える発想が有効だという示唆になります。

効率のために整えた標準の仕組みは、時間がたつと決まった使い方から動かなくなります。この研究は、そのずれに最初に気づくのが現場の運用管理者であり、彼らが既存の硬直した資源に、つながりづくりや人材育成といった柔軟な資源を組み合わせて価値を生み出していく過程を明らかにしました。上位の管理者はその組み合わせを認め、動かす役割を担っていました。

この論文の要点

  • 標準化や情報システムは、効率を生む一方で使い方が硬直化していく
  • 現場の運用管理者が柔軟な資源をつかみ、硬直した資源と組み合わせる
  • 上位管理者が承認し後押しすることで、組み合わせが価値創造に結びつく

研究の問い

組織は成長するにつれ、効率を高めるために標準化された仕組みや情報システム、技術基盤を整えていきます。ところがこうした資源は、いったん定着すると決まった使い方から動かなくなり、硬直化していきます。その結果、目の前の顧客が抱える新しい要望に応えたり、現れた機会をつかんだりする柔軟性が失われます。これまでの資源オーケストレーションの議論は、経営層が資源をどう配置するかに関心が集まりがちでした。本研究は、そのずれを日々調整しているのは誰なのか、硬直した資源はどのような手順で使えるものに戻るのかを問い、標準化とカスタマイズのはざまで揺れる組織の実態に迫ろうとしました。

調べ方

調査対象は、多数の拠点で事業を展開する一つの組織です。研究チームは、戦略を担う上位の管理者と現場の運用管理者への計92件のインタビューに加え、現場に入り込んで仕事の流れを見る観察、社内に残る記録文書を組み合わせて分析しました。拠点数は252に及びます。数量的に効果を測る設計ではなく、出来事のつながりを丁寧に読み解く質的研究として組み立てられています。

わかったこと

見えてきたのは、資源を組み合わせ直す三つの経路です。市場に向けたもの、顧客に向けたもの、組織の刷新に向けたものがあり、いずれも似た流れをたどっていました。

まず上位の戦略管理者が、標準化のための枠組み、情報システム、技術的な基盤といった資源を用意します。これらは時間とともに使い方が固定され、硬直化します。現場の運用管理者はそのずれを敏感に察知し、人や部署をつなぐ活動、解決策を練り上げる活動、従業員を育てる活動といった柔軟な資源をつかみ取り、硬直した資源と組み合わせていました。著者らはこれをオペレーショナル資源バンドリング(ORB)と呼びます。

さらに、戦略管理者が現場と協働し、その組み合わせを認め、後押しし、必要な資源を動かしていくことで、価値創造や競争優位につながっていました。著者らはORBを、資源オーケストレーションの一形態であると同時に、動的能力を内側で支える小さな仕組みとして位置づけています。

人事・研修担当への示唆

  • 現場の管理職が制度の使いにくさに気づいた時、その気づきを拾う定例の場をつくりましょう
  • 研修は制度の説明で終わらせず、既存の仕組みを別の使い方に組み替える演習を入れましょう
  • 現場発の工夫は、上位管理者が正式に承認し資源を付ける段階まで手順を決めておきましょう

読むときの注意点

一つの組織を深く追った質的研究のため、他の業種や規模の組織にそのまま当てはまるとは限りません。効果の大きさを数値で検証した研究ではなく、出来事のつながりから解釈された知見です。また、ここで描かれた経路は、上位管理者が現場の工夫を受け止める土壌があった環境で観察されたものである点にも注意が必要です。

キーワード解説

資源バンドリング
資源バンドリングとは、すでにある資源を新しい組み合わせにまとめ直し、そこから使える力を生み出す活動のことです。
資源オーケストレーション
資源オーケストレーションとは、資源を集め、組み合わせ、実際に使うところまで管理者が指揮していく一連の営みのことです。
動的能力
動的能力とは、環境の変化に合わせて自社の資源や仕組みをつくり替えていく組織の力のことです。
硬直化
硬直化とは、仕組みや資源の使い方が固定され、状況が変わっても別の使い方に切り替えられなくなる状態のことです。
標準化
標準化とは、仕事のやり方や様式をそろえ、どの場所でも同じ手順で進められるようにすることです。
運用管理者
運用管理者とは、現場に近い位置で日々の業務や人員を回し、実行の責任を持つ管理職のことです。
価値創造
価値創造とは、持っている資源を使って顧客や自社にとっての新しい価値を生み出すことです。

よくある質問

Q
組織が硬直化するのはなぜですか?
A
効率を高めるために標準化された仕組みや情報システムを整えると、その使い方が次第に固定されるためです。仕組み自体が悪いのではなく、用意された使い方から動かなくなる点が問題だと本研究は述べています。
Q
現場の管理職に何ができますか?
A
本研究では、現場の運用管理者が硬直したずれに気づき、人や部署をつなぐ活動、解決策づくり、従業員の育成といった柔軟な資源を、既存の仕組みと組み合わせていました。制度を壊さずに使い方を変える動きです。
Q
上位の管理者の役割は何ですか?
A
資源を最初に用意する役割に加え、現場が生み出した組み合わせを認め、後押しし、必要な資源を動かす役割を担っていました。現場の工夫は、この承認と支援があってはじめて価値創造につながっていました。

原論文のライセンス: cc-by。本記事は原論文の内容を人材論文百科の編集部が独自に読み解いてまとめたもので、抄録や本文の翻訳・転載ではありません。図表は掲載していません。正確な内容は冒頭のDOIから原典をご確認ください。

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