出来事は新奇・破壊的・重大なときに組織を動かします

出来事は新奇・破壊的・重大なときに組織を動かします (人材論文百科の論文紹介)

紹介する論文

Event System Theory: An Event-Oriented Approach to the Organizational Sciences

Frederick P. Morgeson, Terence R. Mitchell, Dong Liu / Academy of Management Review (2015年) / DOI: 10.5465/amr.2012.0099

邦題(編集部訳): イベント・システム理論——組織科学へのイベント志向のアプローチ

結論

組織で起きる出来事は、新しく、日常の流れを乱し、重大であるほど強く意識され、生まれた階層を超えて上下に波及し、時間をかけて行動や仕組みを変えていきます。人事・研修担当にとっては、人の特性や制度の設計だけでなく「いつ、どこで、何が起きたか」を記録し、施策の設計と評価に組み込む視点が得られます。

組織は絶えず動いており、それぞれの階層でさまざまな出来事が生まれます。本論文は、そうした出来事が新奇性・破壊性・重要性を備えるときに強く意識され、階層を上下に移動しながら組織の行動や特徴を変えていくと論じます。さらに、持続時間やタイミングによって影響が時間的にも広がることを示し、検証可能な命題として整理しました。

この論文の要点

  • 出来事は新奇性・破壊性・重要性が高いほど組織で意味を持ちます
  • 影響は生まれた階層レベルにとどまらず上下へ波及します
  • 持続時間やタイミングによって効果は時間とともに変化します

研究の問い

組織は動き続ける存在であり、日々さまざまな出来事が起こります。しかし従来の組織研究は、人や職務の比較的安定した特性に注目することが多く、個々の出来事がどのように意味を持ち、組織にどう影響していくのかは十分に論じられてきませんでした。とくに、ある出来事がどの階層レベルで生まれ、どこまで広がり、時間の経過とともにどう変わるのかを説明する共通の枠組みが不足していました。著者らはこの空白を埋めるため、出来事を出発点として組織現象を捉え直す枠組みづくりに取り組みました。

調べ方

本論文はデータを集めて仮説を検証した実証研究ではなく、概念を整理して新しい枠組みを提示する理論研究です。著者らは出来事の目立ちやすさを表すイベント強度を、新奇性・破壊性・重要性という三つの要素で定義します。その上で、出来事が生まれる階層レベル、組織内をどう移動するかという空間的な広がり、持続時間やタイミングといった時間的な側面を組み合わせ、両者の関係を検証可能な命題として提示する形で議論を進めています。分析対象となる企業や調査データについては、抄録では明記されていません。

わかったこと

著者らは、出来事が組織の中で強く意識されるのは、それが新奇性(これまでになかった)、破壊性(いつもの流れを妨げる)、重要性(組織にとって重大である)を備えるときだと述べます。この三つをまとめて表したものがイベント強度です。

出来事はどの階層レベルからも生まれ得ます。経営層の決定であっても、現場の一人の行動であっても起点になります。そしてその影響は、生まれた階層レベルの中にとどまることもあれば、上や下へ移動して別のレベルの行動や特徴を変えたり、新しい出来事そのものを生み出したりします。

さらに影響は時間軸にも広がります。出来事は持続時間やタイミングが一様ではなく、イベント強度自体も時間の経過とともに変わっていきます。著者らは、こうした空間的・時間的な過程とイベント強度の相互の関わりを、複数の命題として体系的に整理しました。

人事・研修担当への示唆

  • 研修や制度の効果を測る前に、直前に起きた出来事の新奇性・破壊性・重要性を記録しておきましょう
  • 現場の小さな出来事も上位の階層レベルへ波及し得るため、拾い上げる報告経路を整えます
  • 施策の評価は一時点で終えず、出来事の持続時間を見込んで期間を置いて再測定します

読むときの注意点

本論文は実証データによる検証ではなく、概念と命題の提示にとどまります。示された関係が実際にどの程度成り立つかは今後の検証を待つ必要があります。また、イベント強度の具体的な測定方法や適用の範囲について、抄録では明記されていません。自社に当てはめる際は、確定した法則ではなく検討用の仮説として扱うのが安全です。

キーワード解説

イベント強度
イベント強度とは、ある出来事がどれだけ人や組織に強く意識されるかを、新しさ・妨げの大きさ・重大さの組み合わせで捉えた考え方のことです。
新奇性
新奇性とは、その出来事がこれまで経験したことのない、前例のないものである度合いを指す性質のことです。
破壊性
破壊性とは、その出来事が普段の仕事の流れや手順をどれだけ中断させ、対応を迫るかという性質のことです。
重要性
重要性とは、その出来事が組織や個人の目標にとってどれだけ重大な意味を持つかという性質のことです。
階層レベル
階層レベルとは、個人・チーム・部門・組織全体といった、組織を構成する入れ子状の段階のことです。
持続時間
持続時間とは、ある出来事が始まってから終わるまでの長さ、およびその影響が続く期間のことです。
命題
命題とは、理論から導かれる変数どうしの関係を、検証できる形で言い表した文のことです。
理論研究
理論研究とは、新たにデータを集めるのではなく、概念や既存知見を整理して説明の枠組みを組み立てる研究のことです。

よくある質問

Q
イベント・システム理論とは何ですか?
A
組織で起きる出来事を出発点に組織現象を説明する枠組みです。出来事の強さ(新しさ・妨げの大きさ・重大さ)と、それがどの階層で生まれ、どこへ広がり、どのくらい続くかを結びつけて捉えます。
Q
どんな出来事が組織に影響しますか?
A
これまでになく、日常の流れを妨げ、組織にとって重大だと受け止められる出来事です。この三つが揃うほど人の注意を引き、行動や仕組みの変化につながると論じられています。
Q
現場の出来事も経営に影響しますか?
A
はい。本論文は、出来事はどの階層からでも生まれ、その影響は生まれた階層にとどまることも、上や下へ移動することもあると述べています。現場発の出来事が上位へ波及する道筋も想定されています。

原論文のライセンス: 記載なし。本記事は原論文の内容を人材論文百科の編集部が独自に読み解いてまとめたもので、抄録や本文の翻訳・転載ではありません。図表は掲載していません。正確な内容は冒頭のDOIから原典をご確認ください。

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