社会の難題は、協働の設計次第で組織が挑める課題になる

社会の難題は、協働の設計次第で組織が挑める課題になる (人材論文百科の論文紹介)

紹介する論文

Understanding and Tackling Societal Grand Challenges through Management Research

Gerard George, Jennifer Howard‐Grenville, Aparna Joshi, László Tihanyi / Academy of Management Journal (2016年) / DOI: 10.5465/amj.2016.4007 / 本文を読む(オープンアクセス)

邦題(編集部訳): 経営研究を通じた社会のグランド・チャレンジの理解と取り組み

結論

この論文は、気候変動や貧困のような地球規模の問題を「グランド・チャレンジ」と捉え直し、それが立案・言語化・実行という段階を経て取り組まれるという枠組みを示しました。集合的な目標の達成を後押しする要因と妨げる要因があることも整理されています。人事・研修担当にとっては、社会課題への貢献を掛け声で終わらせず、協働の仕組みとして設計する視点が得られます。

地球規模の社会問題は、個人や一組織の努力だけでは動きません。この論文は、そうした問題を協調と協働によって現実的に取り組みうる課題として定式化し、その立案・言語化・実行を分析するための枠組みを提示しました。あわせて、集合的な目標の達成を高める要因と抑え込む要因を挙げ、今後の実証研究が向かうべき問いを示しています。

この論文の要点

  • 社会の難題を、協働で取り組める形に定式化する視点を示しました
  • 立案・言語化・実行という段階で課題への取り組みを捉えます
  • 集合的な目標の達成を促す要因と妨げる要因を整理しました

研究の問い

気候変動、健康格差、貧困といった問題は、個人や組織、地域、国のいずれもが直面していますが、どれか一つの主体が単独で解決できるものではありません。一方で経営学の研究は、こうした社会規模の問題を正面から扱う蓄積が十分ではありませんでした。そこで著者らは、こうした問題を「グランド・チャレンジ」、つまり協調的で協働的な取り組みによって現実的に対処しうる形に定式化された地球規模の問題として位置づけ直します。経営学の研究者が社会の課題に関与するために、何を、どのような枠組みで実証していけばよいのかを問うたのが本研究です。

調べ方

本論文は個別のデータを分析した実証研究ではなく、特集号の趣旨を示す論考です。著者らは、世界各地で個人・組織・コミュニティ・国家が直面する社会問題を扱った経営学の研究群を紹介したうえで、今後の研究が体系的な実証的証拠を積み上げられるように枠組みを組み立てています。枠組みは、課題の立案、言語化実行という側面から構成されます。なお、対象とした研究の本数や分析手順の詳細は、抄録では明記されていません。

わかったこと

著者らが示した中心的な整理は、グランド・チャレンジが「解決不能な巨大問題」ではなく、協調と協働を通じて現実的に取り組みうる形に定式化された問題だという点です。つまり、問題そのものの大きさよりも、それをどう切り出し、どう共有可能な課題として立てるかが出発点になります。

そのうえで、取り組みのプロセスを立案・言語化・実行という側面から捉える枠組みが提示されました。課題を組み立てる段階、それを言葉にして関係者に伝える段階、実際に動かす段階は、それぞれ別の論点を含みます。

さらに著者らは、集合的な目標の達成を高める要因と、逆に抑え込んでしまう要因がいくつも存在することを指摘し、今後の実証研究が扱うべき代表的な問いを挙げています。これは検証済みの結論というより、研究と実践の議論を進めるための出発点として提示されたものです。

人事・研修担当への示唆

  • 社会課題への取り組みは、まず自社が関与できる範囲に切り出して課題として定義しましょう
  • 目的を掲げるだけでなく、現場に伝わる言葉に翻訳する場を研修や対話に組み込みましょう
  • 部門・社外との協働を前提に、誰と何を分担するかを実行計画の段階で明示しましょう

読むときの注意点

本論文は特集号の導入として枠組みと研究課題を提示したものであり、効果を検証した実証研究ではありません。示された促進・抑制要因も、今後の実証で確かめるべき候補として挙げられています。実務にそのまま適用できる手順や、成果につながる条件は、抄録では明記されていません。

キーワード解説

グランド・チャレンジ
グランド・チャレンジとは、協調と協働によって現実的に取り組みうる形に定式化された、地球規模の社会問題のことです。
協働
協働とは、立場や所属の異なる主体が、共通の目的に向けて役割を分担しながら共に取り組むことです。
定式化
定式化とは、漠然とした問題を、関係者が共有し取り組める課題の形に整理して立て直すことです。
言語化
言語化とは、課題や目的を関係者に伝わる言葉として表現し、共通の理解をつくる働きかけのことです。
実行
実行とは、立てた課題を具体的な活動や資源配分に落とし込み、実際に動かしていく段階のことです。
集合的な目標
集合的な目標とは、単独の主体では達成できず、複数の主体が力を合わせて初めて到達しうる目標のことです。
社会問題
社会問題とは、個人や組織だけでなく地域や国の広い範囲に影響を及ぼし、社会的な対応が求められる問題のことです。

よくある質問

Q
グランド・チャレンジとは何ですか?
A
気候変動や貧困のような地球規模の問題を、協調的・協働的な取り組みによって現実的に対処しうる形に定式化したものを指します。手に負えない問題として眺めるのではなく、取り組める課題として立て直す点に特徴があります。
Q
この論文は実証研究ですか?
A
いいえ。特集号の導入として、今後の実証研究を導くための枠組みと代表的な研究課題を提示した論考です。効果の検証やデータ分析の結果を報告したものではないため、結論として読むより出発点として読むのが適切です。
Q
人事の仕事にどう関係しますか?
A
社会課題への貢献を、掛け声ではなく協働の設計として扱う視点が得られます。課題を自社が関われる形に切り出し、現場に伝わる言葉にし、誰と何を分担して実行するかまで落とし込む、という流れが手がかりになります。

原論文のライセンス: 記載なし。本記事は原論文の内容を人材論文百科の編集部が独自に読み解いてまとめたもので、抄録や本文の翻訳・転載ではありません。図表は掲載していません。正確な内容は冒頭のDOIから原典をご確認ください。

タイトルとURLをコピーしました