
紹介する論文
Fit to Print? How Political Bias Affects Media Coverage of Corporate Sociopolitical Activism
邦題(編集部訳): 載せるに値するか——政治的バイアスは企業の社会政治的アクティビズムの報道をどう左右するのか
結論
報道機関の政治的な立場と企業がとった行動の向きが重なるほど、その行動は記事として取り上げられやすくなる一方、記事の論調そのものは重なりの度合いに左右されていませんでした。偏りは「どう書くか」ではなく「何を書くか」の段階に集まっているのです。自社の社会的な発信の効果を測るときは、記事の好意度だけでなく、どの媒体が沈黙したかまで見る必要があります。
企業が社会的・政治的な問題に立場を示すと、その報じられ方は媒体の政治的な立場に左右されるのでしょうか。本研究は、報道を「取り上げるか」と「どう描くか」の二段階に分けて検討し、両者で偏りの出方が違うことを示しました。立場が近いほど記事にはなりますが、いざ書かれた記事の評価的な調子までは、立場の近さでは決まっていませんでした。
この論文の要点
- 報道の偏りは、記事の論調ではなく取り上げるかどうかに現れました
- 媒体の政治的立場と企業行動が重なるほど、記事になりやすくなります
- 左寄り媒体と右寄り媒体とで、偏りの現れ方は同じではありません
研究の問い
企業が社会や政治の争点に立場を示す社会政治的アクティビズムが増え、同時に社会の政治的分極化も進んでいます。これまでの組織研究は、企業に関する報道を「おおむね中立な記録」とみなし、報道機関自身の政治的な立場が記事の中身を左右する可能性をあまり正面から扱ってきませんでした。しかし報道機関には、読者の支持を得るために思想的な独自色を出したいという誘因と、広告主に選ばれ続けるために信頼性を保ちたいという誘因という、相反する二つの圧力がかかります。この二つが同時に働くとき、企業の行動は実際にどう報じられるのか。著者らはこの問いを立てました。
調べ方
著者らは報道を一括りにせず、「どの企業行動を取り上げるか」という注目と、「それをどう描くか」という論調の二段階に分けて捉える枠組みを組み立てました。そのうえで、報道機関の政治的な立場と企業がとった行動の方向性がどれだけ重なるか、つまりイデオロギー的一致の度合いが、記事になりやすさと書かれ方それぞれにどう効くのかを検討しています。左寄りの媒体と右寄りの媒体を比べる補足的な分析も行われました。対象となった媒体や企業、調査期間については抄録では明記されていません。
わかったこと
報道機関の政治的な立場と、企業がとった社会政治的アクティビズムの方向性が重なっているほど、その行動はニュースとして取り上げられやすくなりました。ところが、いざ記事になったときの論調が好意的か批判的かは、イデオロギー的一致の度合いでは説明されませんでした。
著者らはこのパターンをバイアスの配分と呼んでいます。政治的な偏りが消えるわけではなく、評価の言葉づかいではなく「何を報じ、何を報じないか」という選択の段階に集まっている、という見立てです。背景には、読者に向けて思想的な色を出したい誘因と、広告主に対して信頼性を保ちたい誘因という、相反する圧力があると説明されています。さらに補足的な分析では、左寄りの媒体と右寄りの媒体とで偏りの現れ方が同じではないという、非対称性も報告されています。
人事・研修担当への示唆
- 自社の社会政治的アクティビズムは、論調より「どの媒体が取り上げるか」で伝わり方が変わります。媒体別の露出を記録しましょう
- 広報や非市場戦略の効果測定では、記事の好意度だけでなく「報じなかった媒体」も指標に加えてください
- 評判リスクの点検では、支持層には届き別の層には届かない偏りを前提に、社内向けの説明資料を用意しましょう
読むときの注意点
報道と企業行動の関係を分析した研究であり、記事になったことが企業の評判や業績を変えたという因果を示すものではありません。分析対象となった媒体や企業、期間は抄録では明記されておらず、日本の報道環境にそのまま当てはまるかは分かりません。左右の媒体の違いは補足的な分析である点にも注意が必要です。
キーワード解説
- 社会政治的アクティビズム
- 社会政治的アクティビズムとは、企業が社会的・政治的な争点について公に立場を表明したり、実際に行動を起こしたりすることです。
- 政治的分極化
- 政治的分極化とは、社会の意見が対立する立場へ分かれていき、中間的な合意が成り立ちにくくなっていく状態のことです。
- イデオロギー的一致
- イデオロギー的一致とは、報道機関の political な立場と、企業がとった行動が示す方向性とが、思想的にどれだけ重なっているかの度合いのことです。
- 論調
- 論調とは、ある出来事を報じる記事が、好意的か批判的かといった評価の色合いをどのように帯びているかを指す言葉です。
- バイアスの配分
- バイアスの配分とは、偏りが記事の書き方にではなく、何を報じ何を報じないかという選択の段階に集まる現象を指す言い方です。
- 非市場戦略
- 非市場戦略とは、政治や世論、規制といった市場の外側にある環境に働きかけて、自社の事業条件を整えようとする取り組みのことです。
- 評判リスク
- 評判リスクとは、自社の言動が外部からどう受け止められるかによって、社会からの信頼や支持を損なう可能性のことです。
よくある質問
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Qメディアの政治的な偏りは記事の書き方に出ますか?
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Aこの研究では、媒体の政治的立場と企業行動の重なりは、記事の評価的な調子とは結びついていませんでした。偏りはむしろ、その行動をそもそも取り上げるかどうかの段階に現れる、と報告されています。
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Q企業が社会問題に発言すれば必ず報道されますか?
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Aそうとは限りません。報道機関の立場と企業の行動の向きが重なっているほど記事になりやすい、という関係が示されました。立場が離れた媒体では、同じ発言でも取り上げられないことがあり得ます。
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Q左寄りと右寄りの媒体で報じ方は違いますか?
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A補足的な分析で、左寄りの媒体と右寄りの媒体とで偏りの現れ方が同じではないことが示されています。ただしどちらがどう違うかの詳細は、抄録の範囲では明記されていません。
原論文のライセンス: 記載なし。本記事は原論文の内容を人材論文百科の編集部が独自に読み解いてまとめたもので、抄録や本文の翻訳・転載ではありません。図表は掲載していません。正確な内容は冒頭のDOIから原典をご確認ください。


