職場の男女比が均衡に近いほど働く人の偏見は低い

職場の男女比が均衡に近いほど働く人の偏見は低い (人材論文百科の論文紹介)

紹介する論文

Can workplace gender composition affect social prejudice? Evidence of lower prejudice among workers in gender-balanced workplaces

Yeongjoon Yoon, Wonbin Sohn / Personnel Review (2026年) / DOI: 10.1108/pr-07-2025-0747

邦題(編集部訳): 職場のジェンダー構成は社会的偏見に影響しうるか——男女が均衡した職場の労働者における偏見の低さを示す証拠

結論

職場のジェンダー構成が均衡に近いほど、そこで働く人の偏見は低い傾向がありました。女性比率が高いことに加えて、男女がほぼ同数に近づくときに関係が最も強く、その傾向は主に男性従業員で確認されています。職場の男女比は社内の公平性や業績だけの話ではなく、社員が社会の多様な人々をどう見るかにも関わりうる、という視点を人事にもたらす結果です。

職場に女性が多いほど、また男女の比率が均衡に近いほど、そこで働く人の偏見は弱い傾向にありました。偏見の対象は女性に限らず、ゲイ・レズビアンの人々、異なる人種・民族、貧困層にも及びます。関係が最も強く出たのは女性が多数を占める職場ではなく、男女がおおよそ半々に近づいた職場で、しかもこの傾向は主に男性従業員で見られました。

この論文の要点

  • 女性比率が高い職場ほど、働く人の偏見が低い傾向がありました
  • 最も強い関係は女性多数の職場ではなく、男女が半々に近い職場です
  • この傾向が主に確認されたのは男性従業員でした

研究の問い

職場のジェンダー構成をめぐる研究は、これまで主に職場の中の話として扱われてきました。女性が増えると意思決定や業績はどう変わるか、昇進や処遇の公平性は改善するか、といった問いです。しかし職場は、人が一日の多くを過ごし、自分とは異なる立場の人と継続的に接する場でもあります。だとすれば、誰と一緒に働くかという構成は、職場の外に向けられる見方、つまり社会のさまざまな集団に対する偏見とも関係しているのではないか。この研究は、女性比率と性別均衡という二つの見方で職場のジェンダー構成をとらえ、それが個人の偏見の強さとどう結びつくのかを検討しました。

調べ方

分析に使われたのは、ヨーロッパ27か国で働く12,742人の労働者のデータです。労働者を国の中に入れ子にした二層の線形混合効果モデルを用い、国ごとの違いを考慮したうえで個人レベルの関係を推定しています。職場のジェンダー構成は、女性比率と性別均衡という二つの指標で測られました。偏見については、女性、ゲイ・レズビアンの人々、異なる人種・民族の人々、貧困層という複数の対象が扱われています。調査時期や各指標の具体的な測定方法は、抄録では明記されていません。

わかったこと

第一に、女性比率が高い職場、あるいは男女の均衡度が高い職場で働く人ほど、偏見が低いという関係が示されました。対象は女性への偏見だけではなく、ゲイ・レズビアンの人々、異なる人種・民族、貧困層への偏見も含まれています。職場のジェンダー構成が、職場内の公平性にとどまらない広がりを持つ可能性を示す結果です。

第二に、その関係は「女性が多ければ多いほど良い」という単純な直線ではありませんでした。女性の割合が増えるにつれて偏見は下がるものの、関係が最も強く表れたのは、女性が大多数を占める職場ではなく、男女の人数がほぼ釣り合う状態に近づいた職場でした。

第三に、この偏見の低さとの結びつきが主に確認されたのは男性従業員です。誰と働くかという構成の効果は、性別によって表れ方が異なる可能性があります。なお、いずれも観察されたデータにおける関連であり、構成が偏見を変えたと断定するものではありません。

人事・研修担当への示唆

  • 部署単位の男女比を可視化し、片方の性に極端に偏ったチームから配置を見直しましょう
  • 採用目標は「女性を増やす」だけでなく、男女が釣り合う状態への接近として設計します
  • ダイバーシティ研修は座学だけに頼らず、日常業務で協働する相手の構成づくりと組み合わせます

読むときの注意点

示されているのは職場のジェンダー構成と偏見の関連であり、構成を変えれば偏見が下がるという因果関係が証明されたわけではありません。もともと偏見の低い人が均衡した職場を選んでいる可能性も残ります。対象はヨーロッパの労働者で、日本の職場にそのまま当てはまるかは別途の検討が必要です。

キーワード解説

ジェンダー構成
ジェンダー構成とは、職場で働く人々の性別の割合や偏りの状態を指す言葉のことです。女性比率や男女の均衡度などの指標で測られます。
女性比率
女性比率とは、職場で働く人のうち女性が占める割合のことです。値が高いほど女性の多い職場であることを示し、構成を測る基本的な指標として使われます。
性別均衡
性別均衡とは、職場の男女の人数がどれだけ同数に近いかを表す考え方のことです。どちらか一方に偏るほど低く、半々に近いほど高いとみなされます。
偏見
偏見とは、特定の集団に属する人に対して、十分な根拠のないまま否定的な見方をあらかじめ持つことです。接触の少なさが背景にあるとされます。
混合効果モデル
混合効果モデルとは、個人と国や組織のように階層のあるデータを、階層ごとの違いを考慮しながら分析する統計手法のことです。
男性従業員
男性従業員とは、職場で働く従業員のうち男性である人々を指す呼び方のことです。分析では性別による傾向の違いを比べる区分として用いられます。

よくある質問

Q
女性を増やせば偏見は減るのですか?
A
この研究が示したのは関連であり、増やせば必ず減るという因果関係ではありません。また、女性が大多数になるほど良いわけでもなく、男女がほぼ釣り合う状態に近づいたときに関連が最も強く表れていました。
Q
どんな偏見が対象になっていますか?
A
女性に対する偏見だけでなく、ゲイ・レズビアンの人々、異なる人種・民族の人々、貧困層に対する偏見も含まれています。職場のジェンダー構成が、性別以外の対象への見方とも関連していた点が特徴です。
Q
男性と女性で結果は違いましたか?
A
職場のジェンダー構成と偏見の低さとの結びつきが主に確認されたのは男性従業員でした。誰と働くかという構成の影響は、性別によって表れ方が異なる可能性があると読み取れます。

原論文のライセンス: 記載なし。本記事は原論文の内容を人材論文百科の編集部が独自に読み解いてまとめたもので、抄録や本文の翻訳・転載ではありません。図表は掲載していません。正確な内容は冒頭のDOIから原典をご確認ください。

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