
紹介する論文
Virtual Reality-, Video- or Text-Based SJTs: Investigating the Effect of Stimulus Format on Presence and Organizational Attractiveness Across Age Groups
邦題(編集部訳): VR・動画・テキスト形式の状況判断テスト——刺激形式が臨場感と組織魅力度に与える影響を年齢層間で検討する
結論
動画やVRで場面を提示する状況判断テストは、テキストだけの提示より受検者の臨場感を高めます。ただし会社の魅力度まで押し上げたのはVR形式のみで、その効果は若年層・中年層でより強く、高年齢層では弱いという結果でした。選考体験に新しい技術を導入する際は、年齢による受け止め方の違いも設計に織り込む必要があります。
採用選考で使われる状況判断テストの場面を、テキスト・動画・VRのどれで見せるかによって、受検者の感じ方は変わります。二つの実験の結果、動画は臨場感を高めたものの組織の魅力度には影響せず、VRは臨場感と魅力度の両方を高めました。さらにVRの効果は、若年・中年の受検者で高年齢の受検者より強く表れました。
この論文の要点
- 動画形式はテキストより臨場感を高めたが、組織の魅力度は変わらなかった
- VR形式は臨場感と組織魅力度の両方を高め、臨場感が両者をつないでいた
- VRによる効果は若年層・中年層で強く、高年齢層では弱かった
研究の問い
人材選抜の現場では、VR(バーチャルリアリティ)などの新しい技術が使われ始めています。状況判断テストは、仕事で起こりそうな場面を示して対応を選ばせるテストで、その場面をテキストで読ませるか、動画やVRで体感させるかという刺激形式の選択肢が広がりました。一方で、労働力の高齢化や人手不足が課題として語られるなかでも、テストの特性が受検者の年齢とどう関わるのかを調べた研究は限られていました。そこで本研究は、選抜手続きを部品(モジュール)の組み合わせとして捉える考え方に基づき、刺激形式と年齢の関係が、臨場感と組織魅力度の受け止め方にどう影響するのかを検討しました。
調べ方
二つの実験研究が行われました。研究1では122名が参加し、状況判断テストの場面を動画で見る条件とテキストで読む条件を比較しています。研究2では121名が参加し、VRで体験する条件とテキスト条件を比較しました。いずれの研究でも、刺激形式と受検者の年齢の組み合わせが、臨場感(その場にいるかのような感覚)と組織魅力度の認知にどう関わるかを分析し、臨場感を経由する媒介効果も検討しています。参加者の国や職種は抄録では明記されていません。
わかったこと
研究1では、動画形式はテキスト形式より受検者の臨場感を高めました。しかし組織魅力度については、統計的に意味のある差は見られませんでした。臨場感が刺激形式と組織魅力度をつなぐ媒介効果も確認されず、年齢によって効果が変わるという結果も出ませんでした。
研究2では様相が変わります。VR形式はテキスト形式に比べて、臨場感と組織魅力度の両方を有意に高めました。さらに、刺激形式が組織魅力度に及ぼす影響は臨場感を経由するという媒介効果が確認されています。加えて年齢による違いがあり、VRによる効果は若年層と中年層でより強く、高年齢層では相対的に弱いという結果でした。
つまり「リアルに見せれば魅力が上がる」という単純な話ではなく、VRのように没入度の高い形式で初めて魅力度の向上が現れ、その恩恵の大きさも年齢層によって異なることが示されました。
人事・研修担当への示唆
- 選考体験の魅力を高めたいなら動画化だけでは足りません。VRなど没入度の高い形式の導入を検討しましょう
- VR選考を使うなら、高年齢の応募者にはテキストなど別形式も用意し、受検者が選べるようにします
- 新形式の導入後は受検者に臨場感と会社の魅力度を尋ね、年齢層別に効果が出ているか確認します
読むときの注意点
二つの実験はいずれも参加者数が限られており、結果をそのまま自社に当てはめるのは早計です。測定されたのは受検者が感じた臨場感と組織魅力度であり、実際の応募行動や入社決定まで確かめられたわけではありません。参加者の属性、実施された国、使用機器の詳細は抄録では明記されていません。
キーワード解説
- 状況判断テスト
- 状況判断テストとは、仕事で起こりうる場面を提示し、どう対応するかを選ばせて判断力を測る選考手法のことです。
- 臨場感
- 臨場感とは、提示された場面をあたかもその場にいるかのように感じる、心理的な没入の感覚のことです。
- 組織魅力度
- 組織魅力度とは、応募者がその会社を働く場としてどれくらい魅力的だと感じているかを表す評価のことです。
- バーチャルリアリティ
- バーチャルリアリティとは、専用機器を通じて人工的につくられた空間を、現実のように体験させる技術のことです。
- 刺激形式
- 刺激形式とは、テストの場面をテキスト・動画・VRなど、どの媒体で受検者に提示するかという提示の形のことです。
- 媒介効果
- 媒介効果とは、ある要因が結果に影響する際に、その間に別の要因が挟まって影響が伝わる仕組みのことです。
- 人材選抜
- 人材選抜とは、応募者の中から自社に適した人を選ぶために行う、一連の評価と意思決定の手続きのことです。
よくある質問
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QVRを使った選考は応募者に好印象ですか?
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Aこの研究では、VRで場面を提示した状況判断テストは、テキスト提示に比べて受検者の臨場感を高め、会社を魅力的だと感じる度合いも高めました。ただし効果の強さには年齢差があり、高年齢層では相対的に弱いという結果でした。
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Q動画にすればテキストより効果がありますか?
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A動画形式はテキスト形式より臨場感を高めましたが、会社の魅力度には意味のある差が出ませんでした。臨場感を経由する影響も確認されていません。単に映像化するだけでは、企業イメージの向上までは期待しにくいと言えます。
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Q高年齢の応募者にVR選考は不向きですか?
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A不向きと断定はできません。この研究で示されたのは、VRによる臨場感と魅力度の向上が若年層・中年層でより強く、高年齢層では弱かったという違いです。一律導入ではなく、形式を選べる設計にしておくのが無難でしょう。
原論文のライセンス: 記載なし。本記事は原論文の内容を人材論文百科の編集部が独自に読み解いてまとめたもので、抄録や本文の翻訳・転載ではありません。図表は掲載していません。正確な内容は冒頭のDOIから原典をご確認ください。


