100年の人事評価研究を総括、今後の焦点は業績管理にあると提言

100年の人事評価研究を総括、今後の焦点は業績管理にあると提言 (人材論文百科の論文紹介)

紹介する論文

Performance appraisal and performance management: 100 years of progress?

Angelo S. DeNisi, Kevin R. Murphy / Journal of Applied Psychology (2017年) / DOI: 10.1037/apl0000085

邦題(編集部訳): 人事評価と業績管理:100年で進歩はあったのか?

結論

人事評価に関する100年分の研究を振り返ったレビューです。評価尺度の形式、評価者研修、評価の目的、評価者の認知など8つの領域で積み重なった研究を整理し、今後は特に業績管理に焦点を当てた研究が必要だと提言しています。評価制度を見直す人事担当者にとっては、評価シートの改良にとどまらず、運用全体を見渡す視点が得られる論文です。

人事評価はどうすれば正確で役に立つものになるのでしょうか。著者らは、この問いに取り組んできた約100年分の研究を8つのテーマに分けて振り返りました。研究が特に盛んだった1970〜2000年については、実りの多かった研究の方向と、前進を妨げた可能性のある方向を見分けています。結論として、主要誌の論文は新しい理論を生み出すよりも、他で提案された考えを検証する役割が中心でした。それでも重要な問いの多くに答えてきたと評価しています。

この論文の要点

  • 人事評価と業績管理の100年分の研究を、尺度形式や評価者研修など8領域に分けて整理
  • 主要誌の役割は新理論の提案ではなく、他で生まれた考えの検証が中心だったと結論
  • 今後は特に業績管理に焦点を当てた研究が必要だと著者らは提言

研究の問い

人事評価は昇給や昇進、育成の判断に使われる重要な仕組みです。一方で、「評価が正確でない」「納得できない」といった声が絶えない制度でもあります。心理学では100年にわたり、どんな評価シートなら誤差が減るのか、評価者をどう訓練すればよいのかといった問いが研究されてきました。しかし研究の量が膨大になり、何が本当に分かったのか、どの研究の方向が遠回りだったのかを見渡すことは難しくなっています。本研究はこの長い蓄積を振り返り、人事評価研究が実際にどれだけ進歩したのかを問い直すものです。

調べ方

新たなデータを集めた実証研究ではなく、過去の文献を振り返るレビュー論文です。Journal of Applied Psychology(以下JAP)の掲載論文を中心に、他誌の重要な研究も含めて100年分の蓄積を検討しています。整理の軸は8領域です。具体的には、評価尺度の形式、評価の質を判断する基準、評価者研修、被評価者の反応、評価の目的、評価の情報源、属性による評価の差、評価者の認知プロセス(観察・記憶・判断といった頭の中の働き)です。研究が最も盛んだった1970〜2000年の動向も重点的に分析しています。

わかったこと

著者らの全体的な結論は次のとおりです。JAPの論文がこの分野で果たした役割は、新しいモデルや発想を打ち出すことよりも、他の場で提案された考えやモデルを検証することが中心でした。ただし著者らはこれを否定的には見ておらず、他の研究者が投げかけた重要な問いの多くに答えることで、分野に重要な貢献をしてきたと評価しています。

研究が最も盛んだった1970〜2000年については、実りの多かった研究の方向と、かえって前進を妨げた可能性のある方向の両方があったと指摘しています。8領域それぞれで何が学ばれたかも論じられていますが、個別の結論の中身は抄録では明記されていません。

そのうえで著者らは今後の研究課題をいくつか示しています。特に必要だとしているのが、業績管理(評価だけでなく、目標設定やフィードバック、育成を通じて業績そのものを高める一連の取り組み)に焦点を当てた研究です。

人事・研修担当への示唆

  • 評価制度を見直すときは、評価シートの書式変更だけに頼らず、評価者研修や評価の目的の明確化もあわせて検討する
  • 評価結果を昇給に使うのか育成に使うのか、評価の目的を社内で明確にし、評価者と被評価者の双方に伝える
  • 期末の人事評価の精度を上げるだけでなく、日常の目標設定やフィードバックを含めた業績管理の仕組み全体として制度を設計する

読むときの注意点

本論文は文献レビューであり、新たなデータで仮説を検証したものではありません。取り上げる研究の選び方には著者らの判断が入り、JAP掲載論文が中心である点にも注意が必要です。また、8領域それぞれの具体的な結論や、どの研究の方向が前進を妨げたのかは抄録では明記されていません。実務に当てはめる際は、本文や個別の研究を確認することをおすすめします。

キーワード解説

人事評価
人事評価とは、従業員の仕事ぶりや成果を一定の基準で評価し、処遇や育成を判断する材料にする仕組みのことです。
業績管理
業績管理とは、目標設定、日常のフィードバック、評価、育成などを通じて、個人と組織の業績を継続的に高めていく一連の取り組みのことです。
評価尺度
評価尺度とは、段階評価や行動の記述など、評価者が仕事ぶりを記録・採点するために使う書式や物差しのことです。
評価者研修
評価者研修とは、評価を担当する管理職などに評価の基準や陥りやすい誤りを学んでもらい、評価の正確さや一貫性を高める訓練のことです。
認知プロセス
認知プロセスとは、評価者が部下の行動を観察し、記憶し、思い出して判断を下すまでの、頭の中の情報処理の流れのことです。
被評価者の反応
被評価者の反応とは、評価を受ける側が評価の結果や手続きに対して抱く、納得感・公平感・満足度などの受け止め方のことです。
評価の目的
評価の目的とは、評価結果を昇給・昇進の決定に使うのか、育成やフィードバックに使うのかといった、評価を行う用途のことです。

よくある質問

Q
人事評価の研究は100年でどこまで進歩した?
A
著者らによると、評価尺度の形式、評価者研修、評価の目的、評価者の認知など8つの領域で知見が積み重なってきました。研究が盛んだった時期には、実りの多い方向と前進を妨げた可能性のある方向の両方があったと指摘されています。各領域の具体的な結論は抄録では明記されていません。
Q
評価シートの書式を変えれば評価は正確になる?
A
本論文は評価尺度の形式を8つの研究領域の一つとして扱っていますが、書式の効果についての具体的な結論は抄録では明記されていません。尺度のほかにも評価者研修、評価の目的、評価者の認知など複数の要素が研究されてきたため、書式以外の要素もあわせて見直すのが現実的です。
Q
人事評価と業績管理はどう違うの?
A
一般に、人事評価は一定期間の仕事ぶりを評価・記録する行為を指します。業績管理は、目標設定やフィードバック、育成を含めて業績を高める仕組み全体を指します。著者らは今後の研究課題として、特に業績管理に焦点を当てた研究が必要だと提言しています。

原論文のライセンス: 記載なし。本記事は原論文の内容を人材論文百科の編集部が独自に読み解いてまとめたもので、抄録や本文の翻訳・転載ではありません。図表は掲載していません。正確な内容は冒頭のDOIから原典をご確認ください。

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