
紹介する論文
Rewarded to Reject? Exploring Motivational Roots of Idea Rejection in Teams
邦題(編集部訳): 却下することが報われる? チームにおけるアイデア却下の動機的な根源を探る
結論
個人に報いる報酬でもチーム全体に報いる報酬でも、ブレインストーミング中のアイデア却下はむしろ増え、両方を組み合わせた混合報酬のときに最も却下が少なくなりました。却下の仕方が協調的か競争的かは、創造性の高さとは結びついていませんでした。報酬の設計は、どちらか一方に寄せるよりも両立させるほうが、生まれかけたアイデアを守れる可能性があります。
チームの創造性を引き出したいなら、報酬の置き方が鍵になるかもしれません。実験室での研究によれば、個人の成果に報いる報酬はもちろん、チームの成果に報いる報酬でも、話し合いの中でアイデアが却下される回数は増えていました。最も却下が少なかったのは、個人とチームの両方に報いる混合報酬の条件です。自己志向と向社会性のどちらか一方を強調するより、両立させる設計が有効だと示唆されます。
この論文の要点
- 個人報酬の条件では、予想どおりアイデア却下が増えました
- チーム報酬でも却下は増加し、仮説とは反対の結果になりました
- 混合報酬は、個人報酬・チーム報酬のどちらよりも却下を抑えました
研究の問い
チームは多様な視点を持ち寄ることで創造的な成果を生み出せると期待されますが、その多様さがかえって、型破りなアイデアを早い段階で切り捨てる原因にもなります。アイデア却下が続けば、チームは持っているはずの創造的な力を発揮しきれません。本研究は、集団における動機づけられた情報処理モデル(MIP-G)を手がかりに、チームに与えられる報酬構造こそが却下を左右する先行要因ではないかと考えました。個人単位の報酬は自己志向的動機を、チーム単位の報酬は向社会的動機を呼び起こし、両方を組み合わせた混合報酬は二つの動機の釣り合いを取る、という見立てです。話し合いの最中に何がアイデアを退けさせるのかを、正面から問い直しています。
調べ方
実験室で行われた実験研究です。参加したのは80チーム・290名で、チームごとに個人報酬・チーム報酬・混合報酬のいずれかの条件が設定されました。ブレインストーミングの様子を録画し、行動をコード化する手法で、アイデア却下がどれくらい起きたか、どんなアイデアが退けられたかを測定しています。自己申告のアンケートではなく、実際のやりとりを観察して数えている点が特徴です。加えて当初の仮説にはなかった探索的な事後分析も行い、情報精緻化の程度や、却下されたアイデアの新規性との関係を調べています。
わかったこと
個人報酬の条件では、予想どおりアイデア却下が増えました。意外だったのはチーム報酬です。向社会的動機を引き出して却下を減らすと予想されていたのに、実際にはこちらでも却下が多くなりました。最も却下が少なかったのは混合報酬の条件で、個人報酬・チーム報酬のどちらと比べても却下が抑えられていました。
探索的な事後分析からは、アイデア却下の多さがチームの情報精緻化の水準によって変わることが示されました。また報酬の違いは、どの程度新しいアイデアが退けられるかとも関係しており、新規性の高いアイデアはアイデア出しの後半の段階で却下されやすい傾向がみられました。
一方、却下の仕方が協調的か競争的かという違いについては、チーム創造性を体系的に左右するという証拠は得られませんでした。
人事・研修担当への示唆
- アイデア出しの評価と報奨は個人成果だけ・チーム成果だけに寄せず、両方を組み合わせた混合報酬の設計を検討しましょう
- ブレインストーミングでは後半ほど新しい案が退けられやすいため、終盤に出た案を持ち帰って再検討する時間を設けましょう
- 却下の回数だけを見ず、互いの情報を交換して掘り下げる情報精緻化がチーム内で起きているかを観察しましょう
読むときの注意点
実験室で行われた研究のため、実際の職場の長期的な仕事にそのまま当てはまるとは限りません。情報精緻化や却下されたアイデアの新規性に関する結果は、事前に仮説を立てて検証したものではなく事後の探索的な分析であり、今後の追試が必要です。また、なぜチーム報酬でも却下が増えたのかという理由については、抄録では明記されていません。
キーワード解説
- 報酬構造
- 報酬構造とは、成果への報酬を個人単位で配るのか、チーム単位で配るのか、あるいは両方を組み合わせるのかという、報い方の設計のことです。
- アイデア却下
- アイデア却下とは、話し合いの場で出された案が、採用されずに退けられたり打ち消されたりして、検討の対象から外れることです。
- 混合報酬
- 混合報酬とは、個人の成果に応じた報酬とチームの成果に応じた報酬を組み合わせて与える仕組みのことです。
- 情報精緻化
- 情報精緻化とは、メンバーが持ち寄った情報や意見を、互いに交換して掘り下げ、統合していくチーム内のやりとりのことです。
- 向社会的動機
- 向社会的動機とは、自分の取り分よりも他者やチーム全体の利益を高めようとする、気持ちの向きのことです。
- 自己志向的動機
- 自己志向的動機とは、自分自身の成果や取り分を最大にしようとする、気持ちの向きのことです。
- チーム創造性
- チーム創造性とは、チームが生み出したアイデアや成果物の新しさと役立ち具合の程度を指す考え方のことです。
よくある質問
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Qチーム単位の報酬にすれば協力的になりますか?
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Aこの研究では、そうならない場面が見つかりました。チーム報酬は仲間思いの動機を引き出して却下を減らすと予想されていましたが、実際にはアイデア却下が増えていました。チーム単位にするだけで、出た案が大切に扱われるとは限らないようです。
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Qアイデアが却下されるのを減らすには?
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Aこの研究の範囲では、個人の成果とチームの成果の両方に報いる混合報酬の条件で、却下が最も少なくなりました。自分の取り分を重視する気持ちと、チームを重視する気持ちのどちらか一方だけを強調しない設計が手がかりになります。
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Q却下の仕方を丁寧にすれば成果は上がりますか?
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Aこの研究では、却下が協調的だったか競争的だったかという違いが、チーム創造性を体系的に左右するという証拠は見つかりませんでした。言い方を整えることより、どんなアイデアがいつ退けられているかに目を向けるほうが有効かもしれません。
原論文のライセンス: cc-by。本記事は原論文の内容を人材論文百科の編集部が独自に読み解いてまとめたもので、抄録や本文の翻訳・転載ではありません。図表は掲載していません。正確な内容は冒頭のDOIから原典をご確認ください。


