ゴシップが広がるチームほど「やってはいけない」規範が弱まる

ゴシップが広がるチームほど「やってはいけない」規範が弱まる (人材論文百科の論文紹介)

紹介する論文

Reinforcing or eroding norms? The team consequences of negative gossip network.

Rui Zhong, Yimin He, Yinbo Zheng, Christopher M. Barnes, Kyle Wu, Shaoxue Wu / Journal of Applied Psychology (2026年) / DOI: 10.1037/apl0001406

邦題(編集部訳): 規範を強めるのか、壊すのか——ネガティブなゴシップ・ネットワークがチームにもたらす帰結

結論

チーム内でネガティブなゴシップが広く行き交うほど、有害な行動を戒める禁止規範は弱まり、チームの反生産的行動が増えるという関連が示されました。個人レベルで言われてきた「ゴシップが規律を保つ」という前提は、チーム単位ではそのまま当てはまらないようです。噂話の多さを、職場の健全性を測るサインとして捉え直す必要があります。

「陰口が多い職場は、かえって行儀がよくなる」という見方があります。悪く言われたくないという気持ちが、不適切な行動を抑えるという理屈です。しかしZhongらの研究は、チーム全体で見るとむしろ逆の現象が起きることを示しました。ネガティブなゴシップがメンバー間に張りめぐらされたチームほど、やってはいけないことを戒める規範が弱まり、反生産的な行動が増えていたのです。

この論文の要点

  • 陰口が広く行き交うチームほど、禁止規範が弱まる関連が示されました
  • 規範の弱まりを介して、チームの反生産的行動が増えていました
  • 陰口が互いに返し合う形や、全員に散らばる形だと影響がより強く出ます

研究の問い

これまでの研究の多くは、ネガティブなゴシップには不適切な行動を抑える働きがあると考えてきました。悪い評判が立つことを恐れて、人は身を慎むという理屈です。ただしこうした知見は、個人が何を感じ、どう振る舞うかという個人レベルに偏っていました。チーム全体を単位にしたとき、同じことが言えるのかははっきりしていません。著者らは、ソーシャルネットワークの視点と行動規制の理論を組み合わせ、チーム内のネガティブなゴシップがチーム規範、とくに「やってはいけないこと」を定める禁止規範を強めるのか、それとも逆に弱めてしまうのかという、相反する二つの仮説を立てて検証しました。

調べ方

調査は複数の時点にわたり、複数の情報源からデータを集める形で行われました。対象は104の職場チーム、1,344人のメンバー、そして104人の上司です。メンバーは同じチームの一人ひとりについて相互に回答するラウンドロビン方式で答え、誰から誰へのゴシップが交わされているかというつながりの地図が作られました。そこからチームごとに、ゴシップがどれだけ広く行き交っているかを示すネットワーク密度と、それがどう分布しているかを示す互酬性・中心化が算出されています。

わかったこと

結果は、個人レベルの研究が示してきた「規範が強まる」という見立てとは反対でした。ネガティブなゴシップのネットワーク密度が高いチームほど、有害な行動を戒める禁止規範が弱まっているという関連が確認されました。

さらに、この規範の弱まりを介して、チームの反生産的行動が増えるという道筋も示されています。つまり、噂話が飛び交うこと自体が直接の悪さをするというより、「やってはいけないことの共通了解」が薄れることを通じて、実際の問題行動につながっていたわけです。

この傾向は、ゴシップの広がり方によって強まったり弱まったりしました。陰口を互いに言い合う関係が多いチーム、つまり互酬性が高いチームでは影響がより強く出ます。反対に、特定の人に情報が集まる度合い、すなわち中心化が低く、誰もが同じように噂を交わしている状態のチームでも影響は強くなっていました。

人事・研修担当への示唆

  • 噂話の多さを「よくあること」と流さず、チーム単位の風土指標として定期的に確認しましょう
  • 陰口が互いに返し合う状態になっていないか、1on1で双方から状況を聞き取りましょう
  • 何をしてはいけないかという禁止規範を、管理職の言葉と行動で繰り返し明示しましょう

読むときの注意点

示されたのは変数どうしの関連であり、ゴシップが規範の弱まりを引き起こしたと断定できるものではありません。対象は特定の職場チームであり、業種や文化が異なる職場にそのまま当てはまるとは限りません。また、ゴシップの内容や話し手の動機による違いについては、抄録では明記されていません。

キーワード解説

ネガティブなゴシップ
ネガティブなゴシップとは、その場にいない人について、否定的な評価を含む話を第三者と交わすことです。
禁止規範
禁止規範とは、集団の中で「これはやってはいけない」と共有されている決まりごとや暗黙の了解のことです。
チーム規範
チーム規範とは、そのチームで何が望ましく何が望ましくないかについて、メンバーの間で共有された行動の基準のことです。
ネットワーク密度
ネットワーク密度とは、集団の中で起こりうるつながりのうち、実際にどれだけのつながりが結ばれているかを示す指標のことです。
互酬性
互酬性とは、一方から他方へのやり取りに対して、相手からも同じ向きのやり取りが返ってくる関係の度合いのことです。
中心化
中心化とは、集団内のつながりが特定の少数の人に集中している度合いを示す、ネットワーク分析の指標のことです。
反生産的行動
反生産的行動とは、組織やそのメンバーに損害を与えるような、意図的な望ましくない行いのことです。

よくある質問

Q
陰口は職場の規律を保つ役に立ちますか?
A
個人レベルではそう考えられてきましたが、この研究ではチーム全体を単位にすると逆の結果が示されました。ネガティブなゴシップが広く行き交うチームほど、してはいけないことを戒める規範が弱まっていました。
Q
どんな広がり方の陰口が特に危険ですか?
A
陰口を互いに言い合う関係が多いチームと、特定の人に集中せず誰もが同じように噂を交わしているチームで、規範が弱まる傾向がより強く出ていました。広く薄く行き渡っている状態こそ注意が必要です。
Q
陰口が増えると具体的に何が起きますか?
A
この研究では、規範が弱まることを介してチームの反生産的行動が増えるという関連が示されました。噂話そのものより、共通の歯止めが薄れることが問題につながる道筋として描かれています。

原論文のライセンス: 記載なし。本記事は原論文の内容を人材論文百科の編集部が独自に読み解いてまとめたもので、抄録や本文の翻訳・転載ではありません。図表は掲載していません。正確な内容は冒頭のDOIから原典をご確認ください。

タイトルとURLをコピーしました