人材論文百科 編集部

従来型の運用者もESGを使い、主な用途は危険信号とリスク管理

ESGへの配慮は一部の専門ファンドだけのものと思われがちですが、国際的なファンドマネジャー調査は違う姿を映しました。従来型の運用者の多くがすでに責任投資の要素を組み込み、ESG情報を主に危険信号の検出とリスク管理に使っています。著者らは、その進め方が従来のファンダメンタル投資とよく似ていると論じています。

一般知的能力の業績予測力は従来説より小さい

一般知的能力は長らく「職務業績を最もよく予測する単一の指標」と語られてきました。本研究は、1990年以降の研究を扱った三つのメタ分析のデータをすべて集め直し、重複を整理したうえで再分析しています。その結果、操作的妥当性は.18〜.22の範囲にとどまり、著者らは.20を現代の要約値として示しました。さらに、知的に複雑な仕事ほど予測力が高いという通説も、そのままでは支持されませんでした。

女性取締役の選任が続くと、海外進出はM&Aより自前設立に傾く

取締役会に新しく女性取締役が加わると、企業の海外進出の仕方そのものが変わるかもしれません。台湾の製造業企業を対象とした本研究では、女性取締役の選任が進んだ後、海外進出でM&Aよりもグリーンフィールドが選ばれやすくなる傾向が示されました。しかもその傾向は、取締役会議長が女性か、既存メンバーに国際経験があるかによって強弱が変わります。

HR分析は成果につながるのに、なぜ広がらないのか

人事のデータ活用をめぐる研究を体系的に読み解いた論文です。導入が組織の成果につながるという証拠は存在するのに、実際に取り組む組織はごく少ないという矛盾が浮かび上がりました。しかも質の高い査読誌に載った研究自体が限られており、根拠はまだ十分に積み上がっていません。

人脈づくりが報われるかは、性別と国で変わります

自分から動く人ほど人脈を広げ、その人脈がキャリアへの満足を高める——この流れは、ベトナムでも米国でも確認されました。しかし、人脈づくりが満足に結びつくかどうかは、どこでも同じではありませんでした。ベトナムでは男性にその関係が見られた一方、女性では確認されず、米国では男女で目立った差がありませんでした。努力が報われる条件は、性別と社会の期待によって変わるようです。

実務家向け雑誌を内容分析すると現場の関心が見える

人材開発の研究と現場の間には隔たりがあると言われ続けてきました。本論文は、実務家向けに発行されている雑誌そのものを分析対象に据え、内容分析の手順を組み立てて示します。学術的な枠組みを持ち込まず、その媒体の論理に沿って読むことで、通常の文献レビューでは見えない現場の関心や優先順位を継続的に追跡できる、というのが著者らの主張です。

撤退できないのは意思決定ではなく、日々の会話の積み重ね

複数あった選択肢が、いつのまにか一本の失敗しつつある道へ絞り込まれていく。本研究はその過程を、個人の判断の誤りとしてではなく、メンバー同士のやり取りのなかで結びつきが強まっていく過程として描き直しました。人はアイデアを握りしめるだけでなく、次第にそのアイデアの側に握られていく。実務家の実感に近いこの見方が、抜け出せないチームを理解する手がかりになります。

同じ目標でも探し方が違えば行き着く戦略が変わる

企業は利益と社会的責任のように複数の目標を同時に抱えますが、実際に手を動かして改善案を探すとき、その進め方までは意識されていません。この研究はシミュレーションによって、同じ選好を持っていても採用する探索の手順(ヒューリスティック)が違えば、たどり着く戦略も見つかる機会も系統的に変わることを示しました。

アイデアが実る道は4局面、必要な人脈は局面ごとに変わる

良いアイデアが形になるかどうかは、思いつきの質だけで決まるわけではありません。この論文は、アイデアが着想から完成へ至る道のりを4つの局面に分けて捉え、局面ごとに必要な支えと人のつながりが変わることを理論的に示しました。しかも、ある局面で有利なつながりは、別の局面では足かせになります。だからこそ担い手は、局面に応じて物事の捉え方を切り替える必要がある、と提案しています。

組織に大切にされている実感が、働く姿勢と成果と健康を左右する

働く人は日々の経験から、「この組織は自分の貢献を認め、自分を気にかけてくれるか」という総合的な見方を作り上げます。著者らは、この見方を扱う理論について、蓄積された既存研究を統合して検証しました。その結果、何がこの実感を高めるのか、そしてそれが何につながるのかという理論の予測は、おおむね支持されました。関係の強さの違いや、あいだに入るしくみまで言い当てていた点が特徴です。