成果は「要因の組み合わせ」で説明する:理論づくりの3段階

成果は「要因の組み合わせ」で説明する:理論づくりの3段階 (人材論文百科の論文紹介)

紹介する論文

Capturing Causal Complexity: Heuristics for Configurational Theorizing

Santi Furnari, Donal Crilly, Vilmos F. Misangyi, Thomas Greckhamer, Peer C. Fiss, Ruth V. Aguilera / Academy of Management Review (2020年) / DOI: 10.5465/amr.2019.0298

邦題(編集部訳): 因果的複雑性を捉える:構成的理論化のためのヒューリスティック

結論

この論文は、複数の要因が組み合わさって成果が生まれる現象を説明するための理論づくりを「範囲を定める・つなぐ・名づける」の3段階に整理し、各段階で使える考え方の手がかりを示しました。人事・研修担当にとっては、施策の効果を一つずつ測るだけでなく、どの施策や条件がそろうと成果が出るのかを考えるための視点になります。

経営や組織で起きることが、ひとつの要因だけで決まることはめったにありません。この論文は、要因ごとの影響を切り分けて考える従来のやり方では、要因が絡み合う複雑な因果を捉えにくいと指摘します。そのうえで、要因の「組み合わせ」から理論を組み立てる3段階の進め方と、各段階で考えを深めるための手がかりを提案した理論研究です。

この論文の要点

  • 要因ごとの影響を切り分ける考え方では、要因が絡み合う現象を説明しにくい
  • 組み合わせで考える理論づくりを、範囲設定・連結・命名の3段階に整理した
  • 各段階で考えを促すヒューリスティック(発想の手がかり)を複数示した

研究の問い

経営や組織の研究が扱う現象の多くは、複数の要因が影響し合い、まとまって成果につながるものです。原因が単独ではなく絡み合って働くこの状態を、因果的複雑性と呼びます。ところが経営学で主流の相関的理論化は、個々の要因がそれぞれどれだけ成果に効いているかを重視する「純効果思考」に立っています。この考え方では、要因同士の相互依存を理論として描きにくいという課題がありました。そこで著者らは、要因の組み合わせに注目する考え方を、理論づくりにどう生かせるかを問いました。

調べ方

この論文は、データを集めて分析する実証研究ではなく、理論をつくる方法そのものを提案する理論研究です。著者らは、要因の組み合わせから現象を説明する構成的理論化の進め方をモデルとして示しました。進め方は「スコーピング(範囲設定)」「リンキング(連結)」「ネーミング(命名)」の3段階で、行き来しながら繰り返すものとされています。そのうえで、段階ごとに研究者が考えを進めるためのヒューリスティックをつくりました。具体的な事例や対象などは抄録では明記されていません。

わかったこと

著者らによると、構成的理論化は因果的複雑性をもつ現象の説明に向いています。個々の要因が単独でどれだけ効いているかではなく、どの要因がどう組み合わさると成果につながるのかを問うからです。

提案された進め方は3段階です。まずスコーピングでは、成果に関わりそうな要因の組み合わせを見つけます。次のリンキングでは、それらの要因同士がどうつながり、影響し合っているかを掘り下げます。最後のネーミングでは、組み合わせ全体にまとまりを与えている統合テーマ(要因をひとつにまとめる中心的な考え)を言葉にします。3つの段階は一方通行ではなく、行ったり来たりしながら繰り返すものとされています。

段階ごとに複数のヒューリスティック(考えるための経験則)が用意されていますが、個々の具体的な中身は抄録では明記されていません。著者らは、この考え方が経営・組織分野の理論の発展に役立ち、ほかの分野にも広がりうると論じています。

人事・研修担当への示唆

  • 研修や制度の効果を一つずつ評価するだけでなく、どの施策と職場条件がそろうと成果が出るかを整理する
  • 業績の高いチームを分析するときは、共通する要因の組み合わせを洗い出し、要因同士のつながりを話し合う
  • 成果を生む組み合わせに統合テーマとなる名前を付け、施策を設計するときの方針として社内で共有する

読むときの注意点

この論文は理論のつくり方を示したもので、特定の人事施策の効果をデータで確かめたものではありません。また主な読み手は研究者なので、実務で使うには読み手側で置き換えて考える必要があります。各ヒューリスティックの詳しい中身や使い方の例は抄録では明記されていないため、実際に使う際は本文を確認することをおすすめします。

キーワード解説

因果的複雑性
因果的複雑性とは、ひとつの原因が単独で結果を生むのではなく、複数の要因が絡み合い、組み合わさって結果をもたらす状態のことです。
相関的理論化
相関的理論化とは、要因と成果の関係の強さに注目し、個々の要因が成果にどれだけ関係するかを軸に理論を組み立てる進め方のことです。
純効果思考
純効果思考とは、ほかの条件を一定にしたとき、ある要因が単独で成果にどれだけ影響するかを切り分けて捉えようとする考え方のことです。
構成的理論化
構成的理論化とは、複数の要因がどのように組み合わさると特定の成果が生まれるのかを、組み合わせ全体を単位として説明する理論づくりのことです。
ヒューリスティック
ヒューリスティックとは、答えを確実に導く手順ではなく、考えを進めたり発見を促したりするための経験則や手がかりのことです。
統合テーマ
統合テーマとは、複数の要因がなぜひとつのまとまりとして働くのかを説明する、組み合わせ全体に通じる中心的な考えのことです。
相互依存
相互依存とは、ある要因の働き方がほかの要因の有無や状態によって変わるなど、要因同士が互いに影響し合っている関係のことです。

よくある質問

Q
構成的理論化とはどんな考え方ですか?
A
要因を一つずつ切り分けて影響を測るのではなく、どの要因がどう組み合わさると成果が生まれるのかを、組み合わせ全体で説明しようとする理論づくりの考え方です。この論文は、要因が絡み合う現象の説明に向いていると論じています。
Q
要因ごとに効果を測るやり方の何が問題ですか?
A
個々の要因の効果を切り分ける考え方は、要因同士が影響し合い、組み合わさって成果を生む状況を理論として描きにくいという課題があります。問題は測り方そのものより、複雑な因果をどう捉えるかという考え方にあると著者らは指摘しています。
Q
理論づくりの3段階では何をするのですか?
A
スコーピングで成果に関わる要因の組み合わせを見つけ、リンキングで要因同士のつながりを掘り下げ、ネーミングで組み合わせをまとめる中心的なテーマを言葉にします。3つの段階は行き来しながら繰り返すものとされています。

原論文のライセンス: 記載なし。本記事は原論文の内容を人材論文百科の編集部が独自に読み解いてまとめたもので、抄録や本文の翻訳・転載ではありません。図表は掲載していません。正確な内容は冒頭のDOIから原典をご確認ください。

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