
紹介する論文
Changes in work-related boredom and their affective and behavioural consequences: the moderating role of job control
邦題(編集部訳): 仕事に関連する退屈の変化とその感情的・行動的な帰結:ジョブ・コントロールの調整効果
結論
仕事の退屈が高まった時期には、同じ時期の抑うつ気分やフラストレーションも高まり、それを介して先延ばしや反生産的職務行動の増加とも結び付いていました。ただし6週間後への持ち越しは確認されず、仕事の裁量が大きい人ほど結び付きは弱いことも示されました。退屈は放置せず、その場で気づき、裁量を持たせる設計が要点になります。
仕事の退屈が高まった時期には、同じ時期に抑うつ気分やフラストレーションも高まり、それを通じて先延ばしや反生産的職務行動の増加ともつながるという関係が見られました。一方で、6週間後の時点への持ち越し(時間差の関係)は確認されていません。さらにこの結び付きは、仕事の進め方を自分で決められる度合いが高い人ほど弱くなっていました。退屈への対処は、起きているその時期に手を打つことが鍵になりそうです。
この論文の要点
- 仕事の退屈の増減は、同じ時期の抑うつ気分やフラストレーションの増減と結び付いていました
- 気分の変化を介して、同じ時期の先延ばしや反生産的職務行動の変化ともつながっていました
- ジョブ・コントロールが高いほど結び付きは弱く、時間差の関係は確認されませんでした
研究の問い
退屈は職場でありふれた感情で、担当業務や繁閑に応じて時期によって強くなったり弱くなったりします。しかし議論は「退屈しやすい人かどうか」という個人差の話に寄りがちで、同じ人の中で仕事の退屈が増えたり減ったりしたときに、気持ちや行動がどう動くのかは十分に検討されてきませんでした。そこで本研究は、仕事の退屈の変化が抑うつ気分やフラストレーションの変化と結び付くのか、その結び付きはジョブ・コントロール(仕事の進め方を自分で決められる度合い)によって変わるのか、さらにそれが先延ばしや反生産的職務行動の変化にまでつながるのかを問いました。同時に起きる関係なのか、時間を置いて表れる関係なのかも検討されています。
調べ方
同じ回答者に6週間の間隔をあけて3回アンケートを行う調査設計が用いられました。回答者数は第1回1018人、第2回750人、第3回547人です。分析には潜在変化スコアという手法が使われ、仕事の退屈やジョブ・コントロール、抑うつ気分などの得点が前回からどれだけ変わったかを個人ごとに取り出し、その変化どうしの関係を、同じ時点の関係と時間差の関係の両面から検討しています。対象者の職種や国は抄録では明記されていません。
わかったこと
仕事の退屈が高まった時期には、同じ時期の抑うつ気分とフラストレーションも高まるという関係が示されました。一方で、6週間後の時点への持ち越し、つまり時間差の関係は確認されませんでした。変化は同時に起きており、遅れて表れる形ではなかったということです。
この結び付きは、ジョブ・コントロールが高い人ほど弱くなっていました。仕事の進め方を自分で決められる度合いが大きい人では、退屈が増えたときの気分面の動きが相対的に小さかったことになります。
さらに、抑うつ気分とフラストレーションの変化は、退屈の変化と、同じ時期の先延ばしおよび反生産的職務行動の変化との関係を仲立ちしていました。ここでも時間差の関係は見られていません。著者らはこれらを「同時に起きている変化の共起」として述べており、退屈が行動を引き起こしたと断定するものではない点に注意が必要です。
人事・研修担当への示唆
- 1on1で「最近、手持ち無沙汰ではないか」を定期的に確認し、繁忙だけでなく退屈も把握しましょう
- 業務の順序・方法・進め方を本人に委ねる余地を広げ、裁量を高める職務設計を検討しましょう
- 先延ばしや投げやりな行動が増えた人を怠慢と決めつけず、退屈や気分の変化を背景として確認しましょう
読むときの注意点
本研究は自己申告のアンケートに基づく観察研究で、退屈が気分や行動を引き起こしたという因果関係を示すものではありません。関係は同じ時点の変化どうしで見られ、時間差の効果は確認されなかった点も、実務で解釈する際の重要な限定です。また回を追うごとに回答者が減っており、対象者の属性や業種は抄録では明記されていません。
キーワード解説
- 仕事の退屈
- 仕事の退屈とは、業務に刺激や意味を感じられず、時間が長く感じられて注意が仕事から離れてしまう状態のことです。
- ジョブ・コントロール
- ジョブ・コントロールとは、仕事の進め方や順序、方法、時間配分などを自分で決められる裁量の大きさのことです。
- 抑うつ気分
- 抑うつ気分とは、気持ちが沈み、物事への関心や意欲が下がった状態が続く、感情面の落ち込みのことです。
- フラストレーション
- フラストレーションとは、したいことや目標の達成が妨げられているときに生じる、いらだちや不満を伴う感情のことです。
- 先延ばし
- 先延ばしとは、やるべき仕事に取りかかるのを意図せず遅らせ、必要と分かっていながら後回しにしてしまう行動のことです。
- 反生産的職務行動
- 反生産的職務行動とは、手抜きや無断の業務中断など、組織や同僚の利益を損なう方向に働く従業員の行動のことです。
- 潜在変化スコア
- 潜在変化スコアとは、同じ人を繰り返し測定し、前回からの得点の変わり方そのものを取り出して分析する統計手法のことです。
よくある質問
-
Q職場の退屈は放っておくと問題になりますか?
-
Aこの研究では、仕事の退屈が高まった時期に、同じ時期の抑うつ気分やフラストレーション、さらに先延ばしや反生産的職務行動の増加とも結び付いていました。因果関係は示されていませんが、退屈は無害な気分として見過ごさないほうがよさそうです。
-
Q退屈の影響は後から出てくるのですか?
-
Aこの研究の範囲では、6週間後の時点への時間差の関係は確認されませんでした。関係が見られたのは同じ時期の変化どうしです。したがって、退屈が起きているその時期に気づいて手を打つことが重要だと示唆されます。
-
Q退屈への対策として何が有効ですか?
-
Aこの研究では、ジョブ・コントロールが高い人ほど、退屈の高まりと気分の悪化との結び付きが弱くなっていました。仕事の進め方や順序を本人に委ねる裁量を広げることが、退屈が生じたときの負の反応をやわらげる方向に働く可能性があります。
原論文のライセンス: cc-by。本記事は原論文の内容を人材論文百科の編集部が独自に読み解いてまとめたもので、抄録や本文の翻訳・転載ではありません。図表は掲載していません。正確な内容は冒頭のDOIから原典をご確認ください。


