
紹介する論文
Daily temporal profiles at work: State-level dynamics in past, present, and future focus.
邦題(編集部訳): 職場における日々の時間的プロファイル:過去・現在・未来への焦点の状態レベルの動態
結論
過去・現在・未来のどこに意識が向くかという時間的焦点は、その人に固定された特性ではなく、日によって組み合わせが入れ替わる状態でした。しかもその日のパターンは、朝の時点での時間的豊かさや時間コントロールの見通しに左右され、課題遂行・協働・撤退行動とも関連していました。人事は「性格」より「その日の条件」に働きかける余地があります。
同じ人でも、昨日と今日とで「過去を振り返る日」「今この瞬間に集中する日」「先を見据える日」は入れ替わります。この研究は、そうした日々の時間的焦点の組み合わせをいくつかの типパターンとして取り出し、朝の時点での見通しによってどのパターンになるかが変わること、そしてその日の仕事ぶりと結びついていることを示しました。
この論文の要点
- 時間的焦点は固定的な性格ではなく、日ごとに変わる状態でした
- 朝の時間的豊かさや時間コントロールの見通しがその日のパターンを左右します
- パターンは課題遂行・協働・撤退行動といったその日の行動と関連しました
研究の問い
仕事のなかで人が過去・現在・未来のどこに意識を向けているかは、時間的焦点と呼ばれ、これまで主にその人に安定して備わった特性として扱われてきました。しかし実際の職場では、締切に追われる日もあれば、来期の構想を練る日もあり、意識の向き先は一日単位で揺れているように見えます。そこでこの研究は、時間的焦点を状態レベルでとらえ直しました。三つの焦点は独立ではなく組み合わせで働くと考えられるため、個々の得点ではなくパターンとして日々の時間の使われ方を描き、それが何によって変わり、何と結びつくのかを問うています。
調べ方
研究は二つのスタディで構成されています。働く人に日々くり返し回答してもらう形で、その日の過去・現在・未来それぞれへの意識の向き方を測り、潜在プロファイル分析という、回答の組み合わせが似た状態をいくつかのタイプに束ねる手法でパターンを取り出しました。スタディ2ではスタディ1の結果を再現したうえで、もう一つ別のパターンが見つかっています。あわせて、朝の時点での見通しを測り、その日の仕事上の行動との関連も検討しました。対象者の属性や測定期間の詳細は、抄録では明記されていません。
わかったこと
まず、状態レベルの時間的焦点は、いくつかの明確なプロファイル(組み合わせのタイプ)として現れました。スタディ2ではスタディ1のプロファイルが再現され、さらにもう一つのプロファイルが加わっています。重要なのは、同じ人が毎日同じプロファイルにとどまるのではなく、日によって所属するプロファイルが移り変わるという点です。
この日々の移り変わりは、朝の時点での見通しによって形づくられていました。具体的には、その日に使える時間がどれくらいありそうかという時間的豊かさの感覚、自分で時間の使い方を決められそうかという時間コントロールの感覚、そして時間をお金のように費用対効果で捉える経済的マインドセットが関わっていました。
さらに、その日どのプロファイルにいたかは、課題遂行、同僚との協働、そして仕事から距離を置く撤退行動といったその日の行動と関連していました。時間の捉え方は内面の話にとどまらず、目に見える働き方と結びついていたことになります。
人事・研修担当への示唆
- 朝会や一日の立ち上がりで、その日に使える時間の見通しを共有する時間を設けてください
- 予定を詰め込みすぎず、自分で順序を決められる裁量時間を一日のどこかに確保しましょう
- 集中力の低さを本人の性格と決めつけず、その日の条件が変わっていないかを先に確認します
読むときの注意点
日々の変化と行動の関連が示されていますが、これは同じ日に観察された結びつきであり、時間の捉え方が成果を生んだと因果を断定できるものではありません。逆向きの影響も考えられます。また対象者の範囲や職種、測定の詳細は抄録では明記されておらず、自社の状況にそのまま当てはまるかは慎重に判断する必要があります。
キーワード解説
- 時間的焦点
- 時間的焦点とは、人が過去・現在・未来のどこにどれくらい意識を向けているかという、時間に対する注意の配分のことです。
- 状態レベル
- 状態レベルとは、その人に安定して備わった特性ではなく、日や場面によって変動する一時的な状態として物事をとらえる見方のことです。
- 潜在プロファイル分析
- 潜在プロファイル分析とは、複数の指標の値の組み合わせが似ている人や状況を、いくつかの типタイプに束ねて取り出す統計手法のことです。
- 時間的豊かさ
- 時間的豊かさとは、自分にはやるべきことに対して十分な時間があると感じられる、時間のゆとりの感覚のことです。
- 時間コントロール
- 時間コントロールとは、自分の時間の使い方や仕事の順序を自分で決められていると感じられる感覚のことです。
- 経済的マインドセット
- 経済的マインドセットとは、時間をお金のような資源とみなし、費用対効果の観点で使い方を判断しようとする考え方のことです。
- 課題遂行
- 課題遂行とは、任された仕事そのものをどれだけ的確に、求められた水準でやり遂げられているかを指す働きぶりのことです。
- 撤退行動
- 撤退行動とは、仕事から心理的・物理的に距離を置く行動で、集中を切らす、席を外す、関与を減らすなどが含まれます。
よくある質問
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Q時間的焦点は性格のようなものですか?
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Aこの研究では、日によって変わる状態としての側面が確認されました。同じ人でも過去・現在・未来への意識の向き方の組み合わせは日ごとに移り変わり、固定された性格としてだけ扱うのは十分ではないことが示されています。
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Qその日の時間の捉え方は何で決まりますか?
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A朝の時点での見通しが関わっていました。その日に使える時間がありそうかという時間的豊かさ、自分で時間の使い方を決められそうかという時間コントロール、時間を費用対効果で捉える経済的マインドセットが挙げられています。
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Q職場の成果とどう関係しますか?
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Aその日どのプロファイルにいたかは、課題遂行、同僚との協働、仕事から距離を置く撤退行動と関連していました。ただし同じ日に観察された結びつきであり、時間の捉え方が成果を引き起こしたと断定できるものではありません。
原論文のライセンス: 記載なし。本記事は原論文の内容を人材論文百科の編集部が独自に読み解いてまとめたもので、抄録や本文の翻訳・転載ではありません。図表は掲載していません。正確な内容は冒頭のDOIから原典をご確認ください。


