上司と性別が同じでも仕事の成果は変わらない

上司と性別が同じでも仕事の成果は変わらない (人材論文百科の論文紹介)

紹介する論文

Gender Similarity in Hierarchical Work Relationships: A Meta‐Analysis

Caitlin M. Porter, Cassondra Batz-Barbarich, Nicole Alonso, Feigu Zhou / Journal of Organizational Behavior (2026年) / DOI: 10.1002/job.70123

邦題(編集部訳): 上下関係のある職場の関係における性別の一致:メタ分析

結論

上司やメンターと部下の性別が同じ組み合わせでは、「似ている」という感覚や関係の質は高まるものの、仕事の態度・業績・離職意向といった成果には結びつきませんでした。しかも効果の出方は部下の性別で異なり、女性の部下は同性ペアで支援を多く感じる一方、関係の質は相手の性別に左右されにくいことが示されています。性別を揃えるだけの施策では成果は動かない、という前提で組み合わせを考える必要があります。

メンターや上司との性別が同じであることは、関係づくりにどこまで効くのか。多数の研究を統合したこの分析では、性別の一致は「似ている」という認識と関係の質を高めるものの、仕事上の成果までは押し上げないと報告されています。さらにその効き方は、部下が女性か男性かによって違っていました。

この論文の要点

  • 性別の一致は知覚された類似性と関係の質を高めた
  • 仕事の態度・業績・離職意向とは結びつかなかった
  • 同性ペアの恩恵は部下の性別によって現れ方が異なる

研究の問い

メンタリングや上司―部下といった上下関係のある職場の関係は、社員の well-being や仕事の成果につながる資源への入口になります。だからこそ研究者は、どうすればその関係がうまくいくのかを探ってきました。なかでも繰り返し注目されてきたのが、二人の性別が同じかどうかという条件です。性別の一致が良い関係と良い成果を生むという理論的な説明は数多く示されてきた一方で、実際のデータが示す結果は一貫していませんでした。この食い違いを整理し、概念面と実証面の両方から見通しを良くすることが、本研究の出発点です。

調べ方

著者らは、これまでに蓄積された研究結果を統計的に統合するメタ分析という手法を用いました。性別の一致と、対人的な成果(知覚された類似性、関係の質、支援)および仕事に関わる成果(仕事への態度、業績、離職意向)との関連をまとめています。さらに、社会的アイデンティティ理論を手がかりに、性別の一致が「いつ」「誰にとって」有益になるのかも検討しました。対象となった研究の件数や国などは、抄録では明記されていません。

わかったこと

統合の結果、性別の一致は知覚された類似性と関係の質を高める方向に働いていました。相手と自分は似ていると感じられ、関係そのものの評価も良くなるということです。

いっぽうで、仕事への態度、業績、離職意向といった仕事に関わる成果とは結びついていませんでした。関係の手触りが良くなることと、成果指標が動くことは別だという整理になります。

さらに、部下側の性別によって現れ方が異なりました。女性の部下は、同性の相手とのペアで、男性よりも高い知覚された類似性と支援を報告しています。関係の質については逆の構図で、男性の部下は同性ペアでより高く評価する一方、女性の部下は相手の性別が同じでも異なっても同程度の関係の質を報告していました。性別の一致は誰にでも一様に効くわけではない、という点が読みどころです。

人事・研修担当への示唆

  • メンター配属で性別を揃えても業績や定着は動かない前提で、期待値を関係づくりの側に置く
  • 女性の若手には同性メンターが支援実感を高めうるため、選択肢として用意し本人に選ばせる
  • 異性ペアでは支援が届いた実感を面談で確認し、足りない分を別の支援者で補う

読むときの注意点

これは既存研究を統合した分析であり、性別の一致が結果を生んだと因果として読むことはできません。効果が見られたのは主に対人的な指標で、仕事の成果に効かなかったという結論も、測定された成果の範囲での話です。対象研究の数や文脈は抄録では明記されておらず、自社にそのまま当てはまるかは別途の確認が要ります。

キーワード解説

メンタリング
メンタリングとは、経験のある側が後進に助言や支援を与え、成長とキャリアを後押しする継続的な関係のことです。
メタ分析
メタ分析とは、同じテーマを扱った複数の研究結果を統計的に統合し、全体としての傾向を推定する手法のことです。
知覚された類似性
知覚された類似性とは、相手と自分は考え方や属性が似ていると本人が感じている度合いのことです。
関係の質
関係の質とは、信頼や相互理解といった面から見た、二者間の関わりの良好さの程度のことです。
離職意向
離職意向とは、いまの職場を辞めようと考えている程度を指し、実際の退職に先立つ心理的な状態のことです。
社会的アイデンティティ理論
社会的アイデンティティ理論とは、人が自分の属する集団を通じて自己を捉え、同じ集団の相手を好意的に見やすいとする考え方のことです。
業績
業績とは、担当する職務でどれだけ成果を上げているかを、評価や指標によって捉えたもののことです。

よくある質問

Q
メンターは部下と同じ性別にすべきですか?
A
同性ペアでは似ているという感覚や関係の質が高まりやすい一方、仕事の成果との結びつきは確認されていません。関係づくりを重視する場面では選択肢に入れつつ、成果改善の手段として期待しすぎないのが妥当です。
Q
性別が同じだと成果が上がるのですか?
A
この分析では、性別の一致と仕事への態度・業績・離職意向との関連は見られませんでした。関係の感じ方は良くなっても、それが成果指標にまでは波及していないという結果です。
Q
女性の部下と男性の部下で違いはありますか?
A
あります。女性の部下は同性ペアでより高い知覚された類似性と支援を報告し、男性の部下は同性ペアで関係の質を高く評価しました。一方、女性の部下の関係の質は相手の性別で大きく変わりませんでした。

原論文のライセンス: 記載なし。本記事は原論文の内容を人材論文百科の編集部が独自に読み解いてまとめたもので、抄録や本文の翻訳・転載ではありません。図表は掲載していません。正確な内容は冒頭のDOIから原典をご確認ください。

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