人脈づくりが報われるかは、性別と国で変わります

人脈づくりが報われるかは、性別と国で変わります (人材論文百科の論文紹介)

紹介する論文

When networking pays unequally: proactive personality, gender and career satisfaction in Vietnam and the United States

Huong Le, Xiaoxia Zhu, Béatrice van der Heijden, Thang Nguyen Ngoc / Personnel Review (2026年) / DOI: 10.1108/pr-02-2026-0190

邦題(編集部訳): ネットワーキングの見返りが不平等なとき:プロアクティブ・パーソナリティ、ジェンダー、キャリア満足――ベトナムと米国において

結論

プロアクティブな人ほど人脈づくりに動き、それがキャリア満足の高さにつながるという道筋は、ベトナムでも米国でも共通していました。ただしベトナムでは、人脈づくりが満足に結びついていたのは男性で、女性では同じ関係が見られませんでした。同じ行動を促すだけでは足りず、その行動が誰にとって報われる仕組みになっているかを見直す必要がある、という指摘です。

自分から動く人ほど人脈を広げ、その人脈がキャリアへの満足を高める——この流れは、ベトナムでも米国でも確認されました。しかし、人脈づくりが満足に結びつくかどうかは、どこでも同じではありませんでした。ベトナムでは男性にその関係が見られた一方、女性では確認されず、米国では男女で目立った差がありませんでした。努力が報われる条件は、性別と社会の期待によって変わるようです。

この論文の要点

  • プロアクティブな人ほど人脈づくりに動く傾向は、二か国に共通していました
  • ベトナムでは、人脈づくりがキャリア満足に結びついたのは男性のみでした
  • 米国では、人脈を介した満足への効果に男女差は目立ちませんでした

研究の問い

働く人が自ら機会をつくり出す「プロアクティブ性」は、キャリアを切り開く力として注目されてきました。その代表的な行動のひとつが、社内外に人脈を築く「ネットワーキング」です。ただし、同じように人脈づくりに励んでも、その努力が本人のキャリア満足につながるかどうかは、誰にとっても同じとは限りません。本研究は、性別に応じた振る舞いへの期待を扱う「社会的役割理論」を手がかりに、ジェンダー役割期待や文化的な文脈によって、ネットワーキングの見返りが変わるのではないかと考えました。そこで、ベトナムと米国という二つの国で、プロアクティブ性がネットワーキングを通じてキャリア満足に結びつく道筋を検討しています。

調べ方

二つの多時点調査(時間をあけて複数回たずねる調査)が行われました。研究1はベトナムの従業員252名を対象に、2つの時点で回答を集めています。研究2は米国の従業員261名を対象に、3つの時点で回答を集めました。時点を分けることで、同じ人が同じタイミングでまとめて答えることによる回答の偏りの懸念を減らしつつ、プロアクティブ性がネットワーキングを介してキャリア満足に至る媒介効果と、国をまたいだ性別による違いを検証できる設計になっています。

わかったこと

二つの調査に共通して、プロアクティブ性が高い人ほどネットワーキングに積極的に取り組んでおり、そのネットワーキングが、プロアクティブ性とキャリア満足のあいだをつなぐ媒介効果が確認されました。人脈づくりに向かう傾向そのものは、国が違っても同じように現れています。

違いが出たのは、ネットワーキングとキャリア満足の結びつきのほうでした。ベトナムでは、ネットワーキングがキャリア満足と正の関係にあったのは男性で、女性では同じ関係は確認されていません。一方の米国では、プロアクティブ性がネットワーキングを介してキャリア満足につながる間接的な効果に、男女で目立った差は見られませんでした。

著者らは、この違いをジェンダー役割期待という観点から読み解いています。社会的役割理論に照らせば、人脈づくりという同じ行動でも、それが評価され報われるかどうかは、その社会で女性・男性に期待される振る舞いに左右される、という見方です。

人事・研修担当への示唆

  • 女性のネットワーキングがキャリア満足として報われているかを点検し、機会の提供だけで終わらせないようにします
  • 海外拠点に同じ人脈づくり研修を展開する前に、その国のジェンダー役割期待の違いを確認します
  • プロアクティブ性の高い人に機会を配るだけでなく、人脈が仕事や評価に結びつく導線まで設計します

読むときの注意点

いずれもアンケートに基づく調査で、時点は分けられているものの、因果関係を断定できるものではありません。対象はベトナムと米国の従業員に限られ、日本を含む他国にそのまま当てはまるとは限りません。また、ベトナムで女性に関係が見られなかった具体的な理由や、業種・職位による違いは、抄録では明記されていません。

キーワード解説

プロアクティブ性
プロアクティブ性とは、状況が整うのを待たず、自分から機会をつくり出して周囲に働きかけようとする個人の傾向のことです。
ネットワーキング
ネットワーキングとは、仕事やキャリアに役立つ人とのつながりを、社内外で意図的に築き、維持していく行動のことです。
キャリア満足
キャリア満足とは、これまでの自分の仕事人生の歩みや達成に対して、本人がどれだけ満ち足りていると感じているかを表す主観的な評価のことです。
媒介効果
媒介効果とは、ある要因が結果に影響を与えるとき、その間をつなぐ別の要因を経由して効果が伝わることを指します。
社会的役割理論
社会的役割理論とは、人の行動やその評価が、その社会で性別などの立場ごとに期待される役割像に影響されると考える理論のことです。
ジェンダー役割期待
ジェンダー役割期待とは、男性・女性はこう振る舞うものだと社会で共有されている、暗黙の期待のことです。
多時点調査
多時点調査とは、同じ回答者に時間をあけて複数回たずね、測る時点をずらして関係を調べる調査方法のことです。

よくある質問

Q
プロアクティブな人ほどキャリアに満足するのですか?
A
この研究では、プロアクティブ性の高い人ほどネットワーキングに取り組み、それがキャリア満足の高さにつながっていました。性格が直接満足を生むというより、人脈づくりという行動を経由する道筋が示されています。
Q
人脈づくりの効果は男女で違うのですか?
A
ベトナムでは、ネットワーキングとキャリア満足の正の関係が男性では見られた一方、女性では確認されませんでした。米国では男女で目立った差はなく、違いは国の文脈によって現れると報告されています。
Q
日本企業にもそのまま当てはまりますか?
A
この研究が調べたのはベトナムと米国の従業員で、日本は対象に含まれていません。ただし、同じ行動が誰にとっても同じように報われるとは限らないという視点は、自社の人脈づくり支援を見直す手がかりになります。

原論文のライセンス: cc-by。本記事は原論文の内容を人材論文百科の編集部が独自に読み解いてまとめたもので、抄録や本文の翻訳・転載ではありません。図表は掲載していません。正確な内容は冒頭のDOIから原典をご確認ください。

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